*after word*

【愛しい】あれからのふたり







「私が言うのは変ですけど、おかえりなさい」
峯さんが入院中、私は掃除のために定期的に峯さんの自宅に通っていた。
そのせいもあって峯さんの家がまるで自分の家かのような感覚になってしまった。
そして今日は、待ちに待った退院の日。
久しぶりに峯さんがこの家に帰ってきた。
「掃除やら何やらやってもらって悪かったな。おかげで家は綺麗なままだ」
久しぶりに帰ってこられた峯さんはリビングを満足気に見渡すと、お気に入りの黒革のソファに深く腰掛けた。
「今日は私が夕飯を作るのでゆっくりしてくださいね」
「フッ……期待しないでおくよ」
峯さんは冗談まじりで言うと、ソファーに寄りかかって窓の外の景色をぼんやりと眺めた。
「何だか疲れたな……少し寝てもいいか?」
リハビリをして体力は戻ってきているとはいえ、何ヶ月か振りに外へ出たからタクシーに乗って家に帰って来るだけでも疲労してしまったみたい。
特に入院中は気を張っていたんだと思う。
家に帰ってきてからの峯さんは、すごくリラックスしている様に見える。
「少しと言わずいっぱい寝てください。ごはんの時間になったら起こしに行くんで、寝室で寝た方がいいですよ」
そう言うと峯さんは「ああ」と素直に返事をして、キッチンにいる私にサラッとキスをしてから寝室へ入っていった。
不意打ちのキスに驚いて声が出ない。
病室でこっそりキスをするのは日課だったけど、病院の外でこうして普通にキスをするのはあまりにも久しぶりすぎた。
「……よし、今日は気合いいれてご飯作るぞ」
間抜けな顔になってる自分の頬をぱちっと叩いて気合を入れ、私はあらかじめ買っておいた食材を冷蔵庫から取り出して夕飯の支度を始めた。









入院中に峯さんの好きな食べ物を聞くと、意外にもハンバーグと言われた。
何だか子どもみたいで可愛いなぁなんて思いつつも、怒られそうだから笑うのを我慢したけど。
今日は好きだと言っていたハンバーグをたくさん作りすぎてしまい、退院したばかりでそこまで食欲がない峯さんは困り顔をしながらもいっぱい食べてくれた。
好きなものを先に食べるタイプらしく、ハンバーグは一番最初にお皿からなくなっていて、私は嬉しくて峯さんの顔をニコニコしながら眺めていたら「そんなに見るな」と怒られてしまった。
それからお風呂を済ませて、横になっている方が峯さんは楽かなと思い、まだ寝ないけど私達は寝室で二人で横になっていた。



「跡、結構残っちゃいましたね」
お風呂場で峯さんの大きな胸の傷を見て、すごく心が痛んだ。
痛みはもうなくたって、傷跡はこの先一生残るんだ。
この傷を見る度に、あの日の事を思い出すんだろうな。
「なまえが気にする事ない」
向かい合ってベッドに横になってると、峯さんが私の頬に優しく触れた。
私は峯さんの手の上に自分の手を重ねて、峯さんの体温を感じ取る。
「あったかい」
手のひら、小指、薬指……と順にキスをしていき、私は最後にキスをした峯さんの親指の先端を少しだけ口に含んだ。
峯さんの全部が愛しくて愛しくて。
峯さんを食べちゃいたいくらい堪らなくなって、つい私は峯さんを誘惑するような事をしてしまう。
峯さんが驚いた顔をしてこっちを見ていたのは分かっていたけど、私はそのまま指に舌を絡めた。
ちゅぱっ、ちゅぱっ……
いやらしい音が響く。
「誘ってるのか?」
峯さんは私の口内にある親指を舌に絡めるように力を入れ、第一関節を曲げてかき回してきた。
「んっ……」
中をかき回されて私の息が上がってくると、口内からねっとりと指を取り出して私の唇をふにふにと指先でつついた。
「そんな顔して煽るな」
フッと笑う峯さんは、少し困っているように見える。
そうだよね……今日退院したばかりなのに、これ以上の事をしたら体に負担がかかってしまう。
峯さんを困らせたらダメだ。
私は峯さんの手をそっと払い除け、分厚い胸板に抱きついた。
「ごめんなさい。峯さん疲れただろうし、今日はもう寝ましょう」
これ以上こんな事してたら我慢できなくなってしまう。
少し強引に「おやすなさい」と言って、目を閉じた。
峯さんから、返事はない。




「きゃぁっ!」
突然耳を舐められて、私は体を大きくビクつかせた。
「こんなにしておいて、おやすみはないだろ」
峯さんはパンパンに膨れ上がった下半身を私に押し付けると、更に私の耳に舌を這わせてきた。
「んっ……だって……峯さんの体に負担かかっちゃう」
「なまえを満足させてやれるほど激しくはできないが、普通になら大丈夫だ」
「わ、私そんな激しいの求めてな……」
恥ずかしくて否定しようとするとキスで塞がれてしまった。
峯さんの手がお尻を撫で回すと、太ももの間に手が侵入して、服の上から割れ目の部分を指で擦り付けてきた。
「んー……」
更に反対の手は背中側から服の中に入れ、ブラのホックを器用に一発で外してしまった。
「ま、待って」
唇を離して私の体を触っている峯さんの手を掴むと、峯さんは怪訝そうな顔をした。
「どうした?」
「いえ、その……峯さんはそのまま横になっててください」
いつも私は峯さんのされるがままだから、体調が良くない時くらい私が峯さんを気持ちよくさせてあげたい。
そんな私の事を止めようとしたけど、私は気にせず峯さんの着ているワイシャツのボタンを外して胸元にキスを落とした。
少しずつ横にずらしていき、硬い胸筋の上でぷっくりと膨れている突起をぺろっと舐めたり吸ってみたりして、チラチラと峯さんの反応を見た。
「……ここ、男の人も気持ちいいんですか?」
舐めながら見上げると、峯さんの表情はあまり変わっていない。
だけどどことなく、少しだけ感じている顔にも見える。
「ん……? まあな」
拒否をする訳でもないから、私は引き続き集中的に舌で刺激をしてみた。
反対側は指でつまんだり擦ったりして、口に含んでいる突起には唾液を絡ませながら舌を這わす。
するとたまに、小さくピクッと反応が返ってきた。
「もういい……」
峯さんは私の頭を撫でたあと、優しく押し返す。
どうやら感じているみたいで、峯さんの顔が熱っぽさを帯びている。
私は感じている峯さんの表情が可愛く見えてしまい、今度は耳たぶにかぶりついた。
耳元でわざと音を立てるように舐めたり、吐く息を大げさにしてみたりして、峯さんの気持ちを高ぶらせるように精いっぱい努力した。
すると自分自身がどんどん盛り上がってきてしまい、無意識に腰がくねくね動いて峯さんの太ももに擦り付けてしまった。
「触って欲しくてしょうがないんだろ」
峯さんは横向きから仰向けに体勢を変え、私を持ち上げて上に乗せてきた。
上に乗った私のパジャマのズボンと下着を一気に脱がせて、後ろから指を入れてきた。
「あっ……!」
前がはだけている峯さんのワイシャツをギュッと握りしめて、体内に入り込んできた太い指に意識を集中させた。
数ヶ月振りだからか、感度がいつもより増しているように感じる。
出し入れする峯さんの指が気持ちよくて堪らない。
「ハッ……凄いな」
ぴちゃっ、ぴちゃっ、
ただ出し入れしていただけの指は、次第に中をかき回すように動き回る。
膝を立ててお尻を突き出すような体勢の私は、峯さんの首元に顔を埋めて甘い声をあげていた。
「あっ……んん……はぁっ、……」
「今日は俺を気持ちよくするんじゃなかったのか?」
「……だ、だって……」
すると峯さんは指を引き抜き、中途半端に脱げていたパジャマと下着を全部脱がせてしまう。
そして、私の体をぐるっと反対側に向けた。
「え……えっ?!」
「これなら同時に気持ちよくなれるだろ」
峯さんの顔の上で跨ぐ状態にさせられて、私の目の前に峯さんの苦しそうに膨らんでいるズボンが視界いっぱいに広がった。
いわゆる、シックスナインというやつ。
「これはさすがに恥ずかし……あっ」
恥ずかしがる私を気にすることなく、峯さんは再び秘部へ太い指を侵入させてきた。
既にぐちゃぐちゃになっている割れ目は、どんどん指を飲み込んで行く。
一度抜いたかと思いきや、今度は割れ目の皮膚を横に引っ張って広げ、とろとろになったそこを舐め始めた。
「ああーーっ……」
指とはまた違う快感に腰が砕けそうになるのを何とか堪え、私も峯さんを気持ちよくしなくてはと思い目の前にあるズボンに手をかける。
ズボンと下着を下にずらすと、中からはち切れそうな程に大きくなった峯さんのモノが姿を現した。
先端から少し透明の液が漏れてキラッと光っていて、拭き取るように舌の先で舐め上げると峯さんの腰が僅かに反応した。
私は大きな口をあけて、それ全体を口に含む。
「ふ……んん……」
下半身が電気の流れるような快感に襲われているのに、口に含みきれないくらい大きな峯さんのを舐めるなんて、そんな器用な事うまくできる訳がない。
声が漏れてしまってうまく舐められないでいると、峯さんは諦めたのか私を持ち上げて体を起こした。
「しょうがないな……じゃあ上に乗って自分で挿れてみろ」
「………うん」
早くも上り詰めそうになっていた私は素直に頷き、再びベッドに横になった峯さんを跨いで上に乗った。
手で押さえて入り口に峯さんのモノを宛てがい、ゆっくり腰を落として自分の中に侵入させていく。
「んあぁっ……」
待ちに待った、数ヶ月振りの圧迫感。
それはあまりにも気持ちよくて。
私は息を吐きながらそれを全て飲み込んだ。
少しずつ腰を揺らし、全身を襲う快感に身を任せていく。
そんな時、峯さんが私の腰を掴んだ。
「上も全部脱ぐんだ」
中途半端に脱げたままだった服とブラジャーを下から引っ張られ、それをそのまま一気に脱いだ。
「手を着いて」
言われた通りに峯さんの横に手を着くと、両手で私の胸をやわやわと揉みほぐしてきた。
「ほら、早く動いて」
「ん……」
早く気持ちよくなりたくて、焦る気持ちをそのままに素早く腰を揺らした。
ぱちぱちと弾ける音が聞こえてくる。
私の秘部はだらしなく愛液でまみれ、峯さんのモノが奥に当たる度にそれが当たって湿ったいやらしい音がたってしまう。
息が苦しくなってきた。
死ぬほど気持ちいい。
下で苦しそうに歯を食いしばって我慢してる峯さんがやけに色っぽく見える。
何だかどうしようもなく愛しくなって、子宮の奥がキュウッと締まるような感覚がした。
「峯さん……手……つなぎたい…」
お願いするようにとろけた目で峯さんを見下ろすと、胸を揉んでいる手の動きが止まった。
差し出した私の手を掴み、するすると指と指が絡み合う。
「そんな可愛いこと言うな」
今度は峯さんが、下から私を打ちつける。
自分で動くよりも何倍も気持ちよくて、さっきよりも大きな声でいっぱい喘いでしまう。
気持ち良さでおかしくなりそうな中、峯さんを見つめる視線は外さない。
もう……ずっと峯さんを見ていたい。
汗で額に張り付いた前髪も、食いしばってちらりと覗かせる白い歯も、苦しそうに私の名前を呼ぶ低くて掠れた声も……全部がカッコよくて堪らない。
私の中で感じてる顔を、もっとよく見たい。
見せて欲しい。
「何をそんなに見てる」
私のしつこい視線に痺れを切らしたのか、下にいる峯さんが口を開いた。
「だって……んっ、峯さんカッコいい、からっ……ずっと見てたい……の……」
「……馬鹿」
打ちつける腰の動きが更に激しくなって、体を支えきれなくなった私は峯さんの上に倒れこんでしまった。
そのまましがみ付き、貪るようにキスをする。
繋いでた手が離されると、その手は私の背中に回り、強く強く抱き締めた。
「なまえ……可愛い」
「みねさっ……だい、すき……」
「はぁっ……俺も……好きだ」
私の汗と峯さんの汗が混じり合い、どんどんお互いの息が荒くなっていく。
打ち付ける腰の動きは激しく、私は峯さんの上に跨っているのが辛くて今にも崩れ落ちてしまいそうだった。
「あっ、もう……峯さんっ……」
「はぁ……俺も……もうダメだ」
峯さんは苦しそうに小さく声を漏らし、深く私の中に腰を押し付けた。
どくん、どくん、
ヒクつく私の中で峯さんのモノが脈打つ。
熱い白濁液が体内で吐き出されたと同時に、私は峯さんの体に強く抱きついてキスをした。











「だいすき」
汗だくになってしまったから再びシャワーを浴び、着替え終わった私は峯さんの後ろから腕を回して抱きついた。
以前よりかは痩せてしまったもののそれでも平均男性より遥かに筋肉がついていて、男らしい峯さんの体にうっとりしてしまう。
「なまえがこんなにくっつき虫だったとは意外だな」
「え? そうですか?」
峯さんはフッと笑うと、抱きついている私の腕をギュッと握った。
「見かけによらず結構気が強い人だと思っていたから、こんな甘えん坊だと思わなかった。いつもこんななのか?」
思い返してみれば、確かに私はこんなベタベタするタイプじゃなかった。
これはきっと、峯さんの身にあんな事があったからだと思う。
「違いますよ、峯さんにだけです。嫌ですか?」
抱きつきながら前に顔を覗かせると、峯さんはクスリと笑った。
「いや……悪くない」
峯さんは自分の体に回された私の腕を振りほどき、向かい合わせになって私を強く抱きしめてきた。
峯さんはよく、『悪くない』って言う気がする。
前にほぼノーメイクに近い状態で峯さんのお家に行った時も、そんな事を言っていた。
それを言う時はいつも、何だかんだ嬉しそうな時だ。
照れ隠しな感じが何だか峯さんらしくて、私はこの台詞が好き。


「何だか……なまえの全部が愛しい」
頭を撫でながら切なげに私を見つめる峯さんを見て、良い意味でキュッと心臓が締め付けられた。
「私も同じ気持ちです」
私は峯さんの頬を両手で掴み、グイッと自分の方へ引き寄せてキスをした。
そんな私に峯さんはビックリした顔をした後、嬉しそうに笑いながら私を抱き締めた。
強く、強く、もう離さないと言っているかのように。


「愛してる」


これからもずっと、嫌になるくらい何度でも言ってほしい。
胸焼けするくらい、私も毎日言うよ。


「私も愛してます。……義孝さん」





〜愛しい〜 2017.9.6
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