零崎逆識の人間三昧 | ナノ




▼ 六道銭を払います。



「俺が何だか知ってるよな」
「人類、最好の零崎…ですよね」
「そうそれ…それなんだよ」

肋骨の辺りを圧迫されているからかちょっと息が吸い辛い。ふぅ、…よし話すか。

「ただでさえ零崎なんだ、そこに最好だなんて嫌な肩書き上乗せされて、どうなると思う?…数の暴力さ。俺個人に売られた喧嘩でも奴等皆首を突っ込んで来やがる、鬱陶しい事この上ない。橙が来ないかもしれないだけマシかも知れないが裏世界で名を馳せる奴等は大体来るぞ」
「だから貴方は零崎ではなく、今の通名個人として、此処に来た…と?」
「あぁ。最初は裏世界の奴…匂宮の分家の分家辺りかと思ってお礼参りしに来たんだ、でもお前は裏世界ではなく裏社会だと言った」
「嘘だとは思わなかったんですか」
「んな嘘すぐバレんだろうが。まぁ裏社会は俺も巻き込まれない様に必死だしな、だったら零崎としてじゃなくて、東吉城として個人的に喧嘩しに来たって方便の方が都合が良いだろ?お互いに」

アイツ等、過保護過ぎるんだ。
そう締めくくれば成る程…との返事。そう、確かに皆良い奴だよ。『普通にしていれば』な。忌み嫌われる筈の零崎が好かれている時点で可笑しいんだ、今の俺が置かれている状況がどれほど奇天烈な事か分かるだろう?下手すりゃ地雷原。俺も俺で大変なんですよ本当に。それに、と俺は続ける。

「お前の目的は俺じゃなくてボンゴレの首だろ」
「!、そこまで」
「チンピラみたいでアレだが俺のバックに何居るか忘れてねーだろうなぁ?」
「玖渚までも掌握済みって事ですか…末恐ろしい人だ」
「自分でもビックリだよ。ま、ともかく!そこまで大事にする気は無いってこった。…お前が俺に手を出さなきゃな」

どうせイレギュラーなんだしこれ以上の介入を許しちゃうとちょっと大人の事情でアレがこうなるよね?そろそろ俺も撤退したい所、だって沢田達と鉢合わせしちゃ不味いじゃない色々と。暗に俺に手を出したら世界が壊れるぞ、と仄暗くかつ厭らしく脅しておくと物分かりの良い六道は三叉槍を消し去った。

「物分かりの良い坊ちゃんは好きだぜ俺」
「生憎その様な趣向は僕は持ち合わせていません」
「ありゃバレてたの?最近大人しいのに」
「勘ですよ。…さて。貴方の言う通りそろそろ沢田綱吉達が来る頃でしょう」
「じゃ俺もお暇しよっかな―――ッ!?」

ぐにゃり。視界が揺れる。ふらついた体をハリセンで支えるものの浮遊間と気持ち悪さが拭えない。

「ちょ、おま何」
「すみませんね、まさか貴方が来るとは予想外でしたので。前々から飼い慣らしておいて良かったと思います。すぐに解毒しますが副作用で暫く寝て貰う事にしましょう、申し訳無いのですが餌となって下さい」
「っは、マジかよ…」

もぞり、俺の首元から出て来た1匹の蛇。いつ仕掛けた?…あぁ、多分眼鏡すっ飛ばされた時だな。それか最初の幻術を仕掛けた時か。どうでもいい、まんまとやられたのには変わりないんだから。しっかし、何ちゅう事だ、沢田を釣る為の餌とはとんだお笑い草だわな。体の力が抜けて床に倒れ込む。すみません、と呟いた奴の顔は悪人には見えなくて。

『お前思いっ切り出血してんぞ、フラッフラで顔青いけれど大丈夫か?そんなんで沢田に勝てるのか?』

そう言いたかったけれどその前に俺が限界だった。

「…Arrivederci.」

そう、呟いたのは、だ、れ。

六道銭を払います。
(あたたかい闇が俺を)




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