単発 | ナノ



地獄先生と夕の修羅


(※暴力的な表現があります)


おれおれわたし。あーもうむかついてしかたがないねだから仕方ないね。


「ま、腹立つことはよくあるだろうと思うけどねぇ。お子様っちゅーのは血気盛んなもんだからね。ただ、一時の感情でやっちゃったことにどう誠意見せんのかっていうはなし」


怪我人4名、内女生徒1名。相手の親から怒鳴られ、実の親からは勘当され、そして俺は変態教師に呼び出されている。

教室で馬鹿なクラスメイトに絡まれ、むかついて殴ったらぐったりしたまま動かなくなってしまって、そこであっこれはやばいなと思った、思ったのだけど引き返せなくて近くにあった机を衝動まかせにブン投げたら、たまたま近くにいた無害な生徒たちにまで被害が広がってしまった。

俺の人生をぶっ壊す大問題はいたってシンプル。恥ずかしくなるくらいに。

「ほんとにサイテーなクズだと思うけど……なんでもするんで退学とかケーサツとかはいやだ……」
「え? なに? ちゃんと聴いてなかったからもっかい言ってね今度はちゃんと尊敬語をつかって、はい!」
「俺は……」
「おれ?」
「僕……わたしは、すごく駄目な生徒なので、先生にいっぱい迷惑かけてますが、これで最後にするのでどうか許してくださいお願いします」

放課後の空教室で、俺は埃っぽい床の上に正座して震える声をしぼりだす。目の前で先生がパイプ椅子に座って足を組んでいる。ぷらぷら揺れる職員用スリッパが鼻をかすめる。女生徒からかっこいいと慕われる男の、こんなに下衆な姿を誰が信じるのだろう。

「お前尊敬語って何か知ってんの? そもそも俺の現国の授業ちゃんと聞いてる? いっつも寝てるけど分かってんの?」
「わ、わかってる……」
「分かってるやつがそんな言葉づかいするわけ?」
「じゃーどうしたらいんだよ……」
「ホラホラ出たでた、すぐ『もうわかんねー、つんだー、もういいやー』って投げ出してさあ。それが誠意かって聞いてんの」
「誠意ってどうやったら伝わりますか……」
「甘ったれんなよ」

笑って言われたらうつむくしかない。先生はふいに組んでいた足を直し、カチャカチャとベルトを動かし始めた。


「例えばさぁ、これしゃぶったらそれこそが誠意だよキミは正しいよって言われたら、やんの?」


俺は成績が悪く先生が出す問題にもロクに答えられないダメな生徒だけど、その質問が何を指しているのかはさすがに分かった。


身体を起こし、先生のスラックスに手をつく。下着に収まっていたものを引っ張り出し顔を寄せると、血管の浮いた生々しいそれが間近に迫って戸惑いが生まれた。それでも意を決して口に含む。なんか苦くて不思議な味がした。

「はは、おもしれ」
「ん……っ」
「たとえ話で言ってんのに。ほんっとバカだよねお前」


先生が笑いながら俺の頭を撫でたそのとき、間接視野で何か動くのが分かった。横目で見たドアの隙間に何かの気配。そして、こちらを覗きこんでいる女子生徒と目が合った。


血の気が引いた。


「い……っ!」


思わず口に入れていたものを噛むように、歯を突き立ててしまった。動揺したのだ。女子生徒は笑っていた。ドアの隙間からこっちを覗きこみ、大変な事件を目撃した野次馬の、きらきらした目で楽しそうに笑っていた。しかし目が合ってすぐ逃げた。次の瞬間先生に脇腹を蹴りあげられ油断していた俺は床に這いつくばることとなった。

「ぅぐぁ……っ!」
「なーんでそういうことすんのかなあ、反省してんだろ? ケーサツ、怖いんだろ?」

うつぶせで倒れこんだら、髪をつかまれ床に顔を叩きつけられた。鉄の匂いがぶわっと広がってから数秒後、赤い滴がくちびるから滴って、口の中を切ってしまったのだとようやく気付いた。混乱と痛みはバカをバカにする。

「チンコでも噛んどきゃ逃げられると思ったのか?」
「っが……!」
「自分がどういう立場か分かってんのかよクソガキ」

何度も何度も髪を引っ張られ床に打ちつけられたら白と黒の世界を行き来してしまった。先生が俺の肩を掴んで反転させ、仰向けにさせられたときはもう屍になりさがっていて、抵抗する気もなにもなかった。それでも先生は反乱が起こる前にと焦るように、俺の制服を強引に取り払う。

「思いあがりやがってバカ野郎が」

このあたりの詳細はよく覚えていない。絶望の淵というのは衝撃が強すぎるから記憶に補正がかかるんだと思う。瞬きをしてもう一度目を開けたら、なぜか俺はあおむけの状態で先生に足を持ち上げられていて、すぐさまメリメリと身体を割くような痛みが走ったのだ。

「ッ、イ――ッ!!」
「るせぇ、黙れ」

静かにさせたかったらしい先生は片手で抵抗する俺の脚を抱えたまま、片手で喉をつかんだ。そうされたらいよいよ生命の危機を感じて、俺は生きるために大人しくするしかなくなってしまう。先生は俺の戦意喪失をいち早く察知し、にやつきながら腰を振り始める。

「あー……やっぱ若い男のケツは最高だな」

女生徒が見惚れるような顔立ちに、カーテンの隙間から差し込む西日が当たってとんでもなく非道な表情だけが浮かび上がる。ゆがんだ口元も目や眉も冷酷すぎて人でないようなのに、チンコはガッチガチでそこだけがすさまじいエネルギーを持っているから格好悪いかっこわるい。

「どーせお前らの頭んなかなんてエロいことばっかだろ? でもそんなションベンくせぇ顔してたら誰も相手しちゃくれないだろうな。俺がいっぱい搾ってやるよ、優しいセンセで良かったな感謝しろよ」

暑いのだろう、先生の汗がぼたぼたと顔に落っこちてきた。隣の校舎から聞こえる吹奏楽部のパート練習の音が意識をさらにあいまいにしていく。何度もぶつけられた額は痛い、口の中は血だらけ、多分ケツの穴あたりも出血してる。それでも先生は何も気にせずチンコを出し入れしている。どこもかしこも痛すぎてもう何も感じない。

「あー……お前のケツ狭いなぁ。お前みたいなどうしようもねぇ問題児でも、性欲処理には役に立つんだな。知らなかったよ」

そっか俺はね入学前から先生のことを知っていたよ。よくつかう電車が同じなのだ。

夏も冬も夜も朝も涼しい表情の先生はいつも、同乗した女たちに「かっこいい」と言われていて最初はいけすかなかったけれど、先生が自分の学校の生徒と話しているところを目撃して印象が変わった。

先生はいかにも不真面目そうな男子生徒に「宿題多すぎるの勘弁して」と話しかけられ「でも前よりちゃんとやってきてくれるじゃないか、出来なかったことができるようになるのは簡単じゃないのに、すごいな」という旨のことを言っていた。


今思えば教師と言う立場上仕方なく口にした言葉にすぎないのだろうが、世界に絶望した中学生男子はたったそれだけで「こんなに誠実な大人がいるんだ」と感動してしまったのだ。


「はは、チンコいってぇ。締め付けてんじゃねーよ淫乱」


クソガキが何に絶望して、その中で何を光とするかなんて、クソガキ本人にも分かりません。

多分、誰かに頼りたくて、俺のことを褒めてくれる人なら誰でもよくて、電車で見かけるだけのよく知らない人はよく知らないからこそ浅はかな期待をするのに適していたのだ。


その人は今、弱みを握って学校内で鍵もかけずに生徒を犯している。


「あーいきそ。俺ガマンとか嫌いだから出すわ」

そう言ってすぐ、中に入っていたものが痙攣しはじめた。ゴムなんて当然つけていないが、先生はためらいもなく俺の中にどくどく吐きだしてしまう。長い射精が終わると、先生は目を閉じたまま満足そうな息を吐いた。俺はかすれた声をしぼりだす。

「んな、……さっ……」
「あ?」
「ご、ごめんなさ…………」
「なに?」
「……うまれてきて、ごめんなさい……」

グラウンドではまだ野球部員たちが声をあげている。西日もずいぶん弱くなり、夜の気配が忍び寄る。先生が笑みを浮かべる。


「よくできました」


先生は、はじめて褒めてくれた。







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