昔読んだお伽噺には、王子と姫が幸せになる話しか書いていなかった。一介の従者が幸せになる話は聞いたことがない。そう、国王であるシェルファに笑いかける、主を見て思った。まさか、自分がこんなことを考えるとは思いもしていなかった。元々望みなどないのだ。叶えられない。自分は彼にとって、特別で信頼されているのもわかっている。だからこそ、その先には踏み込んではいけなかった。叶わないからこそ、想ってしまう。そして、彼を一番傍で見てきた、という優越感がこの想いに変化してしまったのだ。もう、想いは無視することは出来ない。だが、その想いを肯定し、受け入れることは許されない。

「貴方の、傍に居させてください」

その呟きは闇夜の風に消された。それでいいのだ。この想いが誰かに知られることがあってはならない。ハッピーエンドは、過去に忘れてきた。夜風が、容赦なく吹き付けていた。





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