溶岩が噴き出す床や凍り出す壁を総無視して奴目掛けて走り出す。勢い良く腕をしならせ大きく振りかぶりいつもの様にそれを下へと、叩き付ける!
「っせい!」
ドゴン!、と凄まじい音がして床が抜けた。ありゃやりすぎた?いくらハリセンだからと言っても金属で出来てるから馬鹿に出来ないんだよねこれが。
「なんて力…!?」
「まだまだピーク時にゃ届かねえ、けどな!」
すんでの所で避けた六道を凪払うかの如く叛逆戦鬼を振るえば、何処かしらが引っかかってくれたらしく血を蒔きながら壁に叩き付けられた。ふっと幻術が消える。頭強く打ったのかな?血がダラダラ垂れていて、でも意識を飛ばしていない所は普通に凄いと思う。
「まだやれるか?」
「、えぇ勿論!」
今度はこちらの番だと言わんばかりに飛びかかってくる攻撃。年の割には重たい攻撃だなと素手で三叉槍の柄を防いだ時に感じた。場慣れした攻撃、久し振りに一方的な殺しじゃない戦いをしている気がする。
「っぐ!?」
三叉槍の刃が眼鏡を掠り、落ちたのに気を取られたその一瞬。死角から繰り出された蹴りを交わしきれず横っ腹にモロに食らう。勢いも殺せなかったので滑るように転がって、素早く体勢を整えるも、すぐ近くに奴は迫っていた。
ギィンッ!
ぎちぎちぎち、刃と鉄が互いを鳴らして譲り合わない。クソ、眼鏡ドコだ色がよく判らんぞ、幻術遣い相手に色が分からないなんて思い切り弱点晒してんじゃねーか!ここで幻術かけられて色騙されたら為す術が何もないぞ…!?
「やっと、余裕を崩しましたか、」
「そーいうお前こそ出血しててヤバそうだぞ?大丈夫か?」
「クフフ、怪我を負わせたのは貴方じゃあありません、か!」
「うお!?」
突如弛められた力に驚き、前のめりになった所が徒となった。のし掛かられ首元に刃が添えられる。あちらさんの使う刃物にゃ何が起きるか分からないからな、そのまま暴れずにじっとしていると溜め息が聞こえ、体勢を無理矢理変えさせられた。…え?何これ、騎乗位?いやバカな事考えんなって俺。
「…貴方、目」
「ありゃバレた?」
「っ、舐めてかかったのですか?」
「いいや?違うよ」
険しい表情の彼を見て笑う。俺の目を見て気付いたんだろう。俺が本気でない事を。目の色は、黒のままだ。
「じゃあ何故、」
「これ、裏世界じゃなくて裏社会のゴタゴタに巻き込まれた感じだろ?下手に俺が介入するとなし崩れになっちまう」
血濡れのアイデンティティー
(だから最好は嫌なんだ)
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