独占欲



ほぼ灰崎と入れ替わりで一軍入りした黄瀬涼太。
モデルをやっているらしく、とても整った顔をしている。
そんな彼は青峰に憧れてバスケ部に入ったようで、一軍入りした途端、青峰に金魚のふんの如くベタベタと引っ付きまわしていた。
それは今日も同じで、メニューを早々とこなし、青峰に1on1を強請っている。
教育係としてつけた黒子もさすがに困っていた。

「赤司君、彼…黄瀬君でしたよね?僕が教える前に青峰君のところに行ってしまうのですが…」

チラリと黄瀬を横目見て、黒子は下がり気味に言う。

「メンバー1人が乱れると、周りも乱れてしまうな。注意するか…」

一つため息を吐き、俺は青峰の隣にいる黄瀬に近づいた。

「黄瀬」

「え?あ、キャプテン。どうしたんすか?」

「俺はお前の教育係に黒子をつけたはずだ。何故青峰といる?」

「…だって、あの黒子とかいう教育係より、どうみても俺の方が上手いじゃないっすか。教わる事なんかないっすよ」

少し口を尖らせながら言う黄瀬は、遠くからこちらを見ている黒子を馬鹿にしたように見る。

「それはあいつのプレーを見てから言うんだ。とにかく、お前は黒子のところに行け」

「…えぇー…。分かったっす…」

「怒られてやんの」

「他人事だと思って酷いっすよ!後で1on1やってよね、青峰っち!」

「はいはい、お前の気が済むまでやってやるよ」

「絶対っすからね!」

そう言って、黒子のもとへ駆け足で行った。

「ほんっと犬だな、あいつ」

「笑い事ではないぞ、青峰。犬は犬でもあれは駄犬だな。お前以外に懐かない」

「駄犬っておまっ、ははは!そういやお前言うこと聞かない犬は嫌いだったっけな」

くっくっと腹を押さえて笑う青峰。

「笑うな」

「だってよ…ぶっ、はははっ、ひーっ腹いてー!」

目尻に涙を溜め、壁をバンバンと叩いて大笑いされ、さすがの俺もカチンときた。

「…笑うなと言っているのが聞こえなかったのか?」

「いっ!?」

腕を組み、青峰を睨み付ければ、ピタリと笑いが止まった。

「じ、冗談だって!てかよ、黄瀬お前の言うことも聞いてるじゃねーか」

「渋々だけどな」

「あー、あいつ自分の認めた奴にしか懐かないみたいだからな。あ、気に食わねーんだったら一軍内で5対5のゲームするなんてどーだ?」

「…どういう事だ?」

「お前、俺、緑間、テツ、紫原の5人対、黄瀬と残りの一軍。そーすりゃ手っ取り早く俺らの力分かるだろ?」

「…たまにはちゃんとした事考えるんだな」

「おい、どういう意味だ」

「よし、そうと決まればすぐやろう」

「無視か!」

早速一軍メンバーを集合させゲームの説明をし、準備を始める。

「こんなに早くスタメンと戦えるなんて、すっごい楽しみっす…!」

「精々一回でもシュート決められるよう頑張ってくれよ?黄瀬君?」

「バカに出来るのも今の内っすよ青峰っち!ぜってーギャフンと言わせてやる!」

「そりゃ楽しみなこったな」

ゲームはもちろん俺たちの圧勝だった。
しかし、ボロ負けしたにも関わらず、黄瀬の目は輝いていた。

「…すっげー!強いとは知ってたけど、ここまで差があるなんて…!すっげー!!」

それから黄瀬は皆とも人懐っこい笑顔で話すようになり、特に黒子には一番話しかけていた。
俺にも同じ笑顔で話しかけてくる黄瀬に、いつからか好意を抱くようになっていた。

「今日も疲れたっすねー、黒子っち」

「そうですね」

練習が終わり、部室で汗を拭いている時、携帯を持って黄瀬の隣に行く。

「黄瀬、少しいいかな?」

「どうしたんすか?赤司っち」

「メールアドレス、交換しないか?」

「メアド交換っすか?もちろんいいっすよ!赤外線でいいっすか?」

「あぁ」

「メアド交換とかお前ら女子か」

「五月蝿いぞ青峰。メール出来た方が連絡しやすいだろう。お前たちもアドレス教えるんだ」

「へーへー」

全員携帯を取り出してアドレスを交換した。



家に帰り、自室に入った途端、あまり鳴らない携帯の着信音がポケットから聞こえてきた。
久しぶりに聞いたな、なんて思いながら携帯を開きメールを確認する。

「…黄瀬から?」

メールは黄瀬からで、

『これからよろしくっス!』

とデコられている黄瀬らしい文が書かれていた。

『こちらこそ』

と一文だけのメールを返して床に荷物を置き、制服を脱いで部屋着に着替える。

着替え終わったと同時に、また携帯が鳴った。
見ると案の定黄瀬からで、思わず笑みがこぼれた。

『5文字だけって赤司っちらしいっスね(笑)でも返事くれるだけ嬉しいっス!みんなは返事してくれないんスよ。ヒドくないっスか?』

『まだメールに気付いてないのかもしれないよ。もう少ししたら誰からか返ってくるんじゃないか?』

『赤司っちの言う通りだったっス!みんなからちゃんと返ってきたっスよ!でも、緑間っちの返事が「何がよろしくなんだ?」だったんスよwww緑間っちのことだから本当に分かってないっスよねwww』

『そうだね、緑間は少し天然だからしょうがない。ところで、黄瀬の文の最後に書いてあった「www」はどういう意味なんだ?』

『wwwwwwww』

『だから意味が分からないんだが』

そんな感じにやり取りしていると、気付けばもう23時を過ぎていた。
時間を忘れることなど滅多にないので少し驚きながら

『そろそろ寝るよ。お休み』

と送ると、

『もうこんな時間だったんスね。時間進むの早くてビックリしたっス!お休みなさい!』

と返ってきた。
黄瀬の返事をこそばゆく感じながらベッドに入り、眠りについた。


次の日、朝練のため体育館に行った。
体育館には黄瀬以外揃っていた。

「あ、赤ちんおはよー」

「おはようございます」

「あぁ、おはよう」

「赤司が最後から二番目に来るなんて珍しーな」

「昨日、少し夜更かししてしまってね」

「夜更かし?」

「黄瀬とのメールが長く続いてね。気付いたら23時だったんだよ」

「意外だな」

「何がだ?」

「お前メール嫌いではなかったか?それに、黄瀬と話が合うのも驚きなのだよ」

「…そういえば、そうだったね」

思えば、嫌いだったから今まで青峰たちにアドレスを聞いていなかったのだ。

「おはようございまーす!」

「おー黄瀬」

「何の話をしてるんすか?」

「赤司と黄瀬の話が合うのにビックリーって話」

「は?何すか?それ」

「そんなことはいいから、練習始めるぞ」

「えぇ!?」

納得いかないという顔をしている黄瀬は置いておいて、各自練習を始める。

「ねーねー、何の話っすか?」

「うっせえよ、何でもねー」

「さっきと言ってること違うじゃないっすかー」

黄瀬は青峰の服の裾を掴んで問いただしている。

「ねーってば!教えてよ青峰っちー!」

「うおっ!」

無視してシュートを決めようとしている青峰の後ろから、飛ぶようにして抱きつく。
黙って見ていたが、イライラして仕方がない。
つかつかとじゃれ合っている二人に近づき、ベリッと引きはがす。

「うわっ!あ、赤司っち?」

「黄瀬、お前は今日青峰に近づくの禁止だ」

「え!?」

「分かったな?」

「は、はいっす!」

睨みつけるようにして言うと、ビクッと肩を震わせて返事をする。

「青峰も黄瀬に近づくのは禁止だ」

「お、おう」

同じように青峰にも言い聞かせ、元の場所に戻っていく。
黄瀬と青峰は少し疑問に思いながらも離れて練習を始めた。
だが、イラつきは一向に治まらなかった。
…自分がこんなに黄瀬にハマっていたなんてな。
そう冷静に考えてから、頭を冷やすために外周に行った。



何十周走ったか忘れた頃、いきなり腕を引かれた。
振り向くとそこにはタオルを持った黄瀬がいた。

「もう部活終わってるっすよ」

ハイ、と渡されたタオルで汗を拭く。

「すまない」

「待ってても赤司っちなかなか帰って来ないから探しに来ちゃったっす。みんなは先に帰っちゃったっすよ」

「…待っていてくれたのか?」

「赤司っちと一緒に帰ろうと思って。昨日のメールの続き話したいんす!」

そう笑顔で言う黄瀬に、胸が鷲掴みされたように苦しくなる。

「…黄瀬、ちょっと座ってくれないか?」

「え?はいっす」

大人しく地べたに座る黄瀬の頬に手を添え、軽いキスをする。

「…っ!?」

すぐに離れて黄瀬の顔を見つめる。
真っ赤な顔で口をパクパクと呆けている黄瀬と目が合う。

「な…っ!?えっ!?」

「黄瀬のことが好きなんだが、どうしたらいい?」

「へ!?」

「お前が青峰たちと仲よさそうにしてると相手を殴りたくなるくらいお前のことが好きなんだが、どうしたらいい?」

「ど、どうって!?というか、それって告白…っすかっ?」

「告白…。そうだな、告白だ。俺と付き合ってくれないか」

「で、でも俺っ!」

「何だ、好きな相手でもいるのか?」

「違うっすよ!そうじゃなくて…!」

「じゃあなんだ?」

「お、俺男っすよ!?」

「そんなの関係ないだろ」

「ええ!?」

「で、返事は?」

「えっと…っ」

視線を彷徨わせて必死に考えている様子に、愛しさがどんどん強まっていく。

「あ、の…っ」

「ん?返事、決まった?」

「……ご、ごめんなさいっ!」

黄瀬は目をぎゅっと閉じて謝る。
その肩は少し震えていた。

「…どうしてだ?」

「あ、赤司っちのことはもちろん俺も好きっすけど、それは友達として、だし…っ、だから付き合うとかそういうのはまだ…っ」

「…まだ?じゃあ俺のこと好きにさせれば付き合ってもいいってことか?」

「えっ!?」

「そうか、ならまずは俺のこと好きにさせることから始めよう」

「ちょ、赤司っち!?」

「あぁ、そうだ。俺独占欲強いようだから、他の奴らと必要以上に仲良くしてると何するか分からないからな」

笑いながら言うと、黄瀬は小さくあ、と声を漏らした。

「だから部活の時青峰っちに近づくなって…?」

「そうだよ。…そろそろ帰ろうか。暗くなってきたからね」

顔を赤くしたり青くしたりしている黄瀬の手を掴んで引っ張り、立たせてやった。
どうやって好きにさせようか考えながら、黄瀬と帰り道を歩く。
黄瀬は躊躇っていたが、無理やり手を繋ぎながら家に帰った。



‐END‐

あまり赤司様のヤンデレシーンが書けてなくてすみません(つд⊂)
リクエストありがとうございました!!


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