小説 のコピー | ナノ
クリスマス、それは恋人たちが愛を深め合う日。教室の隅では女子がキャイキャイ言いながらクリスマスのデートプランを練っている。私はそんなキラキラした光景をぼんやりと眺めていた。クリスマスと聞けば私が思うのはケーキか七面鳥ぐらいだ。今年はどこのケーキを買って食べようか。ホールだと一つの味しか楽しめないのが少々気になるから1ピースずつ買おうか。あーお腹空いてきた。
「お前なんて顔してんの」
「あら、高尾」
ひょっこりと私の顔を覗き込んできたのは隣の席の高尾だ。彼も恋人たちのクリスマスとは無縁だろう。モテはするものの彼女ができたという話は一度だって聞いたことがない。まあ部活が忙しいから仕方がないだろうが。
「すげーアホそうな顔だな」
「そりゃどーも」
「褒めてねえし」
そう言って笑いながら私と向き合うように前の席に腰掛けた。
高尾は入学した時からなんだかんだ縁のあるやつでだった。入学式の席が前後、教室での席も隣。それから何度も席替えをしたものの席は必ずと言っていいほど隣。毎回希望する委員会も同じ。そして私の幼馴染である真太郎とも友好を深めていた。よくもまああんな堅物の相手を飽きもせずできるもんだと毎回感心してしまう。まあこんな感じで高尾は他の男子と比べて仲が良かった。
だから彼女がいるとかいないとか、そんな話は噂ではなく直接本人から聞いたことだ。間違いない。だからこいつもクリスマスは暇なはずなのだ。
「高尾さー、クリスマス暇?」
「え?ナニナニデートのお誘い?」
「違うっつーの。クリスマスは毎年緑間家とパーティーだっつーの」
「えっ!ナニソレ超行きたいんだけど!」
「やめてよ真太郎に怒られるの私なんだからね」
「えぇー、ちなみにさーソレ25日の話でしょ?だったら24日は?」
「は?イブ?そんなん決まってんじゃん家で寝る」
「うっわ、サミシー!」
高尾はそう言いながら腹を抱えて笑った。なによ、あんただってサミシー奴のくせに。この非リア充め。そう心の中で悪態をついて見るものの高尾はまだ飽きもせずに笑っている。私がさみしいのがそんなに面白いのかこの男。ぶすっとした顔で高尾を睨んでいるとようやく笑いが収まったようでお腹を摩りながら私の顔をみた。
「んな怖い顔すんなよ、悪かったって」
「いいよ別に。慣れた」
「あのさー提案なんだけど24日寝るほど暇なら俺に付き合ってくんね?」
「は?部活は?」
「午後から休みナノダヨ」
「へえ、そう」
「ん、だから俺とあそぼーぜ」
なっ?そう言ってニカッと笑った顔を見せられるとなんだか満更ではなくなって、いいよ、と返事をしてしまった。
クリスマスイブに、男と2人。真太郎、怒るだろうな。