とりあえず、と前置きを置いてマティーさんが取り出したのはイッシュ地方の地図だった。この地方に住んでいる人は一回は見た事があるだろう。
「えっと、まずおかしいなって思ったのは地方の名前です」
「地方の名前ってイッシュじゃあないのですか?」
「俺のCギアにある地図を見て下さい」
腕から外されたCギアと地図を見比べてみる。所々読めない箇所があるが、大体の文字がイッシュで使われる言語を崩した様な形なので補完できた。ゆっくり読んでいってみると可笑しな所がまず1つ。
「ユノー…ヴァ?え、イッシュじゃない?」
「俺達が生まれたのはイッシュという名前ではなくユノーヴァ地方でした。基本的な街の位置はこのCギアと同じ筈です」
「ボクのCギアも一緒だネ」
「3人共ユノーヴァ、と記されてるので信憑性はまぁあるかと思われます」
ノボリさん達も色々とCギアと地図を見比べてみて唸っている。まさかさっき言っていた事は本当の事であったと…!?非現実な出来事に頭がやや混乱してきた所でクダリさんが小さな声でノッテ、と私の名前を呼んだ。
「なんですかクダリさん」
「あのさ、ノッテの生まれた場所って」
「あぁブラックシティ出身ですよ、それが何か」
「ブラックシティ…?」
不思議そうに呟くインゴさんエメットさんマティーさん。あ、コレはヤバい雰囲気だ。爾来踏んだ気がする。私にまもるもしくはみきりが出来ればなぁ。願い虚しく凝視されたので引き攣った笑みを浮かべながら説明をし始めた。だって目が訴えて来るから!知ってる事全て吐けよ!って目で言ってるんだもの!
「ブ、ブラックシティは私の生まれ故郷です。欲望と金が渦巻く街で、発展を続け常に近代的な街です。人やお金の出入りが物凄く最近ではビルやら闘技場…なんでしたっけ、黒の摩天楼?そんな物が出来たらしいですよ?あまりブラックシティに行く事はお勧めしませんが」
「ソレが全てデスか?」
「まぁ、はい。一応はこんなもんで」
「…どうしますエメット」
「どうしようカ、インゴ」
「困りましたねぇ…」
ぐぬぬ…とねんりき前のコダック宜しく青い顔で唸り始めた3人。私達も何かやらかしたのかと真っ青になっている。クダリさんなんか真っ青で小刻みに震えていますが大丈夫でしょうか。
「ごごごごめんね」
「イイエ良いのです、現実を見ろ。そういう事なのデス」
「夢なら覚めてくれないかなァ」
「めざましビンタでもしてみましょうか?」
「遠慮しておきます」
チラッチラッと私の顔を見ながら発言していく皆さんに対して溜め息。何だよ結局誰一人として現実見てねーじゃねーか!…ごほん取り乱しました失礼。眉間に皺寄せ仕方なしに私が言う。本当は言いたくないけれど誰一人言わないので代表して私が。
「………ブラックシティ、どこに消えました?」
もう一度イッシュ地方の地図とユノーヴァ地方(?)のマップを見比べていってみよう。まず右上に書かれている地方の名前が違う。そして町の名前も少しずつ違う、が昔に廃れていった文字の意味やらから取ればまぁ何となく分かるよ。でも、ブラックシティがある場所を見てみましょう。
ホワイトフォレストってなんですか。
「…ちなみにマティーさん、あなたの出身地は何処でしょう」
「…それはかなり重大な質問ですか?」
「はい」
重苦しい沈黙が部屋中を埋め尽くす。膝がそわそわしだし、そろそろこの空気に耐えられないクダリさんがもそもそ動き出した頃、ようやくマティーさんは小さな声で言いました。
「俺の生まれは、……ホワイトフォレストです」
おそろしの王
(あぁ、なんてこった!)