クレスタの考えは至ってシンプルだ。邪魔者を抑え、ターゲットを殺す。
いつだってそうしてきたし、今回だってそう考えた。迷いのない行動はいかにも「当たり前」という雰囲気を出しており、結果反応したのは船から降りてきた男、たった1人だけであった。
「仗助ッ!その女から離れろ!」
「へっ!?エッ、な、な、な、なんだァこれは!?」
「あっ、足が埋まっている!元々そうであったかの様に!足が地面と一体化してるよ!」
「抜けねェ!こうなったら……!」
「待て、不用意にスタンドを出すんじゃあ無いッ!」
仗助がスタンドを出したのを、暗殺者であるクレスタが見逃す訳は無かった。ベリィド・アライヴは近接型でもパワー型でもない、本体が屈強な肉体を持つ訳では無い。それでもここまで生きていたのは、築いてきた経験と観察力、そしてスタンドの応用であった。
仗助自身、そして彼の体から飛び出してきたスタンドに対してクレスタは自身が出す事のできる、最大限の太さと強さをもつスタンドを這わせた。ギュルギュル、と殴られる前に全身を締め付け、危害を加えられる前に引っ込める。ベリィド・アライヴから開放された仗助は自身に起きた出来事にギョッとする。痛くも痒くもないのに、自身の腕が「くっ付いて」いる事に。服も腕も、最初から1本であったかのようにピッチリくっ付いている。手だけではない、足もだ。棒のように引っ付いてしまった手足は、満足に動かすことも叶わない。クレスタはカンで動いたが、実質埋められた状態から抜け出す事のできる仗助とそのスタンドを、一時的に抑える事に成功したのだった。
「なんでお前がここにいる」
「それは私のセリフですのよ!ジョースケの親戚、となると忌々しいジョースターの血……という事になりますわね。残念ですわ!」
「クレスタ!お前一体どこをほっつき歩いてたんじゃ!」
「おだまりジョセフ・ジョースター!耄碌してるのかしら、私の名前を呼ぶなと言っているでしょう?パーパが下さった名前を汚さないで下さいます?」
ギッ!と該当する人物を睨み付けるクレスタ。様子が一変したこと、ジョセフの名を知っていること、どうやらクレスタはジョースターを嫌っていること。様々な事実の大きさに仗助は頭の中がパンクしそうになっていた。
「オイオイ、さっきまでただの美人なねーちゃんだったクレスタがよォ、承太郎さん達を見た途端にキツめの美人になっちまったよ!」
「うん、なんて言えばいいんだろう……本職の目っていうか、やっぱり只者じゃあないというか、変な動きしたら殺されそうな気がする……!」
高校生達には目もくれず、クレスタは船へと近付く。ジョセフ・ジョースターももちろん憎たらしいが、それ以上に恨んでいる存在。忌々しい星のきらめき。あの日、あの部屋へ現れた時と同じように、表情の読めない男―――空条承太郎はクレスタの前にそびえ立っていた。
「変わらないですわね、その憎たらしい風貌!短命なんでしょう?さっさと死ねば宜しくてよ!」
「いい加減諦めろ、それにキッチリ、財団から抜け出した後の話は聞かせてもらう」
「諦めてないからこそ、あなたに平穏が訪れないんでは無くて?家族とか……絶好のエサですわね。徐倫ちゃん?さぞかしイイ声で泣くんでしょうねぇ、ダディ、ダディ!……ってね!」
「……スタープラチナ!」
「ベリィド・アライヴ!!」
話していても埒が明かないのは十数年前から分かりきっていた。お互いがスタンドを出し、スター・プラチナが腕を振り上げるのと、ベリィド・アライヴがクレスタの体からメスを取り出したのは同時であった。
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