君の赤と [ 6/94 ]
「おらチアキ、食え」
「苦しゅうないぞキッド」
「殺すぞ」
そんな物騒なこと言いながらも、私の口にポッキーを運んでくれるキッドは優しい。
お、なんだなんだ、季節限定のイチゴミルフィーユじゃないのかこれ。
「うまいうまい」
「女ならおいしいって言えバカ」
「あーおいしゅうございますね。あーん」
「やっぱ殺す。・・・おら」
キッドはこんな甘いのなんて好きじゃないだろうに。
きっとレジに持って行くのも恥ずかしかったんじゃない?
そんな不良のナリしてピンクのパッケージのポッキー買うとか可愛すぎるぜキッド。
「キラーもあーん」
「ん」
キッドに一本もらって、隣で本を読んでいたキラーに差し出してやる。
仮面をちょっとずらしてぱくりとポッキーをくわえるキラー。
なんだお前も可愛いな!
「チアキ」
「もぐもぐ、うまい。なんだいキッド」
「(ぱか)」
・・・・。
ポッキーの箱をこちらに傾けて、口を開くキッド。
おいお前、その口は何のためにある。
ポッキー食うためだけにあるわけじゃあ無いんだぞ!
「虫歯は無いね」
「殺すぞ」
「やっぱ口紅似合うね」
「・・・殺すぞ」
キッド、私は何度殺されればいいんだろうか。
だからそんな口を開いて睨まれても困るんだよキッド。
会話をしよう会話を。
ポッキーの箱差し出してなんなんだ、くれるのか。
全部私にくれるのか!
「言っとくがお前にやるわけじゃねえぞ」
んだよ違うのかよ。
だから睨むなよう!!
キラーも笑ってんなよう!!
ポッキーくわえた口がにやけてんの見えてんだぞチクショウ!
「キッド、口で言わないとチアキは分からないぞ」
「うるせえ」
「その格好はなかなかに間抜けだと俺は思うが」
「・・・・」
「チアキ、あーん」
え、どうしたキラー。
なんかキャラじゃない気がするけど、口を開けて顔を向けるもんだから、キッドが差し出す箱から一本抜いて口に運んでやる。
キラーにもイチゴミルフィーユは似合わない・・・ことも無いか。
どうしよう、案外似合ってしまうぞ!!
とか考えてたら。
「あ、キッドもしかしてあーんしてほしかったの?」
「ばっ・・・・!」
「くくくく・・・!」
なんだキッド、あーん、って言ってくれないと分からんよ。
口を開いただけで飯が食えるのは鳥のヒナと赤ちゃんだけだ!
しかし、やってほしいならやってやろうじゃないか。
私もやってもらったし、ポッキーはそもそもキッドのだし。
「キッド、はいあーん」
「誰がするかバカが!!」
「さっきまでやっていただろう」
いつまでもキッドが食べてくれないから、キラーにあーんてしたら、また、殺すぞ!と怒られてしまった。
ポッキーを持っていた私の手は無理やり掴まれてキッドの口に。
あめえ!とまた怒るキッドはやっぱり可愛いね。
君の赤とイチゴの赤「キッド、明日はグミがいいなあ」
「その頭いっぺん踏んでやろうか」
「そんなこと言って買って来てくれるんだねえ」
「違いない」
「お前らマジで殺す!!」
「あーんしてあげるから」
「だ、ばっ・・・!殺す!!」
「くくく・・・」
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