「ックソ!」
キーボードを思わず感情に任せて叩き割る。舌打ちを一つして後ろに積んであった新しいキーボードを持ってきてまた打ち出す作業に戻る。どういう事だ、本当なのか、認めなければならないのか―――
零崎逆識、未来に飛ばされ早数日。飯は食ってない。寝てすらも居ない。希望も夢もへったくれもない現実を突きつけられて、
「何が、絶望するなだよ…!」
ぎりり、噛んだ唇から静かに血が滴り落ちた。
(side:tsunayoshi)
ランボの10年バズーカに当たって未来に来て。獄寺君や山本、そしてハルや京子ちゃんまでもがこんな恐ろしい事になっている未来にやってきてしまった。リボーン達はこの世界だと死んでいてオレも死んだなんて今でも信じられない。でもオレの超直感は現実だって言っている、こんな時まで働かなくていいよ!
オレ達を助けてくれたラル・ミルチに死ぬ気の炎の使い方を教えて貰った頃にはヘトヘトになっていた。炎を使いこなす事がこんなにも難しいなんて…この時代の戦い方はこうだ、なんて言われても困るよー!…それでも、やらなきゃいけないんだ。皆と元の世界に戻る為にも、未来の獄寺君が手紙に書いていたように写真の男――ミルフィオーレファミリーの入江正一って男の人を倒さなきゃ。
京子ちゃんやハルが作ってくれた夕飯を食べ終わり、お茶を飲んでいるとラルが話しかけてきた。
「沢田、東が持っていたリングは持ってきているか?」
東君。いきなりリング争奪戦の後引っ越してしまった彼の名前を出されてビックリする。東君は零崎一賊、という殺人鬼の一員だったらしい。これ以上裏世界が何とか…って難しい事を言っていたのは覚えている。ゆっくり話してみたかったんだけどリング戦が終わった次の日には引っ越してしまっていたから話す事は出来なかった、だけど東君からの手紙は受け取っていた。その中に東君のリング――天のリングが入っていたから、
「ランチアさんから貰ったリングと一緒に持ってるけど…」
「東がどうかしたのか?」
「お前達の時代の東吉城がこの時代に来ている。来たのはお前達が来る3日前だ」
「「「!?」」」
ラルの言葉にオレ達は驚いた。東君来てるの!?
「この時代の山本が保護して無事だ」
「よかった…」
「……しかし問題があってな」
「何かあったの?」
「着いて来い、見れば分かる」
そう言ってラルは立ち上がって部屋の外に出て行った。慌てて追いかけるオレ達。暫く歩いているとがちゃん、と何かが壊れる様な音がした気がした。
「東、入るぞ」
返事は帰って来なかったけどドアは開いて。その部屋は凄い事になっていた。
床一面にプリントが落ちていて所々に壊れたキーボードと何かの本が点々と落ちている。さっきの小さく聞こえた音はキーボードが壊れた音だったのかもしれない。東君はこっちに背中を向けていて途切れる事なくタイピングの音がする。テーブルの上にはパソコンが数台置かれていて全部が全部違う何かを映していた。
「な、なんなんだコレは…!」
「オイ、東返事しろって」
「…東、君?」
獄寺君、山本、京子ちゃんの言葉に返事をしない東君。というかもしかして聞こえてない…?
「内容は分からないがこの時代の山本と何か話をしてっきりずっとこんな状態だ」
「じゃあごはん食べてないんですか!?」
「寝てすらもいない。揺さ振っても反応しない所か声も聞こえていない様でな。何が原因なのかは山本は知っている様子だったんだが…」
「ヒデェな、このままじゃヤベーぞ」
何があの東君をここまでさせているのか。その後原因を知ったオレ達は黙る事しか出来なかった。
光は途絶えてしまった
(知りたくなかった。そんな事)
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