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「うおおおおおんバカやろおおおお!!
てめえ俺様の命を救っておいて礼も言わさずに消えるたあどういうことだあああ!!」

「ルッチさんはお酒を少し減らすべきではないかと」

「クルッポー、ハルアはもっと自分のことを考えるべきだ」

「スーパーな俺様があれしきの木材なんかで怪我すると思ってんのか、ああん!?
お前が死んでたらどうすんだあああ!!」

「ルッチさんはぼくに厳しくするべきです」

「ハルアは俺にもっと甘えるべきだッポー」

「ホント生きてて良かったなああああ!!うおおおおおん!!」

「…ンマー。フランキー、本人が聞いちゃいないぞ」

うっせえ黙ってろ!と叫びながらギターをかき鳴らすフランキーを、彼の子分たちは大変に複雑な気分で見守った。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら、ハルア−!!と名を叫んではいるが、残念なことにその本人は真剣な顔で何やら話し込んでいる。

「あんまり頻繁にお駄賃も与えるべきではありません」

「あまり俺以外からの物は受け取らないべきだ」

「それにお菓子もご自分で楽しんでください」

「クルックー…だからそれも俺以外からは受け取らないべきだろう」

…何してんの?
遅れて来た船大工の一人が傍にいたカクにこっそり聞くと、お互いの問題点を指摘しあっているのだとか。
かれこれ1時間はああやって向き合って正座したまま、ひたすらに言葉を交わしている2人。

1時間前に感動の再会を果たしたものの、ハルアが土下座させてくれと聞かないので、さんざんもめた結果、何がどうなったのかこれに落ち着いた。

今も、ルッチさんはぼくに甘すぎます!と正座のまま地面をバン!と叩くハルアに、ルッチはなぜかその手に自分の手を重ねて、何が悪い!と腹話術で応戦。
その横でフランキーがギターをかき鳴らして何か歌っているものだから、もう何が何だかな“魔の三角地帯”ができあがっていた。

ヒートアップしていく2人に、周囲はどうしたもんかと顔を見合わせるが、誰一人として意見ができない。
いつもは厳しく仲裁に入るカリファも、まあ今日ぐらいは…と放って置いたものだから、その結果がこれである。
そんな彼女はとっくに諦めてスケジュール管理のために社内に戻ってしまい、やっぱり手が付けられないまま時間だけが過ぎて行く。

「クルッポー!頼むから自分の身を案じてくれ!」

「それは反省してます!
ですから土下座させてください!もしくは殴ってください!」

「できるかばかやろう。ハルア好きだ!」

「ぼくも好きです!!」

「!!(がたっ)」

「皆さん大好きです!!」

「……」

おいお前なんであのタイミングで告白した。
ハルアの大好き宣言に周囲の空気は和んだが、同時に腰を浮かせて立ち上がろうとして、しゅんとしてまた座り直すルッチの姿に思わず涙。
報われているのか報われていないのか微妙なその姿は見るに堪えず、恋に悩むお年頃の若い船大工たちは顔を背けて念仏まで唱えるカオスっぷり。

「…ファーストは誰だっポー」

「だからお母さ」

「ノーカウント」

このやりとりももう何度目か。
感動の再会を果たした直後、まさかのルッチの暴挙にブルーノの制裁(昼食投げ)が下ったものの、こりずにこの質問をくり返す。
外野たちにしても意外な話ではあったが、ハルアは既にファーストキスを誰かに捧げているらしい。
母親だと言い張るが、それを抜きにしても今回がファーストではないと。
それを聞いた時のルッチはたっぷり1分は固まっていたものだ。

「…じゃあ母親を認めるとして、セカンドは誰だ」

「むむ、言って良いんですかねこれ…」

少し考えた後、ルッチの傍に寄って言って耳打ちするハルアに、誰もが興味津々で視線を送る。
こしょこしょと何やら囁くハルアの腰にしっかりと腕を回して険しい顔のルッチは置いておいて、さあ誰だ。
フランキーがやかましいけれど、それも今は置いておいて。
俺らだって気になっちゃいますよそりゃあ。

ついさっきまでルッチに向けていた同情の視線は既に消え去り、外野たちはがっつりと聞き耳を立てていた。
そんな外野たちの緊張がピークに達したのと同時に、ぽん、と何かの弾ける音。

え、何だ今の音。
えらく可愛らしい音だったが、いったいどこから?


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