どうしてオレなんだよ。突き放したつもりが引き戻されて、引き裂くつもりが、抱き締めてしまう。 手に力を入れると彼女の細い骨がギシリ、鈍い音を立てた。彼女は苦しそうに顔を歪ませるだけで抵抗しない。痛いはずなのに声も上げず、涙を流すだけ。まるで人形のようだ。でも、仕方がないよね、オレなんかを好きになったんだから。愛なんて無ければオレに泣かされること無かっただろうに。 ああ、お前って、ホントに可哀想な奴。 彼女を床に叩きつけるように押し倒すと、長い髪が散らばった。ここまですれば彼女も嫌がって抵抗するだろう。ほら、あらがってみなよ。オレはお前を傷付けてるんだよ?最低でしょ、オレって。だからさ、早く嫌いになりなよ。 思いつく限りの冷たい言葉を吐き出すが、オレを映す彼女の目は相変わらず愛に満ちた瞳で、さらに怒りが込み上げた。 「そんな目で見るな」 舌打ちして睨み付けても、彼女は臆することなく微笑む。なんなんだよ、お前。ああ、苛つく。お前にも、本当のことが言えない自分にも全てが疎ましくて腹が立つ。 優しい言葉を掛けようとすれば、酷い罵倒を浴びせてしまう。柔らかな頬を撫でようとすれば、引っ掻いて傷付けてしまう。口付けようとすれば、強く噛みついてしまう。慰めようとすれば、壊してしまいたくなる。ああ、だから苦しませるだけの愛なんて、うんざりなんだよ。 矛 盾 愛なんて、煩わしい。そう思うのに、愛を求めてしまうオレは一体、なんなのか。 |