あきぞらのはて。

-05-

放課後。
私とティラは、まだ教室にいた。

数学の時間。
運悪く分からないところばかりを当てられたティラは、残って課題をやるようにと先生に言われ、
その居残りに私が付き合っていた。

「はぁ…もう、やだ…」
「元気出してよ、ティラ。」

「だって。まさかそんな、…何で今日に限ってあんなに、当てられるのよ…」
「そんな日もあるわよ。」

「そうだけど!なんで、よりによって分からないところばっかり…」
「分からないところを、無くしておけばいいのよ。」

「そんなに簡単そうに、言わないでよ…」
「…。………そんなに気を落とさないで。これだけ頑張っているんだから、出来るようになるわよ。」

「…うん。ありがとう…」
「いいえ。……ほら、あと1ページ!」

「居残りがこんなに辛いなんて思わなかったわ…」
「でも、結構すらすらできるようになってるじゃない。」

「…そう、かな?」
「そうよ。」

そこで、ふ、と私は窓の外に目をやる。
きれいに、晴れ渡っている。

「…、綺麗な夕焼け。」

「あー、そろそろ暗くなっちゃうのか…まだ5時なのにね…」
「私、あと30分は残れるから、それまでは頑張ってみたら?」

「う〜ん…出来れば終わらせちゃいたかったんだけどなぁ。でも、まぁ…残りは家でできなくもないかもね」
「うん、じゃあそれまでにしましょう。…私の都合でごめんなさいね。」

「いいのいいの。無理言って残ってもらっちゃったし…」
「『分からない所は教える』って言ったの私だから、構わないわよ。」

「そう?わざわざありがとね。…よし!もうちょっとだから頑張ってみるよ。」

暫し、沈黙。
ティラが数式を書き込む音だけが響いている。

それに耳を澄ましていると、その音が止まった。

「…? どうしたの?」
「んー。何か、気になって。」

「何が?」
「空。」

そう言って、ティラは空を見上げた。
ああ、やっぱり――

「ティラも、空、好きなの?」
「うん。…何か、空の色見てると吸い込まれそうな感じ、するんだよね〜。」

「そう、なんだ。」
「うん。――あ、ごめんね、急に変な事言っちゃって。」

「………、いいえ。」

エリオットさんの予感は的中してしまったようだ。
すぐに、知らせないと――

「あ。…ごめんリリカ、もう30分になっちゃったみたい。」
「え?」

声を掛けられて、はっとする。
――閉門の時刻を告げるチャイムが鳴り響いていた。

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