悪人 | ナノ




▼ 海にいったらだれもが魚

ポケモンを手持ちにするのには、こだわりがある。1、みずポケモンであること。2、顔が厳つめであること。

「あんたのポケモンって、みずタイプばかりなのね」
「そりゃあ海を愛するアクア団だったからな」
「イクリも海が好きなんですか?」
「あぁ。故郷は本当に……綺麗な海だよ、ホウエンの海は」

海は、水はすべてを受け入れてくれる。浮かぶも沈むも選べる。それに、海は。
潮のにおいが恋しくなるのを振り払うように、俺はコップの水を飲み干す。この国は陸の建物は本当に綺麗で、近代的だと思う。自然に満ち溢れたホウエンとは違い、町並みもどことなく近代的なものが多い。代わりと言ってはなんだが、海は汚い。ポケモンが住んでいるから、もちろんヘドロまみれだとかでは無い。ただ、ホウエンとはどうにも違うのだ。ダイビング禁止とか。

「泳げる場所が少ないな」
「それはホウエンと比べて?」
「ホウエンは周りを海で囲われている。暇さえあれば海に行っていた」
「田舎者ですか」
「カントーだって昔は田舎だったろ」

最初は151匹しか居なかったと言われているポケモンも、気がつけば700種、いやそれ以上が生息していることが分かったり。リニアが出来たおかげで各地に移動できるようになったり。ポケモンの娯楽も本当に増えたと思う。そんな中、俺達は時代の流れに取り残されているのだ。いい年こいて、『 わるいこと』に夢中になるガキは果たして何人、居るのだろう。

「大人になるって難しいよなぁ」
「まだ尻の青いガキなの?」
「そういう訳では無いよ……あぁそうだ、多分訪れないとは思うが気が乗ったらトドゼルガにでも乗って海を逃げればいい」
「任務失敗前提で話を進めないでください」
「いや失敗したろ?俺の目の前で」
「ランスの負けね」
「……言い返せないのが悔しい」
「トドゼルガは一番マイルドな泳ぎだから」

トドゼルガ。彼は俺が初めてゲットしたポケモンであり、タマザラシの頃から今までずっと隣に居てくれた良きパートナーだ。トドグラーからトドゼルガに進化した際、可愛くないということで大量に捨てられたトドゼルガが一時期問題となったが……このくらい厳つい方がオレは好みだ。それに、悪の道へ逸れてしまった自分に付いてきてくれた、その事実が嬉しいのである。

「他にもいるんでしょう?そいつらはどうなのよ」
「うーん、大体気性が荒いけれど皆イイヤツさ。まぁ1匹だけ釣りすらやらせてくれないせっかちな奴がいるが」
「えっ」

ランスの間抜け顔にせせら笑う。俺の手持ちはトドゼルガ、シザリガー、パルシェン。あと2匹居るから計5匹だ。どいつもこいつも海が大好きな、俺の大切なパートナー達。

海にいったらだれもが魚

そうそう。当初の用事をすっかり忘れていた。長話をしに来た訳では無い、スーパーの特売品を貰いに来ただけでもない。手持ちの話を脇に蹴り、俺は伝えようとしていた事を切り出した。

「ホモエドのコンテナ、ライモンのバトルサブウェイ」
「ん?」
「職員に何かの発表が近日中にある。……サツが動きそうな感じがする」
「聞いてないわ。情報源は」
「ヤーコン直々に発表だ。俺の職どうなるのかなぁ」
「稼いでるでしょう?しかし、プラズマ団の残党が動いているのと関係はあるんですかね」
「さぁな。ジュンサーの行動にお互い気を付けるこったな」






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