「…さて、全員揃ったかな?」

「いきなりメールが来たのでビックリしましたよ…。しかもなんですか、このメール…」

「『今すぐに部室に集合。五分以内に来なければお前らの恥ずかしい写真をバラまくからな』っスよね…。恥ずかしい写真ってなんスか…」

「俺にはそんなものはないのだよ」

「俺もそんなんねーけど」

「俺もー」

「へえ?それはどうかな?なら試しにその恥ずかしい写真を涼太に見せるとしようか。…ほら、お前の恥ずかしい写真だぞ」

「…えー…、俺っスか?まあ一応見るっスけど…。………、…は?」

「どうしたのだよ、目見開いて」

「固まってどうした?」

「…っちょ…っ!?え!?あ、赤司っち!?コレどこで入手したんスか!?はぁっ!?」

「そんなに慌ててどったの黄瀬ちん」

「何が写っていたんですか?見せてください」

「だっ、ダメっス!!!絶対ダメ!!!!こ、こんなものは抹消っスよ!!!!」

「お、おいっ、写真は食べ物じゃないのだよ!」

「なんで食ってんだよお前!?」

「これはこの世にあってはならない物なんスよ…っ!!!こんなもの食って証拠隠滅する!!!」

「…本当に食べてしまいましたね」

「写真って美味しいの?」

「…はぁ…、美味しい訳ないじゃないスか…。てか赤司っち!何でコレ持ってるんスか!?確かにコレ全部燃やしたはずなのに!残ってるはずないのに…!!」

「それは秘密だ。まさか涼太がこんな事していたなんてなぁ…?」

「わー!わー!!お願いだから秘密にして!誰にも言わないでください!」

「…黄瀬のやつ土下座しやがったぞ」

「見事なスライディング土下座でしたね…」

「…一体どんな写真だったのだよ…」

「…まあそんな訳で、お前らの恥ずかしい写真もちゃんとあるからな?僕に逆らったらコレが世に知れることになると思え…?」

「………」

「………」

「………」

「………」

「…俺絶対赤司っちには逆らえないっス…」

「……それはともかく、貴重な昼休みにわざわざ僕たちを呼び出した理由はなんですか?」

「あぁそうだったね。覚えているか、お前たち」

「…何をっスか?」

「一週間後に行われる、新入生歓迎会の時にやる部活紹介のことだ」

「…そういえば、そんなものもあったな」

「でもそれは僕たちには関係ないと思いますが…?確か三年生の先輩方がやるんですよね?」

「そーそー。劇だっけ?やるとか言ってたじゃねーか」

「実はな、それを僕たちがやることになったんだ」

「はあ!?なんでだよ!」

「えーめんどくさー」

「監督からの命令だ。スタメンでレギュラーの僕たちがやった方がいい、とな」

「そんな…僕、劇とかそういうのには向いてないんですが…」

「俺も向いてないと思うんスけど…」

「黒子はともかく、黄瀬はそういうのには慣れてるんじゃないのか」

「お前モデルじゃねーかよ。沢山の視線なんて慣れてんだろ」

「そりゃ勿論。俺が向いてないって言ってるのは、俺が劇に出たら新入生とか、観客全員俺しか見なくなって青峰っちとかが可哀想になっちゃうから、って意味っスよ」

「…よーし、お前表でろ。一発殴る」

「え!?なんで!?」

「俺も今のにはさすがにイラっとした。捻り潰していい?」

「待てお前たち。涼太のナルシスト発言なんか今に始まったことじゃないだろ。殴りたい気持ちも分かるが放っておけ。今は劇についての話し合いをするんだ」

「そうですよ、黄瀬君に構うだけ無駄です」

「そ、それはそれで心にグサッと刺さるっス…」

「劇の台本を先輩方から預かってきた。これから配役決めと少し練習をしようと思う」

「ちなみに何をやるんですか?」

「ドラえもんだ」

「………え?」

「え、ちょっと待って、俺耳悪くなったかな。なんか今ドラえもんって聞こえてきたんだけど…」

「悪くなってないと思うが。僕は今確かにドラえもんと言ったぞ?」

「…一つ聞きたい。何故バスケ部の部活紹介の演劇でドラえもんをやるのだよ。関連性が全くと言っていいほど皆無なんだが」

「誰だよ考えた奴。俺以上の馬鹿か」

「関連性なんか僕に聞かれても答えることは出来ない。だが、これを考えたのは監督だと聞いたが」

「…監督頭でもいかれたの?忙しすぎておかしくなっちゃったの?」

「まあいいじゃないか。台本を見る限り、結構面白そうだぞ?」

「…その台本、ちょっと見せてください。……、…別に、楽しそうには思えないんですが」

「うわぁ…、もろドラえもんじゃないっスか…」

「俺はこんなものやらないからな」

「俺だってやだよ。やりたい奴がやりゃあいいじゃねーか」

「メンドくさいことはあんまりやりたくないんだけどー」

「……写真がどうなってもいいと、そう受け取っていいのかな?」

「……やります」

「…やらせていただきます」

「…拒否権は無しか」

「…かったりー」

「…うえー」

「諦めろお前たち。もうやる運命からは逃れられないんだ。…で、配役を事前に考えて置いたぞ」

「…さすが、考えるのが早いですね」

「誰がどれをやるのだよ」

「…なんでか、俺の役もうなんとなく分かるんだけど…」

「まず、僕がドラえもんだ」

「…赤司っちが子供たちの夢のロボットを…」

「…子供が見たら完璧泣くよねー」

「涼太はのび太だ。ピッタリだろう?」

「なんで俺がのび太!?ピッタリってどこがっスか!!」

「そのまんまじゃないですか。いじられ役なところも、ダメダメなところも。一番の理由はのび太君の服の色だと思います」

「さすがだなテツヤ。その通りだ。のび太の服は黄色だろ。イコール涼太」

「予想以上に安直すぎて怒る気にもなれないスわ…」

「お前らも分かってるだろうとは思うが、大輝はジャイアンだ」

「やっぱりかおい!!」

「テツヤは出木杉君」

「…まともなので安心しました」

「真太郎はしずかちゃん」

「!!?!??!!?」

「ぶはっ!!!」

「ぶほっ!!!」

「敦はスネ夫だ」

「えぇー」

「さて、何か質問はあるか?」

「大ありなのだよ!!何故俺がしずかちゃんなんだ!!!何故男じゃない!!!」

「余った役がそれだったんだ。しょうがないだろ」

「しょうがなくない!どう考えても俺は出木杉だろう!」

「えー…、だって出木杉は眼鏡なんかかけてないだろ。却下だ」

「しずかちゃんだってかけてない!」

「それは別にどうでもいい。でも出木杉はダメだ」

「なんなのだよお前のその意味の分からないこだわりは!」

「…うーん、じゃあミドちん俺のスネ夫と役交換しない?しずかちゃんの方が台詞少ないから交換してもいいよー」

「交換はアリなんですか?」

「…しょうがないな、お前たちは交換してもいいぞ」

「やった、じゃあ俺しずかちゃんねー」

「…スネ夫…」

「ドンマイ緑間www」

「スネ夫も嫌そうっスねwww」

「もう他にはないか?」

「僕は特にないです」

「俺も」

「………」

「おー」

「ないよー」

「なら今度は少し練習するか。お前たちちゃんと役になりきるんだぞ。最初ののび太の台詞からだ」

「あんま気乗りはしないけど、ドラえもんは小さい頃よく見てたから完璧にコピーしてみせるっスよ」

「いくぞ、よーい、始め!」


「ドラえもーん!またジャイアンにバスケットボール取られたー!!」

「…っ」

「ふはっ!!」

「ぶっ」

「………」

「ちょっと!なんで皆笑うんスか!!似てたじゃないスか!」

「はははは!黄瀬キメエー!!!」

「似すぎにも程があるよ黄瀬ちーん」

「顔は黄瀬君なのに声がのび太なので気持ち悪いですね」

「同感だ。でもその方が面白くていいじゃないか。止まってしまったからもう一度最初から」

「もう皆笑わないでよ?…ドラえもーん!またジャイアンにバスケットボール取られたー!!」

「またかいのび太君。いつもいつもキミはジャイアンに負けてばっかりだね」

「ブフォ!!!」

「ブフォ!!!」

「ブフォ!!!」

「ブフォ!!!」

「ブフォ!!!」

「…なんだお前ら一斉に吹き出して。今のに笑うところなんかあったか?」

「…なんで…、声までドラえもんなんですか…」

「…ふ、不意打ちっス…」

「…お前……」

「なんでお前までそんな似てるんだよ……っ」

「ちょ…マジで赤チンやめて…」

「揃いも揃って蹲って笑うなんて失礼だな。ドラえもんの声真似は俺の十八番なんだよ。似てて何が悪い」

「wwwwwww」

「wwwwwww」

「wwwwwww」

「………次笑った奴は死刑な…?」

「よし、続きすっか!」

「そうですね」

「そうっスね!」

「………」

「………」

「また俺からだよね。…ドラえもーん!またジャイアンにバスケットボール取られたー!!」

「またかいのび太君。いつもいつもキミはジャイアンに負けてばっかりだね」

「ジャイアンに僕が勝てる訳ないだろー!ドラえもんの道具でボール取り返してよー!」

「まったくもう、困った人だねのび太君は。今回は特別に取り返してあげるけど、いつも僕が助けると思っちゃダメだからね?」

「やった!さっすがドラえもん!話が分かるなー!」


「…と、ここで一旦場面変更が入る。完璧じゃないか涼太」

「そりゃ俺にかかればこんなもんスよ。…でも皆が笑いを我慢しすぎて今にも死にそうっス…」

「……次はお前たちも出番あるからな。ちゃんと言うんだぞ。またのび太からだ」

「了解っス。…あ、しずかちゃん!それに出木杉も!」

「…あらのび太さん、ドラちゃん」

「こんにちは、二人共」

「こんなとこでなにやってるの?」

「偶然ここで会ったからお話してるだけよ」

「のび太君こそどうしたんだい?」

「ぼ、僕はちょっとジャイアンに用が…」

「俺がどうしたって?」

「ジャ、ジャイアン!」

「……………僕もいるよ」

「まさか俺様からボールを取り返そうって思ってるのか?」

「……………どうせまたドラえもんに泣きついたんだろのび太」

「一旦ストップ。おい真太郎。台詞を言うのが遅い。声も小さすぎるぞ」

「…そんなことを言われても俺にはこれが精一杯だ」

「何言ってるんだ。その声量じゃ観客に聞こえないだろ」

「…無理なものは無理だ」

「無理じゃないだろ。お前はもっと声出るはずだ」

「………」

「ほら、声を出してみろ。お前なら出せる!」

「どこの修造っスか」

「…俺は帰る」

「なに?」

「俺は!!帰る!!!教室に!!!!」

「出るじゃないか!その声の大きさでいいんだぞ!って、どこ行くんだ真太郎!!まだ練習は終わってないぞ!!おい!」

「………たまに赤司君は馬鹿なんじゃないかって思います」

「…あれっスよ、馬鹿と天才は紙一重ってやつ」

「…赤司と緑間走って出て行ったけどさ、俺らも帰っていいと思うか?」

「…いんじゃね?」

「…教室戻りましょうか」

「そっスね。赤司っちも緑間っちも鬼ごっこ楽しそうだし、邪魔しちゃ悪いっスよね」

「おー。じゃーなお前ら」

「ばいばーい」


「…これ絶対劇崩壊するパターンスね」


─END─

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