「…実はね、中学卒業する前日に告ったんスよ。青峰っちに。でも、断られちゃったんス…」

この間聞けずじまいになってしまった質問を投げかけると、くしゃくしゃな笑みを浮かべながらそう答えてくれた。

「そういう風には見れないって。お前には美人か可愛い女の方が合ってるって。…俺は青峰っちがいいのに…。青峰っちだから…好きになったのに」

久しぶりに見る黄瀬君の泣き顔は、あの時と変わらずに綺麗なままだった。
頬を伝う涙も夕焼けの色が反射して、金に輝いていて。
綺麗すぎて思わず汚してしまいたくなるほどに。

僕の心にふつふつと黒い何かが湧き出てくる。
ドス黒くて、まとわりつくような漆黒で。
渦を巻いて少しずつ顔を出す。

「……、…そうだったんですか…」

黄瀬君のこと、嫌いなんじゃないですか?
言いそうになったこの台詞をどうにか飲み込み、代わりに相槌を打つ。

なんて酷い言葉を言いそうになったんでしょうか。
こんな事を言ってしまえば、黄瀬君は絶対に悲しんでしまう。
今にも折れて砕けてしまいそうな笑顔なのに、それに拍車をかけてしまう。

「…でもね、…まだ諦めきれないんスよ…。まだ青峰っちが好きなんス…」
「…黄瀬君」

優しい言葉をかけてあげたいのに、浮かんでくるのは変わらず酷い言葉ばかり。
青峰君がキミに振り向く可能性はないと思います。
イラつかせてしまうだけだと思います。
諦めてはいかがですか?

(…違う)

言いたいのはそんな酷いことじゃない。
励ますような、そんな言葉をかけたいのに…。

まるで自分の中に違う人間が住んでいるみたいに真逆な考えばかり浮かんでくる。

どんどんと僕の中の何かが壊れていってる気がします。
ガラガラと音を立てて、少しづつ、少しづつ。
それを感じ取ることはできても、それを止めることはどうやら無理そうです。

いったいこの僅かに残っている良心は、いつまで持つのでしょうか。

多分、あと少し…。
そうしたら、僕は…。


‐END‐

4に続く



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