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「絶対だめやて!!」
「そこを何とか、お兄さん!!」
「絶対いやや!!」
『………。』
白星さんとお兄ちゃんがこんな会話を続けて約30分。
「私が責任持ちますから!!」
右を見ると必死な形相の白星さん。
「俺のかわいい妹をまかせられるかぁ!!」
左を見るとこれまた必死な形相のお兄ちゃん。
「この菓子うめぇ〜なぁ!」
個々いろいろなことをしている5人の男の子達。
『………。』
…私何をしてたらいいんだろう。
「だいたいなぁ!こんな可愛いんやで!?俺の妹!そんな俺の妹がどこぞのイケメンなヤロー共と
アイドルぅうー?一緒にいろいろしていく内になぁ…

葵、大丈夫か?

うんっ、みんなのために頑張るよ!

無理すんじゃねーよ!

でもっ

僕に任せて。

何とか君っ! キュンっ!!


とか言うて、葵が恋にでも落ちたらどう責任とってくれるんじゃあああ!!」
『ない、ないからっ!!』
いきなりはじまった恒例、お兄ちゃんの妄想に待ったをかける。
「で、でもお兄さん!

お前のことが好きなんだ!葵!

ごめんなさい!私っ、例え兄弟でもお兄ちゃんのことが…っ

て、展開も考えられるじゃないですか!?」
『白星さんも何言ってるんですか!?』
「そんな展開なら俺死ねるやん!!本望すぎて死ねるで!!」
『ありえないからっ!!』
また口論をはじめてしまった2人。
…本当にどうじよう…。
「おい。」
『あ、はい。』
紫色の髪をした男の人が私に話かける。
「…お前はどうしたい。」
『え、?』
「お前は、アイドルになりたい、とさっきのカフェで頷いた。」
『……。』
私はゆっくり頷く。
確かに、私はなりたかった。できるのなら、変えてみたかったんだ。
「お前が言わないと、お前が踏み出さないと、きっと変わらない。」
私の目線は今だ兄を説得しようと必死になっている白星さんを見つめる。
…そうだ。なんで白星さんがあんなに頑張っているのに、私は黙って見つめているんだろう。
男の子たちの視線が全て私に向いている。
その眼はどれも真剣。

『ありがとうございます。』

私は彼らをしっかりと見つめながら、叫んでいる兄に近づく。
『お兄ちゃん。』
「絶対、は……葵?」
『私、アイドルになりたいの。』
「…、葵。」
『もちろん、今のままじゃ無理なことくらいわかってる。きっともっと強くならないと
なれないよね。今までもそう思いながら逃げたこともある。』
…お父さんとお母さんの死から私は逃げた。
『でも、なんか、なんかわからないけど…この人たちとならやっていけそうな気がするの。多分、で確証はないんだけど…』
きっとこのメンバーでなら。
『私、変わりたい。』
無言が続く。これが私の素直な気持ち。伝われ。伝われっ。
「白星さん、」
「あ、はいっ!」
……伝わらなかった…?
じわり、と涙が視界に滲む。
「妹を…よろしくお願いします…。」
「えっ………あ、はいっ!!」
私はお兄ちゃんを見つめる。
「いけるとこまでいってこい。葵。」
にこり、と笑みを浮かべるお兄ちゃんに喜びが心の底から溢れた。
『…っ、うん!!』
私は満面の笑みを浮かべた。




私は6人に向き直る。
『桜坂葵です。改めてこれから、よろしくお願いします!』


これが、私のスタート。



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