夜更けに何の前触れも無く郭嘉の元を訪れた張遼は、これまた何の前触れ無く彼を押し倒した。
「っ、おいっ!どういうつもりだ!」
何時になく真面目な表情に巫山戯ている訳ではなさそうだが。
(尤も、この男が巫山戯ているのを見た事は無いのだが)
「…張、遼?」
苦しげに名を紡げば、その瞳に何か得体の知れないものが灯るのを見た。
「郭嘉…」
吐息交じりに名を呟いた唇は次の瞬間には郭嘉の口を塞いでいた。
「っん…」
荒々しく咥内を弄る口付けに、こいつ案外上手いな…等とぼんやり思っていると、手際良く衣服を剥ぎ取られていく。
やはり、この男は俺を抱くつもりなのか。
躯中に施される愛撫は、無骨な男に反して意外に細やかで、その懸隔に翻弄される。
そうして躯を裏返され、いよいよその熱を体内に受け入れる段になっても抗う事すら無く。
揺さ振られるままに嬌声を上げる。
「何故、抵抗しない」
耳元で問い掛ける声には隠しきれない戸惑いが滲む。
いきなり押し倒しておいて何を言うのか。
「っ俺が…、貴方に、敵う訳が…っ、無いだろ…?」
苦笑交じりに揶揄してみせる。
確かに、力では勝てないのだが。
この男がどういうつもりで俺を抱くかなんてどうでも良い。
俺がそうされたい、と望んでいる。
ただ、それだけの事だ。
…それをこの男が知る必要は、無い。
「敵わなければ、屈するのか?あんたは」
「っ、…どうだって、っん、良い…だろっ」
意外にも食い下がる張遼に突っぱねる。
誰にでも躯を開く男だと思われただろうか。
それでも、別に構わない。
情なんて欝陶しいだけだ。
「…郭嘉」
呼ばれて僅かに顔を上げると、
「愛してる」
「っな!?っ、あぁっ!」
思い掛けない告白に、頭より先に躯が反応する。
「っ、郭嘉…、お前」
中の男を締め付けてしまい、張遼が息を吐く。
不覚、だ。
気を良くした張遼が律動を速めるのを忌ま忌ましく思いながらも、それを悦ぶ躯は止めようも無く。
「そうか、っあんたも俺の事、好きか」
嬉しそうな声がまた腹立たしい。
「んっ、誰もっ…ぁっ、そんな事っ言ってな…あぁっ!」
さらに力強く揺さ振られて、言葉を紡ぐ事すら儘ならなくなって。
「―くっ」
「んっ、ぁ…っ、ああぁっ!」
体内に拡がる熱を感じながら郭嘉も己の熱を吐き出した。
「…普通、逆じゃないのか?」
綺麗に清められた躯を後ろからすっぽり抱きしめられている郭嘉が抗議するのを、
「告白して断られたら、そこで終わってしまうだろう?」
実に悪びれなく言う張遼に、開いた口が塞がらないとは正にこの事。
「だからと言っていきなり実力行使はないろうが!」
呆れつつ脱力していると抱きしめられている腕に力が篭る。
「で、結局の所あんたは俺の事どう思ってるんだ?」
「…さぁな」
素直に答えるのも癪なのでそう嘯いておく。
と、頭上で微かに笑う気配がして、
「あんたは躯の方が素直だな」
「―なっ!」
憤り思わず振り返れば唇を奪われる。
「お慕い申し上げておりますよ、軍祭酒殿」
それから、吐息が掛かる程の距離で再び囁かれる告白に一瞬頬を朱に染めた後、郭嘉は苦虫を噛つぶした様な表情になった。
嗚呼、
全く以て何とも煩わしい、
恋情という奴は。
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いきなり裏で我ながらビビっております(汗)。
私的張郭のテーマが殺伐としたラブラブなので(イミフ)、そんな感じで頑張っていきたいと思う所存です。
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