病院に運ばれて最初にした事は園樹ちゃんが居ないかどうかかの確認。幸いにも彼女は昨日から医師同士の集い…勉強会みたいなものに出席する為今箱根に居るらしい。検査をして薬を貰い頑張って飲んで個室に押し込まれた訳だけど。
「…眠れん」
目がバッチシ冴えていて、全く眠れる気がしない。抱き枕が無いからなのか、それともベットのスプリングが固いからなのか?それとも昔の事ちっと思い出したからなのか?うぅん、原因があり過ぎて何が原因なのかが分からない。携帯見ようにも起きるのは億劫だし暗闇の中見ると目が痛くなる。しかも代えの眼鏡は家なのでおちおちエロ画像見る事も叶いやしねえ、下手したらスプラッタな画像になっちまう。何が楽しくてエロからグロに錬金術しなきゃならんだか。こういう時はやっぱり話し相手が欲しいもので。
「…中に入ってこいよ、らぶみちゃん」
「ありゃ、ばれちゃった?」
「バレてるよ、ねぇらぶみちゃん――じゃなくて潤ちゃん」
「いーたんにはバレなかったのに」
「アレはまぁ…仕方ないよ鈍臭いし。こっち来てちょうだいよ」
部屋の外に立つ人物に声を掛ける。月明かりしか光は無いけれど、顔を見るには丁度良い光加減だろう。何処からかトレードマークの稲妻模様をべちんと頭に付けていた。…そんな雑に扱っていいモンなんですかね?
「おうおうどうしたんだよそんなシケた面してさ」
「俺そんな顔してたー?つか潤ちゃん何処からそのナース服拝借してきちゃったの俺襲っちゃうよ?男の子って皆狼だから」
「鷹を食える位度胸のある狼だったら幾らでも相手になってやるよ。で、どうした?」
「あ、スルーするのね…いやぁ、ちょっとね」
優しく撫でられる感触が少しこそばゆい。何時もなら子供扱いするな、とその手をはね飛ばすのに大人しくしている俺を見て潤ちゃんはさらに優しく、頭を撫でていた。
「…なぁ、潤ちゃん。潤ちゃんはさ、何があっても居てくれるよな。ひとりに、しないよな」
「あぁしないさ」
「俺がただの東吉城であっても、か?」
「また前みたいに腐るつもりなのかお前は」
「いや違うよ。…ちょっと昔の俺みたいな奴がいっぱい居るなって思っただけ」
「それなら許す。大丈夫だって、アタシが今まで逆識の事を見放した事なんて無いだろ」
「……あぁそうだな」
安心したのか急に睡魔がやってきた、クソ、折角潤ちゃんと2人きりだってのに!そんな俺の気持ちが分かっていたのか潤ちゃんはくつくつと笑い『とりあえず今日は寝とけ、巻き込まれて疲れてるだろうから』と言ってきたのでその通りにしておこう。じゃなきゃ後が怖い。
「おやすみ」
今だけ時間を気にしないで
(ずっとこうなら良いのにね)
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