「お願い東君!」
「はぁ」
「はぁ、じゃねー!十代目がわざわざテメェみたいな奴に頭下げてんだから反応しろよ!」
「じゃー俺帰るからバイバイ」
「ちょ、待ってー!獄寺君は黙ってて!」
「そ、そんなぁ………」
「今のは流石にフォロー出来ねーのな」
「………」
冷ややかな目で項垂れる獄寺を見ながら、俺は沢田の話を聞いてやることにした。今日は家に極力帰りたくないんでまぁ聞くだけならタダだし?
「で、なんだっけ。お菓子が作りたい?」
「そうなんだ…」
沢田と時々補足してくれる山本(獄寺は凹んでいる)の話はこういう事だった。
今月は2月、俺的には節分と閏年位にしか行事は無くても良いと思っている2月だが世間のお年頃な男児には欠かせない行事らしい…悪魔のXデー、バレンタインが。いや俺甘いの苦手だからどうでも良いし…
日本のバレンタインは
「ビアンキが『男ばかりプレゼントを貰うのはズルいわ』って…」
獄寺の腹違いの姉ちゃんであるビアンキが異議を唱えたらしい。それに赤ん坊が乗ったそうだ。山本と獄寺を巻き込んで。確かにあのガキならば「お前もイタリア人の血を引く男なんだ、ちったあ感謝の気持ちを込めてママンにでもプレゼントしやがれ」とか「ボンゴレのボスになる男は女性に優しくねぇとな、ツナ」やら「外国のバレンタインは日本と逆なんだ。つー訳でボンゴレ式バレンタインをやるぞ」なんてサラッと言いそうだよね。
「お菓子作らないとリボーンに殺されるんだよー!」
「んな事言われてもよー…俺甘いモノ苦手だし臭いでも駄目だし…つか獄寺が居るじゃん」
「それがオレ達料理がてんで駄目なのな」
「何でも良いんだ、簡単に作れるお菓子教えてほしいんだよ…」
「でもなぁ…」
パウンドケーキやクッキーなんかだと手作り感が出そうな気もしないでもないが、てんで駄目のレベルが真っ黒焦げ、とかだともうダメだろ?俺が付いてあげるのも甘いと臭いで俺がダウンしそうだしこの様子じゃあ市販のクッキーとかだとガキが煩いのか…仕方ない。
「オイ沢田、あのガキお菓子なら何でもいいっつったんだよな?」
「え、うん。手作りのお菓子じゃなきゃダメとは言ってたけれど…」
「分かった。教えてやる」
「本当!?」
「あぁ、ただし俺の家はムリだ伊織ちゃんと兄貴が台所占領してる」
「オレん家ビアンキと母さんが居るし…」
「親父仕事してるしよー」
「十代目!オレの家はどうでしょうか?オレ独り暮らししてるんで」
「じゃあお邪魔しても良いかな」
「ハイ!」
おぉ復活したらしい獄寺に耳と尻尾が見える様な気もしないでもない。流石忠犬。
「じゃー獄寺の家行くか」
「テメェも来るのかよ」
「お前等3人で作れんのか?」
「うっ…」
「そうカリカリするなよ、時間遅くなるんだったら夕飯作ってやるから」
「ちなみに東、本音は?」
「今日の料理当番が長男だから家帰りたくない」
しばしの沈黙、そして俺達は顔を見合わせて笑い出した。
不安と期待の準備期間
(男の友情でしょう)
prev / next