番外・その7 [ 10/50 ]

※管理人がちょっとだけ暴走しました。(あ、裏とかじゃないですよ)
※残念なルッチさん、略して残念ッチさん。
※もはや本編とは別物としてお読みください。




「ダメですダメですダメですってばあ!」
「俺が許す」
「ルッチ様!!」

「・・・何しとるんじゃルッチ」

またこの男は何を考えとるのか。
最近はずっとハルアにベッタリではあったが、今日はそのハルアを抱えてどこへ行こうと言うのか。
いつもは抱き上げられても抱きしめられても顔を赤くして大人しいハルアが、何やら今日は声を上げて抵抗している。

・・・え、ルッチおぬしまさか。・・・え?

「闇とはいえ、ワシらは正義側なのは分かっとるな?」
「・・・マジな顔で何今更なこと言ってんだばかやろう」
「同意無しはまずい。ハルア相手に限っては同意があっても許さん」

がっつん!!
ぎゃあああああああ!!
道を踏み外す寸前のルッチを諭そうとしたら、般若のような顔で拳骨をくらった。
くそう鉄塊でも使ってしまえば良かった!!

「下衆な勘違いをするな」
「カク様大丈夫ですか・・・!」

ルッチとは違って優しい優しいハルアは手を伸ばしてくれるが、ルッチが抱えたままなのでそれも届かない。
頭の痛みに悶えながらもその小さな手に自分の手を伸ばすが、それはもう良い顔をした鬼(ルッチ)に踏みつけられてそれすら叶わない。

「ルッチ様足いいいいい!!」
「大丈夫だ、この靴は明日捨てる」
「いえカク様が!!」

必死に訴えるハルアにつまらなそうに足を上げたこの男、今度は鉄塊が間に合ったが、おそらく本気で骨を砕く気だった。
ワシ最近こんなのばっかりな気がするんじゃが!

「なら嫌がるハルアを抱えて何するつもりなんじゃ・・・!」
「風呂に入る」
「え、やっぱりおぬし」

指銃!という声と共に突き出される指を避けて、立ち上がって抱えられたままのハルアに手を伸ばす。
しっかり掴んで不審者から引き離そうとしたが、思いのほかあちらも腕に力をこめ、ハルアがぐえ!と声を上げただけだった。

「ハルアはいつもだだっ広い風呂に一人だと聞いて、こっちの大浴場に入れてやろうと思っただけだこの脳内猥褻物が」
「だからそんなのダメですよ!」

もう脳内猥褻物とか言われたことは置いておいて、とりあえずは話を聞くことに。
ちなみにハルアを二人で掴みあったまま。
・・・こいつ徐々に自分の方に引き寄せとる・・・!

この司法の塔の住人は、政府の人間は自分の部屋の風呂の他に、大きな大浴場が用意されている。
どちらに入っても自由なので、たいていは気分によってメンバーが変わる。
それに対して政府の人間でない者たち(給仕等)はこちらの大浴場よりは内装も大きさも劣るが大浴場が用意されている。
もちろん彼らがこちらの大浴場を使用することは禁止されており、厳罰まで行かないものの、それなりのペナルティーが存在するという噂だ。
(さすがにそんなバカなことをする者がいないのであくまで噂)

ハルアは小さな方の大浴場を使うわけだが、基本的に女の方が多い上、ハルア以外の男たちは仕事内容が違うので入浴時間も違ってくる。
そんなわけでハルアはたいてい一人で風呂に入るのだと言う。
想像するに、こちら程は大きくないにしろ、小さな体一人ではあまりにも持て余してしまうのだろう。

「だからこちらに入れる」
「そんな勿体無い!ぼくなんかが入ったらダメですってば」
「むしろ俺の部屋の風呂に入れたい」

こ、こいつ眼がマジじゃ・・・!
人のこと下衆だとか脳内猥褻物だとか言ったくせに、自分だってそっちのこと考えてるではないか。
相手がハルアのあたり、本気でシャレにならない。

「・・・やっぱり俺の部屋にしよう」
「「いやいやいやいや!!」」
「離せカク、急いでビニールのアヒルを買いに行く」
「聞くが、下心は無いと誓えるか!?」
「・・・ばかやろう」

ああああダメだこいつ!!
本気でダメだ!前から思っておったが危ない!!
答えるのに間を置いたくせに、質問に答えてすらないじゃないか。
こちらの大浴場に入れることには異論は無いが、この発情猫(言ったら殺される)の部屋の風呂になんか入れることを誰が許すものか。

「いいか、部屋の風呂の浴槽の中なら、二人で入るならどうしてもハルアを自分の足の間に入れることになる。足を曲げれば並んで入れんこともないが、どうも雰囲気に欠けるだろうが。分かるか、二人きりの密室でだぞ」
「すまんワシが悪かったからもう口を開かんでくれ」
「このロマンが分からんなら男じゃない」
「カリファアアアアア!!」

やっぱり眼がマジな男どうにかしてくれえええ!
さりげなくハルアを掴む腕に力をこめるな!

「ルッチ様カク様痛いです・・・!」
「すまん今手を離すとまずい!!」
「もう一度踏まれたいか、さっさと離せ」

だからそのマジな眼でこっちを見るな!
その殺気のこもった眼の奥で何考えとるか分かっとるんじゃからな。
このままでは埒が明かないので、ハルアを掴んだまま耳に口を寄せる。

「(ごにょごにょ)」
「えええ、そんな」
「言わんならワシは舌を噛む!!」
「ええええええ!?」
「ハルアにおかしなこと吹き込むんじゃねえ」
「言え!頼むから言ってくれ!!」

「ル、ル、ルッチ様の・・・(ぶるぶる)」

「?」

「ルッチ様のエッチ!!」

ばきん!とたしかに何かが砕ける音を聞いた。
一瞬でルッチの腕から力が抜け、一気に引き寄せてハルアを抱え、自分にできる限りの剃のダッシュでその場を後にした。
一度だけ振り返ると、顔を片手で覆い、もう片方で胸を抑えて膝をつく残念な男が見えた。
ハルアはごめんなさーい!と叫んでいるが、果たしてあの精神崩壊しかけの男に聞こえたかどうか。

結局、ルッチを除くCP9で話し合い、ハルアをこちらの大浴場に入れることに決めた。
もちろんハルアが入っている時は見張りを立て、絶対にルッチを近付けないように注意していたが、その時見張りだったジャブラを蹴り倒し、風呂場の中でハルアに土下座するルッチの姿にその場の誰もがため息を吐いた。


猫の行水、何人も眼に映すべからず


「かかか顔を上げてください!」
「許してくれるか・・・?」
「ハルアをガン見するな」
「出ていけ発情猫!」
「黙れ後で殺す」
「あんなこと言ってすいませんでした」
「いや、カクのバカが言わせたんだろう」
「ルッチ様はぼくのこと思って行動してくださったのに・・・」
「・・・・(すごく複雑)」



あとがき

すいませんでした(土下座)
ものすごく楽しかったです。←
少年はお風呂はどうなっているのかとネタ提供していただいたので、ぼんやり考えながら書いたら気付いたらこうなってました!不思議!
せっかく提供していただいたのに、あんまりにもルッチさんがあらららなことに。
だって一目惚れしてるんだもん、そういうことしたいよね!(ちょっと黙ろうか)
ちなみにこの暴走は抑え目です。読破ありがとうございましたー!
管理人:銘


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