風呂上がりだからか俺のお肌はスッベスベだ。雲雀が根城としている風紀財団は和、を基調にしているらしく風呂も温泉だった。体が温まったおかげで少し眠いがまぁ3日完徹…これで酒飲んだら幸せに眠れるわな。
「中々凄い風呂だったな、ありがとね」
「そう」
お、照れてる照れてるかーわいいー。ご丁寧に座布団が敷かれていたのでそこに座り、へらりとした笑い顔を消した。彼の言う馴れ合いはここまでにして、本題に入ろう。
「質問がある。…本当、なんだな?」
こちらの時代、いや世界に飛ばされる前に渡された謎の手紙。その内容は信じ難いものだった。『東吉城』のパソコンを使いこの3日間潜ってみた所、情報は十分過ぎるほどあって信じられなかった。だからこそ、信用出来そうな人間に言ってもらいたかった。
「…本当だよ。彼が何を書いていたかは僕も知っている」
「じゃあ―――」
「そう。"零崎逆識"なんて人間潜在しない。この世界に存在するのは"東吉城"だ」
「ッ!」
「呪い名、殺し名を筆頭に人類最高も人類最終までもが居ない。ここには裏世界――君の関係者は誰も居ないよ」
「………そんな」
予想していた答えの筈、なのに。頭が否定を始める。誰も死んでないし変わりもしない答え、それなのに大きな喪失感に襲われて目の奥が熱い。そんな様子の俺を見かねたのか雲雀が溜め息を吐いた。
「何か言いたいなら言いなよ、どうせ後で爆発するでしょ」
「なんで知ってんだよ」
「君が東ならばそうだから。大体僕か山本武が被害に遭う」
「…あー、そっか。…そうだよなぁ。じゃお言葉に甘えます」
こっち来い、とのジェスチャーがあったので隣に行くと無表情で頭を撫でられた。「子供扱いするな!」いつもは、誰に、言っていた。
あぁもう。そうだよ俺はまだガキだ。少しマセただけの子供だ。だから今日位は大人に泣きついたって良いじゃないか。
「いきなり人生リセットされて意味わかんねえよ、死んだ奴生き返ってるし家族ごっこ再開するしよォ。マフィアやってくるし漫画の世界とかマジ意味分からねえ、未来とか言われても知らないし!ポジティブにやってける訳ないだろ、誰も居ないとか戯言にも程があるだろひゃはははは。
……こんな世界やだ。俺、独りはいやだ。皆に会いたい、なんでっ、こんな」
ぼたり、涙が溢れ出してきた。
世の中甘くないどころか辛く悲しいことばかりだと分かっている、どうしても不幸だ。
(離さないで。たすけて。)
prev / next