赤神イリアとの出逢いは、非常に不愉快だった。
「貴方が"あの"人類最好、さん?」
「その呼び名止めてくんねーかな」
「あら失礼しました…では東、いえ零崎さん。―――哀川さんは渡さなくてよ」
「…おー。オイオイオイ何言ってんの。渡さない?潤ちゃんを?何寝言抜かしてんだテメェは、俺が無理なのにお前みたいなバリバリのインドア派が潤ちゃん独り占め出来る訳無いだろうが。それに彼女を名字で呼んでる時点でアウトだっての。世迷い事にも程があるぜ、全く笑えないジョークかます位なら最初っから言うなよこの世間知らずのお嬢さんや」
「世間知らず、とは自分の事でしょうか?生憎わたくし、貴方よりは様々な事を経験してきた自信はありますわ」
「温室育ちよりは挫折を味わってる気もしますけどねぇ」
「「………」」
にぃっこり笑ってお互い譲らず無言の戦いを約10分。重たい空気に堪えられなくなった三つ子のメイドさん達に諫められ、その後紆余曲折あって今では盟友の様な関係に落ち着いている。少年マンガの河原で喧嘩した後の夕日をバックにして
「お前、なかなかやるな…」
「お前こそ…」
みたいな関係だ。
《2周目》に入ってもその関係は崩れる事はなく、繋がりは続いている。そんな訳で今回の修学旅行もバックには赤神財閥が一枚噛んでいる。
「ねぇ、修学旅行ってこんな豪華なモノだったっけ…?」
「気にすんな、気にしたら負けだぞ食え食え」
「やべー、親父に自慢できるなこりゃ」
「実家と同じ…いやそれ以上にうまい」
「実家ってお前ボンボン?」
「ガキの頃は城に住んでた」
「マジで?隠れんぼし放題じゃん羨ましいわー」
天井を見ればほらシャンデリア。汚れ1つ無い純白のテーブルクロス。大皿に盛られた料理は素人目にも「うまそう、そして値段ヤバそう」と分かる様な見た目。えぇそりゃあ財閥の世界を担う四神の1つですからそうでしょうねえ。教職員も春日井以外は戸惑ってるみたいだし。春日井?アイツ確か鴉の濡れ羽島からイカダで脱出した猛者だし。舞織ちゃんは固まってるみたいだけれど、我らが代表胃袋キャラの人識君はちゃんとキャラっぷりを発揮しているようです。
「沢田肉食えよ、うまいぞ」
「テメェ何勝手によそってやがる!」
「成長期に沢山食べねーと強くなれねぇぞ」
「十代目どうぞこのチキンもお食べ下さい!」
「あ、ありがと!でも山盛りにされても食べられないって!」
「野菜もしっかり食わなきゃダメだぞ?」
「水取ってー」
だから態度変わりすぎだってば獄寺、沢田が肉山盛りにされて困ってるぞ。さり気なく半分くらい盛られた肉を自分の皿に移している山本は周りに気配り出来る紳士だと思う。水取ってくれたし。コップに水を注いで、飲む。あーうまい。
「そういや東、さっきのお姉さんってどんな関係?」
「赤いお姉さん?」
「親戚?それとも彼女かなんか」
「ブッフォ!?」
「あ、東君!?」
訂正。やっぱ紳士なんかじゃないわ。
だまってろ
(気管に、入ったおえぇ…)
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