「…なぁ潤ちゃん、俺後悔してる。でもやっぱり後悔してないのさ」
「あぁ」
「…でさ、俺思うのよ」
「奇遇だな、あたしもだ」
「やっぱり物語ってのは――」
哀川…潤さんから受け取ったのは1通の手紙。開けてみろ、と言われ恐る恐る開けてみる。出て来たのは紙が1枚、そして天のリング。
「…逆識の行動は正しいと思うよ、ちょっとだけ不器用なだけで。逆識はお前等と居たい為に"逃げる"事を選んだ」
「逃げる…」
「確かにあたし達は逆識の事が大好きだ。渡したくない気持ちも分かる、でもそれじゃあダメなんだ、あいつの為に何もならない」
「東は何をしたんだ?」
「『裏世界に戻るか、お前等を消すか』」
「!」
「逆識は相当悩んだと思うぜ。責めないでやって欲しい、あいつは殺して欲しくなかったんだろうから"そう"したんだ。…指輪は見付かったら危ないからって言ってた。代わりに持ってやっていてくれ」
今なら分かる。指輪に触れた時に、オレの超直感が見せてくれたんだ。
「頼んだよ潤ちゃん」
「確かに請け負ったよ。…沢田綱吉は友達なんだろう?」
「多分な。俺は少なからず友達だと思ってる」
「丸くなったなお前。あたし的には今の方が好きかも、人間らしくてさ」
「そう?…最初はさ、どうでもいいなんて思ってたんだ。でも今じゃあこんなだ、笑っちまうよ。殺人鬼が殺したくないって思ってるんだぜ、初めて家賊に嘘付いたしよー」
「良いんじゃね?遅めの反抗期ってやつだよ」
「そうか?」
「逆識も自由になっていいんだよ、いい加減。友達は幾ら居たっていいもんだぜ」
「…そういう、もんか」
「…あの!東君に伝えておいてくれませんか!?」
「あー、それは自分で言ってくれ。悪いけどあたし暫く逆識に会えないと思う、それに多分本人から言われた方が喜ぶだろうから」
それじゃ、と言って哀川さんは道の脇に停めてあった真っ赤な車で去っていってしまった。残されたオレ達。
「…東って」
獄寺君がぽつりと呟いた。
「女々しい奴っすね!」
「えっ」
「確かにな!」
「本当だよね」
「全くそうだな!こんな事ならば次会った時は思いっ切り笑ってやろう!」
「…そうだね、うん!お帰りって言ってパーティーしようか!」
「歓迎会開かなくちゃな!」
「僕は行かないから」
「へーへー。十代目に心配かけるなんてどうしてやろうか!」
皆と顔を見合わせて笑う。
…言いたい事は沢山あるけれど、最初に言う言葉はもう決めてある。オレは待つよ、また東君と笑えるその日を。手紙をそっとポケットに入れて、リングはチェーンに繋いだ。これで、なくさない。
「ツナー?」
「十代目ー!」
「今いく!」
"絶対に会いに行く"、約束だからね。
零崎逆識という少年は確かに此処にいた。忘れない。その約束を、俺は絶対に忘れない。
「「ハッピーエンドじゃあなきゃな」」
The end…?
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