背後の視線
「お、遅くなってすいません…」
「どうしたのだよ黄瀬」
「黄瀬ちんなんか疲れてる?」
「何かあったのか?」
「大人しい黄瀬君は気持ち悪いですよ」
「相変わらず容赦無いっす黒子っち…」
「それより、何があった?」
「それが、昨日の夜、怖い夢を見たんす…」
「怖い夢?」
「気付いたら学校にいて、外に出ようとしても出口がどこにもなくて…」
「それでー?」
「それで、気付いたら廊下の向こうから、赤いものが這いつくばりながら近づいてきて」
「赤いもの?」
「多分人だと思うんすけど、暗くてよく見えなくて…」
「それで、それで!?」
「で、怖くなって走って逃げたんすけど、いくら走っても前に進まなくて」
「wktk!」
「テツ、お前楽しんでるだろ…」
「ズルッ…ズルッ…て、這いつくばる音がどんどん大きくなってきたと思ったら、音がいきなり止まって、肩をポン、と掴まれたんす」
「Foooooooo!」
「五月蝿いのだよ黒子」
「すごく楽しそー」
「そして耳元で『このハサミの次の餌食はお前だ』って囁かれて、そこで目が覚めたんすけど、何故か俺の部屋の窓が開いてて、枕の横に赤いハサミが落ちてたんすっ!」
「………」
「………」
「………」
「………」
「何でみんなそこで黙るんすか!?余計怖いじゃないっすか!」
「…だって、なぁ?」
「ええ。今の聞いて一気に興味が失せました」
「だな」
「だねー」
「何で!?一番怖いところっすよ!?」
「…怖い?こんなありふれた話のどこが怖いんですか?ハサミの犯人も分かりきってますし」
「黒子っち天才!?その犯人誰っすか!?」
「お前以外全員分かってっし」
「あいつは暇人だったのか」
「いつもキッチリしてるから、羽目を外したいお年頃なんじゃなーい?」
「え、え!?」
「んじゃ、頑張って考えろ。俺らはバスケでもしてるわ」
「黄瀬君は犯人分かるまで来ちゃ駄目ですよ」
「犯人が可哀想だからな」
「頑張ってー」
「みんなして酷いっす!せめてヒントだけでも!置いてかないでっ!」
「………(ありきたり…暇人…可哀想…)グス」
‐END‐