「花火見ようぜ!」
そう言った時のセブルスの顔は何とも表現しがたい顔だった。
ホグワーツからは残念な事にビックベンは見えやしない。学生の時は見れると期待していたので残念だったが今は違う。マグル身紛れてビックベンの周辺に行き、ロンドンアイ背後のビルを見ながらカウントダウン。そして針がゼロを刺した瞬間にロンドンアイごぐるっと囲んだ花火が盛大に打ち上げられるのを見る…とはいかなかった。まず花火を見ようとするマグルが多いので無理です。なので大人げない魔法使いはどうするかって?こうするのさ!
「魔法をかけているから大丈夫なのであってだな…」
「でも花火は凄いんだぜ?俺達魔法使いにはない科学っつー物事の見方で発明した素晴らしい物じゃないか。綺麗なんだから見ようよ。ここまで来たんだし」
「フン」
俺達は絶賛ビックベン周辺のとあるビル屋上にて人避け呪文やら何やらを駆使し特等席でカウントダウンを見守っています。杖を一振りすれば寒さなんてへっちゃら、ビンに入れてきたミルクティを飲みながらサンドイッチ片手に2人仲良く座って居る。
「ブツクサ文句言いながらついて来てくれてるじゃん」
「また外をふらつかれている最中に発作でも起こされたら大変なのでね」
「わ、悪かったって本当に…でも最近はそんなに酷くないし許可も貰ってるし!」
「自己責任だからな」
「ハイハイ」
これだから心配性は、と苦笑すれば鋭い眼光が飛んで来た。ここまで心配性にさせてしまった原因は俺にあると自覚しているものの流石に怖い。セブルス、やっぱり教授っつか寮監に向いてるかも。苦笑いをしていると下の方が騒がしくなってきた。そろそろビックベンの針が一番上を指す頃なんだろう。
「セブルス」
「なんだ」
「来年も宜しく」
「宜しくしなければならないのか」
「そう思ってないくせに」
学生の頃からもう何年。毎年毎年言っていた言葉は年を取るにつれ少なくなっていく。段々と言わなくても伝わる言葉に慣れとは怖い物だと笑うしかない。それはセブルスも同じ様で、ハァと息を吐いていた。
「そろそろだ×××」
「あぁ」
来年も宜しく。今年と変わらぬ日々を過ごせればそれで良い。彼の想いも私の思いも伝わる事無く、交わる事も無く生き長らえた私達はまた1年を過ごさなければならない。待ち受ける物が茨の道だとしても、私は貴方の傍に居ると決めたのだから。だから私は、来年も変わらぬ日々を過ごせられればそれで良い。それで良い、のだ。
ハッピーニューイヤー。その言葉に何を乗せたのかなんて分からない方が幸せな時だってある。
世の果てに夜の果てが
(星々の煌きは彼等を見下ろす)
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