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「見て下さい、ちょうど海列車が来ましたね。おーい!」

「ははは!お前のちっせえ声じゃ届かねえだろ!」

「むむむ!きーこーえーまーすーかー!!」

いや届かねえって。
海沿いの道を二人で歩きながら、遠くに見える海列車に手を振るハルア。

本当に散歩しちまってるが、何と言うか、一方的に気まずい!!

俺たちのこと怒ってるか?呆れてるか?と聞こうにも、こんなに楽しそうに笑われると言い出しづらいことこの上ない。
ああくそ!スーパーにどうして良いか分からん…!

「この前はせっかくパーティーを開いていただいたのに、勝手に帰ってしまってすいませんでした…」

「アウっ!?い、いや俺らの方がつぶれちまったから…!」

「(本当はルッチさんでしたが…)とっても嬉しかったんですよ。あの後は皆さん大丈夫でしたか?」

「おう、二日酔いごときでダメになるフランキー一家じゃねえからな」

ハルアからあの晩のことを言い出されて、正直すげえ助かった!
このままの流れで謝らねえと。あと、あの時の礼もちゃんと言わねえといけねえんだよ。
ありがとな、でも無茶すんなバカがって叱ってもやらねえと。

「あのよ、改めて言いてえんだけどよ……」

「ありがとうございます、フランキーさん」

「ありが、あん!?」

「今日はちゃんとお礼が言いたくって。お散歩も楽しいですけどね」

「は、お前、そりゃあ普通俺が言うべき言葉だろうが!?」

「ええ!?そうですか!?」

そうですか!?ってお前。マジに驚いた顔してるけど、お前。
むしろなんでお前が礼なんか言うんだ。こっちは土下座したって足りないくらいの恩があるってのに。

「だって、ぼくが帰って来たこと、お祝いしてくれたんです…よね?」

「なんで疑問形なんだよ!?当たり前だろうが、可愛い弟分、兼命の恩人が帰って来たんだからよ」

「だからありがとうなんですよ」

「いやだから礼を言うのは普通俺の方でだなあ」

「嬉しいと思ったからありがとうなんですよ。それに、フランキーさんが無事でいてくれたことだってありがとうなんです」

待て待て、もう何回ありがとうって言われた?
俺が無事でいたことにもありがとうって、んなバカな。
礼を言われるべき人間が言ってどうする。助けられた側はどうすりゃ良い。

「それ、あのハト野郎にも言ったのか?」

「ルッチさんにですか?はい、言いましたね」

ああやっぱり言ってやがった。面食らっただろうなあ。あの無表情野郎。
俺もしっかり面食らったよ、こんなこと言われたら。なあ?

どうやら少しの間会わなかっただけで、こいつの底抜けの人の好さを忘れてたらしい。
バカが付くほどのお人好しめ。
だから気に入ってんだよ文句あるか。

「スーパーにバカだよなあ、お前」

呆れて物も言えねえ。そう言って軽い身体を抱き上げれば、ひゃあっとあがる歓声。
どこに行ってたかとか野暮なことは聞かねえから、まあちょっと聞けや。

「ありがとな、ハルア!」

「ぼくもありがとうなんですよ!」

「バカ、俺のありがとうの方が重いんだよ。あと無茶すんな!あと悪かった!」

「もう何が何だか!」

「お前が先に言っちまうのが悪いんだよ!ありがとなこの大バカ野郎〜!!」

「むぎゅううっ」

潰さねえ程度に抱きしめれば、苦しげな声の割に楽しそうな笑顔。
そうそう、お前はそうやって笑ってりゃ良いんだよ。あの晩の仏頂面なんて、気持ち悪いくらい似合ってねえからな。

遠くで、ブルーステーションから発車したらしい海列車、パッフィング・トムの汽笛の音が聞こえた。



ゲシュタルト崩壊するくらいにありがとうってね



「しかしこのままじゃ俺の気が済まねえ。なんか望みとかねえのかよ」
「いえいえ、そんな!」
「言 え !」
「むむむ…!…あ」
「お、何かあったか」
「フランキーさん、ズボン穿きましょうか!」
「おー、見ろイルカだ」


あとがき
アニキにも、改めてただいまとありがとうを。
…しかし、サイボーグでもちゃんとお酒に酔い潰れたりするのかしら…!消化器官があるんだから酔う…はず!
管理人:銘



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