十分清水の舞台からの景色を堪能したので、そろそろ戻るかという流れになった。いや戻るのは良いんだけど今本堂から出たら人識と出夢と鉢合わせしそうなんだよなぁー…売ったと知れたら後面倒だしちょっとヤダかも。
「東君?」
「んー…」
だから俺は気付かなかった。後ろから、誰が近付いて来ているかだなんて。
「悪り、なんか呼んだ?」
「いやボーっとしてたから、」
「考え事しててさぁ。今本堂から出たら俊希と出夢に鉢合わせたらヤバいかなって」
「汀目とさっきの奴も仲良いのか?」
「俺はアイツから出夢紹介されてっうわ!?」
いきなり視界が真っ暗になり驚いて固まる俺。眼鏡の下から多分手で目隠しされているみたいで、頭の上からくつくつと笑い声が聞こえてくる。
「だーれだ」
「ちょ、その声…!」
「会いたかったぜー逆識」
「潤ちゃ―――ッ!?」
ばっ、と音が付く勢いで振り返ると満面の笑みを浮かべた潤ちゃんが見えたのも束の間。利き手でない右手をぐいっと引っ張られ体がよろける。そしてそのまま何かを顔に押し付けられた。それはとてもやわらかく、そして2つあり俺の顔はその間に押し付けられている…何に?
その瞬間ずれた眼鏡の金具が眉間に当たって痛いとか公衆の前で恥ずかしいとかいう考えはすっ飛んだ。いやいやいやちょっと待って待って下さい俺と潤ちゃんには身長差というモノがありましてねつまりそのアレだ、今俺は抱きしめられている訳で、顔に当たっているのは潤ちゃんのおっp
「※◎▲*#※!?」
「な、なんでココに請負人が!」
「何処に居ようがあたしの勝手だろ忠犬くんよ、それにしてもまさか匂宮に先越されるとか失敗したわーアイツなんでぜろりんの方行かなかったんだか」
「お姉さん正月に会った様な…」
「そうそう、コイツ回収に向かったわなそういえば。今回の旅行あの赤ん坊着いてこないんだって?イタリアに出張中だから思う存分ちょっかい出せるって知り合いの情報通が言ってたけど」
「マジで!?やったー!」
「あのー、東凄くもがいてますけど大丈夫ッスか?」
「あ。悪い悪い」
「っぶは!…あんのなぁ潤!その、えぇとだな!」
山本のお蔭でなんとか昇天する事は免れたがパニックになって言いたい事が思い付かん。顔を真っ赤にして叫ぶ俺は随分滑稽に見えると思うがそんなの知らない!
「顔真っ赤だけどもしや照れて」
「当たり前だ!」
「減るもんじゃないし」
「いいや減る!今の絶対他人にやるなよ!?あと屋外もダメ!」
「えー、いーたんには?」
「ダメったらダメ!絶対ダメ!アイツ嬢さん居るだろうが!ぜぇぇぇぇったい駄目!そんな事されたら俺ここから身投げしたくなる!」
「分かった絶対しない。でも意外だな、お前そんなにウブだったっけ」
「それと、これとは、話が違うの!あーもう、とにかくだなぁ…」
予想外のラッキースケベにテンパる俺はトマトも裸足で逃げる位真っ赤だっただろう。
「あそこに居るのって東、だよなぁ…?」
「うん…東君があんなに照れてるの初めて見たよね」
「あの女の人知り合い?」
「まさか東君、あの人が好きなの!?」
「えーっ!?そんなぁ!」
「ちょっと来いよ、あの東が…」
好奇の視線に晒されている事なんて、全く考えてなかった。
100℃
(あっつい!湯気出るわ!)
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