隣人に素性が割れてから数日。俺もあちらもお互い特に何も起きずに日々は過ぎていっている。おはようの挨拶もするし世間話だって少々。変わった事といって思い出す事も無いが、まぁ夜中の物音やら何やらは『あぁそういうことだったのか』程度にしか思わない。部下がヘマやらかしたなんてバッドな報告に比べたら全然、というのがお互いだろう。なんたって一応は幹部職を語るだけの度胸は無いと困る。
「最近どうもキナ臭いよな、この街」
「変な奴等がうろうろしてるな」
一服しながら語るのはお隣のベランダに居る男、ラムダである。室内で吸えないのだろう、俺も同じだ。煙草を一本数だけで奴ら犯罪者を見る様な目でこちらを睨んでくる…いや俺は犯罪者だ。
「プラズマ団、だっけ?あのカルト集団」
「そうそう。俺的に各地方の悪い人達の中で一番ヤバイ臭いがするんだよなぁ」
「ロケット団は一番統率とれてると思うよ」
「マジ?照れるなァ」
「お前の働きではないでしょう」
「外野は黙ってろー」
あちらの家から野次が飛んできたのをヘラヘラ笑いながらあしらうラムダ。アポロは地獄耳なんだと思った。
「ポケモンの言葉が分かる」
「ん?」
「プラズマ団のキョーソサマが言っていたんだと」
「ふーん…あぁ今の教祖の息子だっけか。リーグぶっ壊した後自分さがしの旅に行っちゃった奴ね」
「よーくそんなことしようと思ったよな」
「カントージョウトのリーグ怖えもんな。噂で聞いたけれどチャンピオンがはかいこうせん人に打つんだって?」
「曲解されてるぞその噂…」
カントーもジョウトも有名なトレーナーの出身地であるし、あの最強のトレーナーもカントー生まれと聞いている。それだけ凄い所でかなりの悪行をこなして来たロケット団は正直核が違うと思うのだ。え、アクア団?海を愛する馬鹿の集まりなんじゃないかな?
「とにかく。今のプラズマ団はかなり過激派になっているみたいだしな、お前も気を付けろよ」
「そうだな。特に上層部は胡散臭さが半端ないし」
「ゲーチス?だっけ?トップは」
「そうそう、あの人ちょっと目がイっててな………ありゃもうダメだ。その内盛大に崩れるぞ」
「………人を後ろから使うのには才があったのかもしれねぇけどな。壊れちゃあお終いだろうよ」
ふぅ、と紫煙を吐き携帯灰皿に吸殻を押し付けた。
煙突からシャワー
そうそう、と俺は部屋に帰る前にラムダの方を向いた。
「元プラズマ団…というか協力してた博士、ありゃ相当ネジ飛んでるぜ」
「アクロマだっけか。良い戦力になりそうだと思ってたんだが」
「なるだろうよ、ただあのタイプは目的の為なら手段を問わないぞ」
「マッドサイエンティストって奴ですかい。はーヘンなヤツばっかじゃねえか」
「人の事言えねえと思うけれどね」
「御尤もですなぁ」