「…っ」
司馬懿の下で快楽に身を染めているであろう曹丕は、しかし声を押し殺しその様をあらわにはしない。
こうして躯を繋げられる事を至福に思いながらも、それが唯一の不服。
「…曹丕殿」
「っ…何、だ」
「何故、声をお上げにならないのです?」
その事を尋ねてみれば、一瞬驚いた様な表情を見せ、それから微かに笑う。
「男の喘ぎ声など、聞きたくはなかろう?」
気持ち悪いだろう、どこか自嘲を含んだ物言いに司馬懿は心中で肩を落とす。
(この人は、本当に解っていない─)
動きを止め自分を見詰める司馬懿に曹丕は不可解な眼差しを向ける。
「仲達…?」
「ご理解頂けていない様なので申し上げますが」
言葉尻に怒りが滲んでいて曹丕は益々不思議そうな表情をした。
「私は曹丕殿をお慕いしております」
「…その様だな」
「と言うより寧ろ愛してます」
「…それで?」
「ですから、貴方の全てが欲しいんです」
零れる涙、紡ぐ吐息、向けられるその眼差し。
躯も心も曹丕を形成する全てのものを自分のものにしたい。
ある意味、狂っているのかもしれない。
「だいたい、気持ち悪いと思ったら抱いたりしません」
鳴かせたいんですよ、と挑発的に笑って見せれば曹丕は溜息をついた後、悪趣味だな、と呟いた。






「んっ…、あっ…あぁっ」
それでもまだ抑え気味ではあったが、揺れる躯に合わせて曹丕はいくらか声を聞かせる様になった。
その表情にも悦楽が見て取れて。
(そう、慌てずとも良いか)
ゆっくりとその仮面を剥いでいけば良い。
「気持ち、良いですか?」
「あぁっ!ん…っ、あぁっ」
深く、その奥に身を沈めて快楽の源を掻き乱しながら尋ねれば、
「…っ!」
背に回っていた指が爪を立てた。
「っ…その、くらいっ、察せ…っ」
「聞きたかったんですけどね」
貴方の口から、と指でその唇をなぞる。
「お前は、どう…なんだ…っ」
「勿論、望外の極みですよ」
にっこりと微笑むと司馬懿は愉悦の頂を目指すべく律動を速めて曹丕をその高みへと導いていった。






「やはり、悪趣味だな」
そうして互いの熱を存分に貪り合った後、司馬懿の腕の中で曹丕が呟く。
「申し訳ありません」
苦笑しながら愛しげに髪を梳く司馬懿を見上げ、曹丕は盛大に溜息をついた。
「曹丕殿?」
「本当に悪趣味なのはな、仲達」
それから、同じく苦笑して、
「そんな男を心底愛してしまっているこの私だ」
「─っ」
そんな事を言うものだから、司馬懿はうっかり再び組み敷きそうになるのを堪えるのに苦労した。
「…良いではないですか」
似た者同士なんですよ、と言ってやれば、それもそうだな、と笑って曹丕は司馬懿の胸に身を埋めて目を閉じた。
「明日は、寝坊させろ…」
「御意」
眠りにつく愛しい人を優しく抱き締めながら、司馬懿はこの上ない幸福を噛み締めていた。




















■■■

何と言う甘ったるさ…!
ホント済みません。ウチの二人はやっぱこんな感じです(汗)。


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