番外・その4 [ 6/50 ]

※IF設定です



「・・・−っ!!」
「ハルア、ハルア(ぎゅー)」
「やめんかルッチ!また失神させる気か」

ひゃあああああああ!!
ルッチ様が!う、あああ!鉄くさい!鉄くさいいいい!!

「二人の時間を邪魔するなばかやろう」
「この前もそう言って失神させたんじゃろうが!」

いったいどこでどう間違えたのか、エニエスロビーで給仕として働くぼくは、なぜかCP9のエースであるロブ・ルッチ様に気に入られてしまい。
いえ、嬉しいんですけどね?
嬉しいんですけど。

「ハルア(ぐりぐり)」

スキンシップが・・・激しい・・・!!(ひゃあああ!)
会えば抱き上げられ抱きしめられ、頬ずりにちゅーに、今みたいに頭を押し付けてぐりぐりしてみたり。
恥ずかしい!
でもそれ以上に怖い!

ルッチ様は、任務からお帰りになるといつも血の匂いを纏っています。
お仕事ですから仕方ありませんが、やっぱり怖いものは怖いわけで。
何度エプロンをスーツの返り血で赤く染められたことか!
その度に真っ黒のエプロンを嬉々として差し出されますが、とても受け取れず、いつも半泣きで遠慮させていただいています。
いいんです!支給されているこの白いものでいいんです!!

カク様はやく助けて!
また失神して、目が覚めたら医務室のベッドで、横でルッチ様にガン見されてるなんて展開はもう嫌です!

「カクさまあ!た、たすけ」
「俺の前で他の名を呼んでくれるな(がぶ)」
「ひゃ、あああああ!!」

か、噛まれたーっ!!
首が首が首が!ルッチ様首が!!
おいしくないですホントおいしくないですから!
豹は肉食でしょうけど、あなたはちゃんと人間ですから!
うわああんカク様―!

「この変態が・・・!
さっさとやめんと給仕長を呼ぶぞ!!」
「・・・それはやめろ」

ひいいい!
甘噛みをやめてくれたのは助かりましたが、最後の一舐めはいりませんでしたっ。
猫の舌のようにザラザラしていて、もう鳥肌がえらいことです。
これ、痕が残ってたりしないですよね・・・?

しかし、さすがのルッチ様も給仕長さんには敵いません。
いつもはにこにこした優しい方ですが、先日ぼくから離れないルッチ様に怒りが静かに爆発し、ルッチ様はまさかの2時間正座。
体を鍛えているルッチ様には肉体的な苦痛は無いでしょうが、その間絶えることの無い説教はかなりつらかったようです。
ありがとう給仕長さん!
できたら毎回そうしていただけると、ぼくとしてはとっても助かるのですが。

「毎回毎回、ちょっとはハルアのことを考えんか」
「考えているからこうしている」
「・・・はあ・・・」
「・・・嫌か?」

そこでぼくにふりますか!
嫌ですよ!もう言っちゃいますけど嫌ですよ!!
触れてくる手は優しいですが、むせかえるような血の匂いに、あの鋭すぎる目を間近で見るのは心臓に悪すぎます。
何度もぼくを呼ぶ声も、ただでさえ低くて怖いのに、それを耳元で囁かれるものですから、もうどんないじめですかこれは。
愛が!愛が重くて怖くて鉄くさいですルッチ様!

「・・・嫌か?」

まだ言いますか・・・!
そ、そんな首をかしげられても怖いですよ。
とりあえず一瞬で良いので、ぼくから視線を外してください。

「俺は好きだ」

しゅん、と。
少しだけうつむいてしまったルッチ様。
その姿がまるで猫のようで、思わず手が伸びてしまいました。

「い、痛いのと怖いのは嫌です(なでなで)

だからね、あ、あなたが嫌いな訳ではないんですよ」

「ハルア・・・っ!(ぎゅぎゅぎゅ)」
そう言った瞬間、視界は真っ黒になり、ぼくの意識はお花畑へ。


もっと笑って(どうして笑ってくれない?)


「ルッチ!力を入れすぎじゃバカ!!」
「!!」
「(ちーん)」
「給仕長とカリファの説教じゃな、これは」
「ハルア、ハルア・・・!(あせあせ)」




あとがき

IF話、もしも少年がルッチさんを怖がったら。
なんだか本編とはかなりの別物になっちゃいましたね。
こっちのルッチさんは押せ押せになりました。
お兄ちゃんなカクさんは頑張って守ってあげてれば良いです。
拒めない少年はたじたじして愛されれば良いです。←
管理人:銘


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