零崎逆識の人間三昧 | ナノ




▼ 叫ぶ姿はもう怪物と同じだった



(side:tsunayoshi)

離れたここまで漂ってくる鉄の臭い。オレや山本、獄寺君とお兄さんはともかくあの雲雀さんやリボーンが顔を青くさせていた、今日ランボが居なかった事が唯一の救いだと思う。

「うっ…」
「十代目大丈夫ですか!?」
「気持ち悪いけれど大丈夫…なぁリボーン、本当にあれは東なの?」
「…あぁそうだ。まさかこんな近くに裏世界の奴が居るとは」

いつもより深く帽子を被ったリボーンは、苦々しげに呟いた。

「裏世界って何だよ」
「決して、決して手を出してはならねぇ世界だ。あっちを裏世界と呼ぶなら、オレ達は表世界の人間なんだ」
「それってボンゴレとかのマフィアも表世界?に入るのかな」
「そうだぜ、コラ!いくらボンゴレを筆頭にしたマフィアが"裏社会"と呼ばれていても、アイツ等から見れば裏世界も所詮は表世界なんだぜ、コラ!」
「オレ達も詳しくは知らねぇ。深追いした奴等はいつの間にか消される位だ、分かるのは大雑把な情報くれぇしか無い」
「確か4つに区分されているんでしたよね」
「獄寺君知ってるの!?」
「はい、下手に手を出さない様強く念押しされているんです」
「どんな感じなのだ?裏世界、とは」

リボーンとコロネロ以外(雲雀さんは良く分からない)が獄寺君に説明を求めている。そんなに裏世界ってヤバいのかなぁ…

「この世界は4つに分けられてるって話だ。1つはボンゴレやオレ達の住んでいる表世界だ。後の3つがヤバい奴で財力、政治力、そして暴力の3つ。この3つは裏世界そのものだと思う」
「一番ヤバいのは暴力の世界だ。手を出したら一溜まりもねぇ」

マフィアがそんなちっぽけな世界だったなんて……そこでふと思った。東君が本当に裏世界の人だとしたら、兄弟だとか言っていた汀目君や無桐さん、ご飯を食べさせてくれたり京都で会ったり授業参観に来ていたお兄さん達は。仲のいい春日井先生、正月や修学旅行で会った東君の知り合いは、まさか。
頭の奥がざわりと鳴る。ダメだ、これ以上考えちゃあいけない、危険信号がちかちか光っているのに分かってしまう。考えてしまう。オレは、オレはダメツナなんだ、いつもテストで勘なんて外してばかりじゃないか!だから今回も、外してくれ!

「それなら赤ん坊、東吉城…零崎って呼ばれてたけれど彼はどの世界に属するんだい?」

雲雀さんの質問に被さってぐじゃり、と耳にこびり付く様な、嫌な音が聞こえた。顔を上げると東君はあの大きなハリセンを振り上げていた。

「…何か、言いたい事は?」
「…………さ、い悪だ」
「そうかなら死ね」

バァン!と凄い音と地響きがしてオレは目を瞑って顔を背けた。あんなもの、見れる筈がない。耳を塞いでも音がする、ぐぢゃ、めき、ばきん。聞きたくない!

「これで揃いだな」

くつくつと、だんだん大きく、笑い声は止まらない。気持ち悪さと恐怖でぼやける視界の中、東君は1人立っていた。周りに落ちているのはさっきまで――だった、ぴくりとも動かない。血塗れの服で空を見上げて、何処を見ているのか分からないけれど東君は笑ってた。笑って、いる。

「…零崎、一賊。暴力の世界にて最も嫌われているとされる、《殺人鬼》の集団だ」

リボーンの言葉にしっくりきた自分が居る。爛々と光るあの赤い目、血で赤黒くなった格好、周りの肉片。
―――まるで物語に出て来る人喰い鬼、そのものじゃないか!

「ひひっ、あっははははっひひひひ、っひゃぁっはひゃははははは!あゃはははは、はははひゃーっはははははは!!!」

怖い。オレは初めてその笑い声に、恐怖を覚えたんだ。

叫ぶ姿はもう怪物と同じだった
(鬼が居る。人間ではない)




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