「舞織ちゃん!」
「スパッツは穿いてませんよぅ」
「人識君!」
「カレーは食わねぇ!」
「ノイ!」
「たかが煙草1本だけだろ!?」
「ノイ、あれほど健康には気をつけろって言ってるじゃないか!人識君も食べ盛りなんだからちゃんと食べる!舞織ちゃんはスカート丈!ほらお兄ちゃんが直してあげぶほっ」
「…朝っぱらから何してるっちゃ、レン」
「あーアスありがと。またレンが暴走すると学校に押しかけそうだから、縛っといてくんね?」
「把握したっちゃ」
「じゃ」
無桐伊織。汀目俊希。東吉城。
何処にも接点がなさそうな3人だけれども、実はしっかりくっきりはっきりさっぱり、縁は繋がっている。
「あーったく、ただでさえ禁煙禁煙やかましいのが更に煩くなったしよ、もういっそのこと風紀委員共解体して良いかな?逆識君はもう駄目だ。紫煙が恋しい!だあああああああ」
「そんな事…と言いたい所だがそれは同感するぜ?俺さぁ、授業サボって屋上でナイフ磨いてたら銃等違反だってトンファー向けられたからな」
「ひゃはは、アレはルールに厳しそうだしな。俺は屋上で煙草吸ってたら、煙草と髪染めてるなんて理由で鬼ごっこだっつーの。面倒だぜアレ。目と髪は元からなんだし」
「まだ良いじゃないですかぁ。人識君も逆識兄さんも分かりやすい理由で。私なんかニット帽を脱がないだけで、反省文!嫌で仕方なく今日の今日まで、兄さん宜しく恐怖の鬼ごっこですよ!?」
血の繋がりは無い。流血の繋がりはある。未成年である俺達は、零崎双識達に保護され、現在同じ屋根の下で生活を共にしている。つまるところ、楽しい『家族ごっこ中』って訳だ。
「んで、舞織ちゃんが俺を兄さんって呼んで、俺が人識って呼んじまって、外に出たら人識がレンに会っちまってめでたくバレたと」
「かはは、本当に傑作だな」
「それで済むのかよ」
「学校ですよー」
「うーわ、めんどくせー」
俺の持ち物は財布・携帯・煙草とライターに、黒く鞄にしては細長い肩掛けの黒い筒。どうやらバットを収納するらしいが、俺は全く違うモノを入れている。変な物を持っているのは俺だけではなく、他の2人もなんだが今は割愛しよう。靴箱でローファーから上履きに履き替えて、教室に向かうと―――
「早く行くぞ!」
「待てよ!」
「剣道場に急げー!」
「…朝会?」
一年の教室全てが閑散とし、何人かがちらほらと居るだけ。ちょ、今日朝会だったっけ?
「今日は朝会無いですよ?」
「流石この中で唯一まともな伊織ちゃん、かはは」
「え、まともじゃねぇだろ。で、おい。そこのヤツ」
「んだよ、今急いでる…ってあ、東吉城ぃ!?」
「おーおー逆識随分と怖がられてるじゃねーか」
「え、もしかして…B組の汀目俊希と無桐伊織!?お、俺死んだかも…」
「…お前等も怖がられてんじゃねーかよ。あー、落ち着け。聞きだい事があるんだけどよ、剣道場でなんかあんのか?朝会?」
「あ、いや…朝会ではなくてダメツナと持田先輩が一騎打ちするらしくて…」
「沢田?またなんで」
「実は昨日笹川京子にパンツ一丁で告白したらしくて、持田先輩が『京子を泣かせたヤツはオレが許さん!』と…」
「ふーん…もういいや。行っていいよ」
掴んでいた手を離すと物凄いスピードで走り去って行った生徒A。
「沢田が…ねぇ、」
「知り合いか?」
「友達兼壊す対象候補」
「うっわーそいつ運ねーな」
「いや寧ろ運ついてんだろ。んな訳で見てくるわ」
「じゃあ俺も」
「私も」
興味本位。俺達はそうして剣道場に向かった。
ただの娯楽さ
(別に暇を潰そうとしただけであって)
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