「本当に悪かったと思ってるよ〜!あの後空気が重くってさァ!リーダーめちゃくちゃ落ち込んでたし俺らはメタリカされるしで、マンマのありがたみを噛み締めた1日だったんだよォ!」
「だァれがマンマですって!?」
「そりゃあクレスタ」
「ベリィド」
「アー!悪かった!反省してる!ごめんね!!」
ジョースターと別れたあと、寿司を食べてホテルに帰れば、さも当然と言った顔で333号室に居座る男共を見て思わずクレスタは叫んだ。まさか自分の部屋に居るとは思っても居なかったのである。この時ばかりは、日本のゆるゆるした治安に毒づいた事は本人しか知らない。
特に問題を起こしていないソルベとジェラートは別行動をしており、杜王町ではない日本のどこかへ行ったらしい。確か北海道とか、その辺りに。クレスタとしてはいつもの仕返し、という事で突発的に日本まで来てしまったが、彼等からの謝罪を受けてまぁいいか、と気持ちは軽くなっていた。メローネのアツい抱擁を拒否し、プロシュートたちの方へ顔を向ける。
「という事で。ちょっとばかしマズいですわ」
「邪魔さえしなければいいんだが、本当に一般人なのかソイツ」
「ジョナ……彼等の祖先はアレより体格が良い考古学者だったみたい」
「マジかよ!?就職先ゼッテー違う」
「時を止めるってチート野郎じゃあねえか!理屈がワケ分かんねーぞッ!」
「とにかく、どうにかそいつらとは関わらずに仕事すりゃあいいんだよな?」
「あぁ。俺達も目立つだろうが相手も目立つ事には変わりないだろう」
「見付けたら殺すって事で」
「分かった。しっかし、相手は日本語分かるのかねぇ」
暗殺チームは1つ、新しい任務を請け負ていた。チーム名が指す通り、もちろん暗殺の。マッシモ・ヴォルペ―――今は取り壊された、パッショーネの負の遺産である麻薬チームの男である。彼は既に用無しだが、彼と接触があったとされるモルダーという男が包囲網を掻い潜り日本に逃亡した。なぜ東洋の島国へ、と疑問に思ったがどうやらマッシモ・ヴォルペには兄がいたらしい。ヤク中の思考を必死に理解する気はゼロだし、麻薬チームの情報が漏れだすのも面倒であるし、一般人である兄に危害が加わらないうちに殺せ―――というのが今回の概要である。
「あぁ、あと」
「なんだァ?」
「この町、やけにスタンド使い多くありません?」
「そう?あ、でも凄く怪しい奴ならいたよ。鉄塔に住んでる奴がいた」
「お前に言われちゃあオシマイだな」
「宇宙人だって主張してる奴なら見かけたぞ」
「えっ、この町もヤク回ってんのか?」
「さぁ……」
鉄塔に住む?宇き宙人と主張?イカレてるのか、この町は。と神妙な顔つきでメンバーを見渡していると、プロシュートのパシリで部屋に戻っていたペッシがリゾットに近付いた。
「リーダー、なんか強そうな奴等がこの部屋に向かってきてるますぜ」
「恰好は?」
「ヤケにガタイの良い野郎が3人、白いコートと老人とサザエみてえな頭の」
「ゲッ!避難しちゃあダメかしら」
「お前に用だな。さっき言ってた奴等だ」
「今更なにを話せばいいの?」
「ナニでも話してりゃあいいじゃん」
「アレとォ!?」
わいのわいの。年不相当に騒ぐ彼等を見て部屋を固めて予約しておいて良かったと思うリゾットであった。そうでもしなければ、他の宿泊客から苦情の嵐だっただろう。鏡の中に入らせろ、という言い争いをしている内に部屋のベルが鳴ってしまったため、仕方が無くクレスタはソファから立ち上がった。しっかりスタンドを出している所からして余程嫌なのだろう。
「………何」
「話をしに来た」
「帰って。埋め立てて」
扉越しに会話をし、即座にスタンドでドアを埋め立てる。あの夜、キレた時と同じ方法で。ピッチリ壁と一体化してしまったドアを開けようとドアノブを捻る音が数回するが、埋め立てられたものはスタンドを解除しない事には取り出す事ができない。これでよし、とクレスタが呟くと同時に―――すぐ目の前の壁に亀裂が走る。動いたのは一番近くにいたギアッチョであり、すぐさまクレスタに接近して彼女をドアから離れた位置へ引っ張る。各自が銃やらスタンドを取り出し、そこへ向ければドラァッという掛け声と共に『ヤケにガタイの良い野郎が3人』部屋へと侵入してきた。
「帰って。って言ったじゃあないの」
「これは、」
「我々は手荒な真似をしたくない。が、見逃すわけには行かない。ひとつ、余計な発言をしない。ふたつ、スタンドを出すな。みっつ、少しでも攻撃の意思が見られた場合はこちらも反撃させてもらおう」
踏み込まれたくなかったのだ。いくら平穏を壊した相手だとしても生かしてくれたことには変わりない一般人たちに来て欲しくなかったのだ。だが、自覚する事は無かった。老人がか細い声で名前を呟く。暗殺者に囲まれた、暗殺者である女はにこりともせずお決まりのセリフを言うのだ。『その名前を呼ばないで』、と。
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