部活をやりに体育館に行ったら、まだ黄瀬しかいなかった。
隅に座ってぼーっとしてると、黄瀬がいつものごとく笑顔で話かけてくる。

「あーおみねっち!1on1やろー!」
「やだよめんどくせぇ」
「やろー!やろー!やろー!」
「嫌だっつーの」
「やろー!やろー!やろー!やろー!やろー!やろー!」
「うっせぇな!なら一回だけだぞ」
「やった!さすが青峰っち!じゃあ、ボール持ってくるっすね!」
「へーへー」

ホントにあいつ犬みたいだな…。

「持ってきたっすよ青峰っちー!」
「おー。…って、黄瀬!前!前!」
「へ?前?ヴぼが!」

ニコニコとボールを持ってこっちへ走ってくる黄瀬の前に、巨大な池がいきなり現れた。
それに気付いていなかった黄瀬は、ドボーンっ!とすごい音をたてて池に落ちた。

「だずげでぇー!あおみぶくぶく…」
「何でいきなり体育館に巨大な池が!?てか、黄瀬!大丈夫か!?……返事がねぇ。もしかしてあいつ溺れてんのか!?黄瀬っ!」
「オヤコロー」
「!?」

黄瀬の落ちた池の中から、真っ白いヒラヒラの服、ワンピースとかいう服を着た赤司が意味不な言葉を発しながら出てきた。

「あ、赤司!?何やってんだお前!?」
「僕は赤司などという素敵な名前ではない。オヤコロ様だ」
「いや、素敵なんて言ってねぇけど。しかも何だその変な名前」
「お前は今落とし物で困っているな?」
「あ、そうだ!黄瀬が落ちたまま出てこねぇんだよ!」
「やはりそうか。では、お前が落としたのはこの金のバスケットボールか?銀のバスケットボールか?」
「どっちも落としてねぇよ!落ちたのは黄瀬だって言ってんだろ!」
「正直者のお前にはこの金のバスケットボールと銀のバスケットボールをやろう」
「いらねぇよ!お前黄瀬助ける気ないだろ!?」
「………」
「否定しろよ!」
「しょうがないな。では探してきてやろう」

はー、とため息をついて赤司は池の中に再び入っていった。
そして十秒も経たない内に両手に黄瀬を持って出てきた。

「オヤコロー」
「はやっ!てかうぜぇ!」
「さて、お前が落としたのはこのヤンデレの黄瀬涼太か?それともゲスい黄瀬涼太か?」
「どっちもちげぇ!」
「正直者のお前にはこの病み瀬とゲス瀬、おまけでシャラ瀬をやろう」
「いらねぇし!」
「「「青峰っちー!1on1やろー!」」」
「ウザさ三倍!普通の黄瀬よこせよ!」
「正直者のお前の頼みだ。いいだろう。ほら」
「…あれ?俺何して…?確か池に…」
「黄瀬!」
「お前の願いは叶えたぞ。ではこれで失礼する」

そう言い残して、赤司ならぬオヤコロ様は池に戻っていった。
それと同時に池も無くなった。

「何だったんだ…いったい…」
「えぇっ!?何で俺が三人もいるんすか!?」
「あ、こいつら赤司に渡すの忘れてた…!」
「「「青峰っちー!1on1やろーってば!」」」
「だ、ダメっすよ!青峰っちは俺とやるんすから!」
「えー!青峰っちは俺とやるんすよね?」
「俺とっすよ!」
「いや、俺とっす!」
「…う…」
「ねー青峰っちー!」
「青峰っちー!」
「青峰っち!」
「う…うぜぇーっ!」

ガバッ!
乱れる息を整えて周りを見ると、そこは自室だった。

「ゆ…夢か…」

何という悪夢…。


‐END‐



戻る

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -