番外・その5 [ 7/50 ]

残念ながら、ワシは犬にも猫にもなれん。
ふわふわの尾も無ければ、可愛らしく動く獣耳も無い。
そうじゃのう、できることと言ったら空中散歩ぐらいかの。
・・・しかし、これも六式を会得しとる奴なら案外簡単にできてしまう芸当。

他に何か!何か無いんか!!
考えてみても、思いつくのは物騒で血生臭いものばかり。

違う、そういうもんじゃなくて、もっとこう・・・!!

「ジャブラさま素敵すぎます幸せです・・・!!」

「ぎゃははは!見たか野良猫おおお!」

「失せろジャブラ。ハルア、俺だってつやつやだ」

あんな感じに、ハルアがメロメロになるような!!
今はジャブラの尾に顔を埋め、ふにゃふにゃとそれはもう幸せそうに笑っている。
横ではルッチが豹の姿でそわそわと毛づくろいしておる。(気色悪い)

ハルアが動物好きだと分かってから、あの二人は頻繁に能力を使うようになった。
動物系の肉食種は凶暴性が増すと聞くが、あの二人を見る限りはデマなんじゃないかと疑いたくなる。
凶暴性と言うか、デレデレ度が増すと言うか。
変態度と言うか、アホさと言うか・・・。

今日はジャブラにしがみついておるが、そこはその日の気分、またはどちらが先に姿を見せたかで変わるらしい。
実際、昨日はルッチにしがみつき、ひゃああ・・・!とふにゃふにゃしておった。
可愛い。大変に可愛い。
しがみついている物がかなり物騒だが、それでも可愛い。
むしろ、ハルアを抱きしめながらむずむずとくすぐったそうにしていたルッチが気色悪くて、可愛さが倍増して見えなくもなかった。

法の番犬部隊にも興味があるようで、飼育所にちょくちょく通っているのも知っている。
さすがにあいつらはまだ怖いらしく、触ったりせずに遠くから眺めているだけだが。
まあ、それだけハルアは動物好きと言うことじゃ。

それは良いが、それに対抗できるものをワシは持っておらん。
ああ、ワシも動物系の能力者じゃったら!
海に嫌われることになるが、その分ハルアが愛してくれるなら、プラスマイナス0どころの話じゃない。
プラス100をぶっちぎって、そりゃもうどこまでも。

ワシがなるとしたら何じゃろうか。
イヌイヌ?ネコネコ?ああ、トリトリも良いのう。
大きな翼を広げれば、きっと背にハルアだって乗せられるだろう。
空中散歩よりもっと上の、心地良い空が見せてやれる。
しかしスズメやニワトリならえらいことになるな。
能力面では良い部分もあるかもしれんが、それにしてもハズレすぎる。

「ハルア、野良犬なんて放っておけ」

「ひゃ、ルッチさん極上のつやつやに・・・!?」

「黙ってろルッチ!あ、ハルア−!」

「ふん(勝ち誇った顔)」

入念に毛づくろいした効果か、ハルアがジャブラの尾から離れて今度はルッチの腕の中へ。
・・・ルッチ、その姿でデレデレすると冗談抜きで気色悪いんじゃが。
腕に幸せそうなハルアを抱いて、そうなる気持ちは分かるがいかんせん気色悪い。
お、俺だって!と張り合うジャブラも気色悪い。
こうやって三人を観察しておるワシも残念ながら気色悪い。

そこまで考えて頭痛がしてきた。
・・・ちょっと落ち込んできた・・・。

「カクさん、どうしました?」

「ワシはどうすれば・・・ってハルア」

もう一度原点に戻って、どうやったらあの獣二匹と張り合えるか考えていたら、隣にハルアの小さな姿。
あの二匹は!?と見てみると、いつの間にやら取っ組み合いをしていた。
がるるるる!!と牙を剥く姿は狼と豹そのままで、さっきまでのでれでれした情けない犬と猫の姿は感じられない。

「のう、ハルアは動物の中で何が一番なんじゃ?」

「一番と言われると・・・むむ・・・」

これで狼か豹と言われてしまうとどうしようもない。
きっと男の子が好きそうな動物と言うと、やはり肉食系に集中してしまうんじゃろうなあ。
なぜだか頭にキリンが浮かんだが、強さとはかけ離れた姿にイヤイヤ、と首を振った。

「犬さんも猫さんも好きですし、みんな格好良くて可愛くて・・・」

「あー、鳥とか熊とか馬とか・・・兎や鼠なんてのもあるのう」

「むー・・・」

頭を抱えてしまうハルアに助け舟を出すが、それでも決まらないらしくむー、と悩んだまま。

「昔動物園に行ったことがあるんですが、その時一番感動したのは」

「な、なんじゃ!」

「キリンさんでしたねえ」

!!!!!
まさかの以心伝心!!
予想外に答えに驚いたが、ハルア曰く、あの平和そうな外見の割に脚力はなかなかのもので、油断して蹴られるとえらいことになる、というギャップにやられたらしい。
想像するとかなり怖い。
あの長い脚でいきなり蹴られたら、たしかにえらいことになりそうだ。

「でもどうしたんですか?動物さんはみんな素敵ですよ?」

「いやあ?」

ワシも構って欲しくて、と抱き上げると、きょとんとした後顔を赤くして笑ってくれた。
ハルアが言うならキリンも良いのう、とにんまり笑ったが、ここでやっと問題に気が付いた。

ワシに悪魔の実が手に入るか。
そしてその身は何の実なのかきっと分からない。

問題だらけじゃないか・・・!!
動物系うんぬんの前に気付けよワシ!!
くそう!と頭を抱えると、ハルアが心配そうに頭を撫でてくれたから良しとする。
当分はあの獣二人に近付けない、という方向でいこう。
そうだ、それが良い。
ずっとそうやって喧嘩してろ!とやかましい二匹に舌を出し、ハルアを抱えたまま自室に向かって歩き出した。


ねえ、好きって言って


「パオーン」
「ファンクフリードさーん!」
「(しまった、こいつを忘れておった!!)」
「今日も素敵なお鼻です」
「パオ(勝ち誇った顔)」
「叩き折るぞこのナマクラ・・・!!」


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