番外・その14 [ 23/50 ]

聖地をお散歩中、ふと前を向くとお庭のすみに小さな池を発見しました。
庭師さんによって完璧に手入れされたお庭と池は、まるで絵本に出てくる美しい森の中の湖のようで。
何か投げ込めば池の精霊さんが出てくるのかも、なんて考えながら覗き込んでいると、すぐ近くからばさりと控えめな羽音が。

「こんにちは白鳥さん、綺麗な羽ですね」

どこからか降り立った白鳥さんに声をかけると、すいーっと水面を滑ってこちらに寄って来てくれました!つ、つうじた…!
手が届くところまで来てくれたので、失礼しますと声をかけて触らせてもらいました。
ふわふわ!しかもつやつや!

「白鳥さんは美人さんですね、羽もとっても気持ちいいです」

「!!」

「白鳥さん?」

美人な顔立ちな白鳥さんは嫌がる素振りも見せずにそこにいてくれたのですが、いきなり顔を上げたかと思うと、何かから逃げるように飛んで行ってしまいました。

「…行ってしまいました…」

「フッフッフッフッ!ハルアちゃんは今日も冒険かい?」

「ドフラミンゴさん!」

もう慣れつつありますが、気配も無く背後から抱き上げてくれたのはドフラミンゴさん。
七武海や三大将の皆さんはことごとく気配も足音も感じさせないので、毎回驚かされてしまうんですよねえ…。
その状態から抱き上げられるものですから、ここに来てしばらくは妙に警戒しながら廊下を歩いたものです。

ぎゅーっと素敵羽コートに埋められて、視界はもうピンク一色。
わさわさとそれをかき分けて見上げてみると、いつも通りにっこり(にやり?)と笑うドフラミンゴさんのお顔。

「さっきまで白鳥さんがいたんですよ。見ましたか?」

「ああ。触り心地はどうだった?」

「ふわっふわでつやつやなのです!」

「そうかいそりゃ良かった!だがこっちはふわっふわでつやつやな上に、おしゃべりまで出来る優れもんだぜ」

「わぷ!」

また笑いながら羽コートに埋められ、さらに髪も撫でられてもうわちゃくちゃ状態。
……あれ?
ちゅーもできるぜ!と頬や鼻に落とされる冷たい感覚に、どこかデジャヴを感じるような…。
あまり昔でもない気がするんですが、いまいち思い出せないですね…。

「ん〜…?」

「どうしたハルアちゃん、ここにもおねだりかい?」

「むむむ!そういうわけでは、む!」

唇をつままれてアヒルさんにされたかと思うと、言い終わる前にちゅーっと。
スキンシップと分かってるんですが、これが赤面せずにいられますか!

「難しい顔してると食っちまうぞ。さあスマイルだぜハルアちゃん」

「そうしたいのはやまやまなんですが、思い出せそうで思い出せなくてムズムズすると言いますか…」

「あん?そりゃあショック療法が1番だろフッフッフッフッ!!」

「ひゃあああ、……あ!」

ぽこん!と突如頭の中に浮かぶ映像。
お、思い出せましたかね…?

頭に浮かぶのは、今回の白鳥さんとは反対の黒。
あれはたしか、ウォーターセブンで見かけた美人な野良の黒猫さん。

あの時もこちらから声をかけると近寄って来てくれて、綺麗な毛並みを触らせてもらったんですよね。
猫さんはお手入れ上手なんですねえ、と話しかけると、にいにいと言葉らしきものを返していただきました。

「!!」

「猫さん?…行ってしまいました…」

「ハルア」

「わ!ルッチさんお疲れ様です!」

あの時抱き上げてくれたのはルッチさ、じゃなくてハットリさんのお連れの方。
猫さんは白鳥さんと同じように、突然何かから逃げるように走り去ってしまいました。

「クルッポー…ここでは、無理だが」

「ルッチさん?」

「…俺だって触り心地は良い。ハットリもな」

珍しくぽそぽそと喋る姿に、可愛いだなんて思ってしまったのは不可抗力と言うものです。
エニエスロビーで何度か見せていただいた優雅で雄々しい豹の姿を思い返しながら、頬や鼻に落とされる冷たい感覚に顔を赤くさせられたんでしたね。

…なるほど、デジャヴの正体はあなたでしたか。

今目の前にいるドフラミンゴさんと、ハットリさんのお連れの方。
風貌も性格もまったく違う(むしろ正反対ですかね)ようですが、面白いことに状況と行動がそっくり。
その行動が、こんなにも嬉しくて嬉しくて仕方が無いのもそっくり!

「ふ、ふふふ!」

「なんだハルアちゃん、俺の真似か?」

「あははは、ショック療法のおかげです」

「例の思い出せそうで思い出せないことか。で、何だったんだい」

「残念ですが内緒にしておきましょう」

「なんて生意気なおもちゃちゃん!教えてくれなきゃお仕置きだぜ!」

「ダメですよ、ひゃー!あははは!」

こんなにも可笑しくて笑ってしまうのは、ぼくの何倍もありそうな大きな手でくすぐられているせいだけではないようです。
視界をピンクに染めていても、こんなにも記憶の中の白と黒のあなたが懐かしい。



鏡映しの桃色と白黒



「あは、あはははは!」
「おらおら観念しなハルアちゃん!」
「内緒です!あはははは!」
こんなにも可笑しいのに悲しい。
涙が出てしまうのだって、きっとくすぐられているせいだけではないのかもしれませんね。


あとがき

友人に、「もっといちゃいちゃさせるが良い」と言われたので。
水の都では白黒のあの人といちゃいちゃ、聖地ではピンクのあの人といちゃいちゃ。
ちなみに更新の前にその友人に見せると、ぬるい!と怒られました。
じ、次回もうちょっと頑張ってみることにしましょう…。
管理人:銘


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