誰が為 | ナノ




▼ 飼い殺しなら赦されるのか

遂に退院が明日になった。流石に文字位は読めなきゃマズイと焦っていたけれど、気合いと根性でなんとか文字を読めるようになった。そして気を利かして色んな人(主に看護師の皆さん)が病室に持ってきてくれた書物には非常に興味を惹かれることが書いてあった。
忍者は分身したり、口から炎を出したり、様々な芸当が出来るという…。まぁ私も含め錬金術師同士の戦いは一般人から言わせると『万国人間ビックリショー』らしいので。忍者になる為には普通チャクラというエネルギーが必要らしい、こちらで言う等価交換とか賢者の石やらの媒介が必要なんだろう。チャクラとは2つのエネルギーの呼称である。身体エネルギーは人間の身体を構成する膨大な数の細胞一つ一つから取り出すエネルギーを指し、精神エネルギーは修行や経験によって蓄積したエネルギーを指す。
私の場合きっと精神エネルギーは有り余っているだろう。そりゃあ二十数年は生きていたし戦争には出たし戦いの最中で命を落とした位だ、だが問題は身体エネルギー。生まれつき細胞からエネルギーをかき集められない人も居るみたいだし、そもそもチャクラを作り出すには両手で印を結ばなければならないが…私は片腕しかない。
チャクラが練れなくても錬金術で…と思ったが確か祖国で錬金術が使えたのはかの"お父様"の力を知らず知らず使っていたから。自分の野望の為に地下に流していた賢者の石のエネルギーを使ってこそ使用できていた筈。もちろんこの世界には賢者の石なんて無いだろうし作る気も起きない。確か死ぬ前に何かやっていたな…錬金術式を錬丹術式で中和させるとかなんとか。理論は分からないが錬金術式だけは覚えている。

「…義手でも作ろうかなぁ」

機械鎧のようなものを作れば何とかなる筈。チャクラは上手くコントロールすれば人形も自由に操れると本に書いてあった事だし、神経接続できる技術が無いのならば動かせば良いじゃないか。錬金術の方は…体に刺青でもすればいいか。どうせ戦いに身を置いたら体なんてズタボロだ。結婚するなどの願望も今は薄い。
思い立ったらすぐ実行という言葉通りにその辺にあった紙に計算やら錬成陣を書き込んでいく。あと機械鎧も。顔は思い出せないが私がお世話になっていた機械鎧の整備士に偶々構造やら仕組みを教えてもらっておいて良かったよ。


「…これは一体」
「あぁおはようございます火影様」
「このガキが壬波家の…」

火影様と得体の知らない白髪の男が絶句しているのも無理はない。そこらに散らばった紙には祖国の言葉がびっしりと書き込んであり、得体のしれない模様がたくさん書き込まれている。錬成陣やら理論を組み立てたり思い出すのには意外と時間がかかり気が付いたら朝日が眩しかった。機械鎧はさっさとイメージが湧いたのだが。

「そこの白髪の人は誰でしょうか。私は壬波アマモです」
「ワシ?ワシは自来也という」
「そうですか」
「アマモの左腕について相談してての」

言動、言葉遣いからして自来也さんは火影様の弟子なんだろうか。…それにしても私の左腕の話?

「どういう事です?」
「昨日貸した本には目を通したか?」
「まぁ一応」
「なら話は簡単だ。チャクラを練る為には両手で印を結ぶ必要がある。幸いにもは両親が遺していった財産があるから義手でも…」
「そういう事ですか。私もそう思っていた所なのでコレ設計図です」
「なんと!」
「あと試してみたい事があったので背中か脇腹辺りに刺青入れます」
「体に傷を付けるなんて若いおなごがやる事じゃあないぞ」
「左腕が無い時点でもう一緒です」

そうしないと錬金術発動がしないんだ!なんて言ったら言ったで問題になるので言わない。そもそもなんでこんなにも私を気にかけてくれるのだろう?裏がありそうな気もするが、言葉遣いのせいで年齢相当の言動をしていないのだからここは素直に好意を受け取る。どうしても若作りできなかったんだ、それに今更取り繕っても感があるので。

「先生、それならワシがこの小娘を匠の国に連れて行く。丁度頼んでおいたモノが出来上がったらしいからのう」
「匠の国?」
「忍具の製作に秀でた国で各国の忍者に忍具を供給しているのもそこでの」
「まぁお前がついて行くのならば安心じゃの」

と言う訳で私、まだまだ独り暮らしはしない様です。






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