「はぁ……それほどでも」
いやいきなり言われても。つかお前誰だよ。呆けた顔で話しかけて来た根暗そうな少年を見上げ、手元のベーコンを口に運ぶ。ツルの恩返しかな?でも梟しか飛んでないし。食卓の上を梟が飛ぶとか正直衛生的に勘弁して頂きたいものなんですが…。
「とりあえずそこ座って飯食えば?」
「失礼する。…僕はセブルス・スネイプ。クリスマス後のコンパートメントで匿ってもらった」
「………あーあの時のスリザリン生」
やっと思い出した、でもおぼろげにしか覚えてないって事はどうでもいい記憶だったんだろう。黒髪・鷲鼻が特徴と思われる少年はどうやらセブルスという名前らしい。どっかで聞いたような気もするが思い出せないから以下略。
「バレンタインの日にもポッター達から助けてもらった。彼女は僕の幼馴染だ」
「グリフィンドールの…無事で何よりだ」
「彼女が近付くと刺激を与えると思って伝えに来た」
「そりゃそうだね。こちらこそ愚兄が申し訳無い」
グリフィンドールの女性、ってだけでスリザリンから格好の的になるだろう。一応俺の出がブラックなんで。しかもマグルだった場合は恐ろしい。この少年の判断は正しいだろう。あとポッター達も刺激されるからな。危ない危ない。
「無事なら問題無い。適当に伝えておいてくれ」
「あ、あぁ…」
「じゃあ俺もう行くから」
食事を切り上げ、コーヒーを飲み干す。まだ食事の時間はあるが、1人で食べることにどうも慣れてしまって正直野郎の顔を見つめて食事をしたくない。というかこの寮ですら誰かと関わりたくないんだ俺は。じゃあな、と手を振って席を立つ。イギリスの味付けにも慣れてしまったな、と嫌気を感じながら1限目の予定を思い出し…あぁ嫌だ嫌だ。魔法薬学の授業だ、あのおっさんが今日も健気に構いに来る。
「流石ですアガスティア!スリザリンに1点!」
ほーら。苦々しい表情を浮かべる俺と対照的なスラグホーン。今日の授業は座学中心であり、教室の端っこでなるべく目立たない様にしても奴は目ざとく俺を見付け褒めちぎる。正直優秀な子を褒めることは良い事だとはおもうけれど、平均らへんや苦手な子について苦手意識を取っ払ってあげた方が良いと思うんだけどな…。料理と同じで慣れが必要だと思うんだ、センスが壊滅的に悪かったらご愁傷様だが。
「では効力を更に引き出す為に必要な手順は分かるかね?」
今説明されている薬はキノコ除去剤みたいなものらしい。なんでキノコ、とは思うけれど魔法界には絨毯状に蔓延る恐ろしいキノコまであるらしい。この除去剤はまた別の物に良く効くらしいが、家庭菜園なんかしててそんな外来種みたいな生命力のキノコが来たら怖いもんな。
「傘の部分を潰してから微塵切りにすることで成分を出やすくさせます」
「その通りだ、スリザリンに1点!」
スラグホーンはニコニコとしているが、場の空気はあまり良くない。贔屓する生徒ばかりに加点するため、その他の生徒の苛立ちが目に見えて分かるのだ。今当てられた……朝話しかけられた少年もそれを理解しているみたいで、居心地悪そうにしている。これは後でちょっかいをかけられるんだろうなぁ、と根暗っぽいオーラを醸し出す彼を見て思った。
出る杭は打たれる
大人がこんなんだからいけないんだよ!
prev / next