零崎逆識の人間三昧 | ナノ




▼ 受け継がれる欲望

「…ありゃー沢田か?」
「んな事聞かれてもその沢田って奴知ってんのお前だけだろ」
「うわ、あの人頭から炎出てますよ」
「んー、命の残量に10円」
「ちょ、さり気なく怖い事言うなよ!」
「かはは」

剣道場に行くと沢田(仮定)がパンツのみで額から炎を生やしていた。そして、泣く子も黙っちゃうほど、恐ろしい顔付きで持田?だっけ。いかにも雑魚設定な奴に馬乗りになっている。タミフル飲んだのか?そして手刀を相手の額に―――なんて格好いい事はせず、聞こえたのはごつ、とかばき、じゃなく、ぶちっ。……ぶちっ?

「100本とったー!!!」
「はぁ!?」

沢田(仮)の手にあったのはごっそりと抜けた…じゃなくて抜かれた髪の毛推定100本。
あー痛そうに。髪の毛って1本でも引きちぎられると、皮膚にダメージ来るよね。そんな視線を可愛い妹と弟に向けると、ガタガタブルブルと頭を抑えて震えていた。2人共髪についてなんかトラウマあったっけ。
沢田(仮)は子供に嫌われそうな位、鬼気迫った表情で髪の毛をぶっちぶっち雑草を引っこ抜く感覚で抜いていく。というか引きちぎってるよなアレ?持田は持田で、痛みに耐えられず意識はさようならだし。あーめでたくハゲの道に行ったな。

「全部本」
「赤!」

ひいい、と軽く叫びながら旗を上げる審判役。そりゃ叫んじゃうよなしゃーないしゃーない。
見計らったようにしゅうううう…と額から消える炎。一体どんな手を使ったんだ沢田。

「すげーな沢田!」
「見直したぜ!」
「スカッとしちゃった!」

わっと周囲から湧き上がる歓声を後に俺達は外へ出る。どうせこの後騒がしい、なんて理由で風紀委員が来そうだし。途中で2人と別れ、煙草を吸いに行くために裏庭へ向かう。

「面白くなってきた」
「面白ぇ奴だな」

俺の台詞とどこぞの赤ん坊の呟きが被った事も気にしねぇ事にして。

受け継がれる欲望
(表世界を楽しもうじゃあないか)



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