「っ、げほ、」
煙を吸い込んで喉痛い、涙目で咽ていると徐々に煙が晴れていった。よくも入江少年いたいけな顔で物騒なモンを打ちやがったな!許さん!…しかし可笑しい、零崎の俺がいくら追尾機能付いているからって弾丸に当たる?殺気が無かったせいかな?
漸く煙が晴れると、そこは夕方時の神社――ではなかった。
「な、んだここ」
白を基調とした壁、無造作に積まれている段ボールが数個あるだけの長い無機質な廊下。こんな風景、SF物の映画で見た事しかない。言い換えれば近未来的、どう考えてもさっきのバズーカが原因としか思えない。まさか嬢さんコレ知ってたから長丁場って言ってたのか?状況がイマイチ良く分からない。
「何処だよここ…」
「ボンゴレの並盛本部だ」
「誰だ!」
独り言、だった筈の台詞に返事が返ってきた。相手の姿は見えない、きっと声がした方向からしてこの廊下の奥が曲がり角か何かになっているのだろう。襲われても対処出来る様肩にかけていたケースから叛逆戦鬼を素早く取り出す。
「大丈夫だ東、危害を加える訳じゃない」
「なんで俺の名字知ってる、つか俺東じゃなくて零崎だから」
「…本物だな」
現れたのは刀を持った成人男性だった。爽やか目で、どこか見た事のある顔。思い当たるのは1人居るけれどこんな青年じゃなくてアイツはまだ少年だった筈。
「……山本、な訳無いよな」
「悪いが正真正銘俺は山本だ。ただし未来の、だけどな」
「は?未来とか何寝言言ってんの」
「ここは東の世界から約10年後の世界だ」
そう言って山本だと名乗る青年は携帯の画面を見せてきた。…確かに表記されている日付は俺が知っている年月日から9年と10ヶ月程経っている。もしやあのバズーカは未来に対象を飛ばすのか?そうなると厄介だ戻る手段が分からない!
「とりあえず茶でも飲もうぜ、歩きながら話す事は話すからさ」
「…分かった」
その言葉を信用して叛逆戦鬼はケースに仕舞う。大きくなった山本の後ろを着いて行く事にした。
「まずここは並盛の地下にあるボンゴレの基地なんだ」
「マジ?かっこいいな」
「だろ?で、ツナはボンゴレのボスになって俺達は守護者やってるのな」
「へー」
「東もな」
「ハァ!?え、俺何やっちゃってんの!?」
「それは後で説明する。…東は言ってた」
「?」
「"決して絶望するな"」
「それはどういう事だ」
そして俺は知る事になる。知らなかった方が良かったのかもしれない。でもそれは有り得ない事では無かった。早蕨が生きていたのと同じ位可能性としては考えられた事だけど俺はすっかり失念していたんだ。今の日常を当たり前と捉えていた平和惚けした考えの俺にはキツ過ぎるその現実。一番恐ろしいと思っていた事。それは―――
「この世界に裏世界は存在しない」
モンスターワールド
(零崎なんて集団も、存在しない)
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