正直に言おう、ホストでもそんな煽り文句出さないぞ。伝説のメンズファッション誌がネタとして(編集者は本気なのかもしれないけれど)扱うレベルだと思う。そんな彼等は穢れた血――非魔法使いであるマグル――と、マグルと交わった魔法使いである混血を酷く忌み嫌い、『純血主義』を掲げてマグルと混血の撲滅を目論んでいる、らしい。
彼等は生物学を学ぶべきだ。その『純血』である魔法使いもマグルも、元は同じ進化論から生まれた存在なのに何が違うんだ。まぁそんな事言ったって非力な子供ではどうする事もできないし、きっとヴォルデモート卿はマグルとの思い出が良いモノでは無かったりするんだろう。その辺は下手に突っつかないぜ、優しさと無神経は違う。
さて、そんなヴォルデモート卿の思想はどうでもいいんだが、まぁ他の寮より貴族が多くいるスリザリンは、ヴォルデモート卿の思想に賛同するものが多い。お貴族様だしね、名門だとか血筋は大切だよね。名門貴族の中でもあまり有名じゃない家から結構有名な家までいる訳で、つまるところブラック家は地位が高いのだ。
「…別に話しかけなくていいから」
「ですが、」
「家督を継ぐのは兄だ。俺じゃあない」
先程から続く会話にウンザリする。スリザリン寮で同室に割り振られた奴は、残念な事にマグル出身では無かった。これが何故悲しいかというと、そこそこの地位を持つブラック家とお近づきになりたい親が子どもを使い、パイプラインの獲得に躍起になっているから。クソつまらない貴族様のパーティで嫌になる程身に染みている。唯一幸運なのは、我が母上は息子にそりゃあもう素晴らしい嫁をあてがおうと夢中になり、婚約者がいない事くらいか。
「俺には何も決定権が無い、だったらシリウスとでも話しててくれよ」
11歳でこの哀愁を背負うだなんて可哀想な俺。そして、親に良い様に使われる可哀想な子供達。会話を切り上げ、羽ペンを再び手にする。さて、本当にどうしようか。俺をウンザリさせる要因は何もこれだけじゃあない、組み分けの結果と、どうしようもない愚兄についての報告をどうオブラートに包んでご報告すべきかだ。結局、言い回しが思いつかなかったので自分の組み分けと同室者の名前を伝えるだけにしたが。
「吠えメール送らなかっただけマシだと思うべきなのか……」
遠い目をしながら、グリフィンドールの席を見る。大量のフクロウ便が届いているのはそう、我が兄上であるシリウス・ブラックの座る席だ。薄々思っているが、食事中にフクロウやら何やら鳥が出入りするのは不潔なのでは?
弟のレギュラスはどちらかと言わなくても、シリウスに懐いていたな。母上も、父上も、なんでかシリウスを気に入っていたな。俺は代用品扱いだったし。だからかな、あまり愛されてるとは言えない自分からすれば、フクロウ便が送られてくる時点で妬ましく鬱陶しい存在なのだ、シリウス・ブラックは。
「……ずるいなぁ」
か細い声で呟いて、届いたばかりの手紙をライターで燃やす。なんでライター持ってるかって?お前んち純血だろって?知ってるよ、煙草吸いたくて吸いたくてたまらないから、ライターだけ先に持ってるんだ。15になったら吸い始めようかな。
子の心親不知。
愛情が欲しいだけなんだけれど
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