拾ったよ
「おはようございます」
「おーテツ…って、は!?」
「えっ、く、黒子っち…?」
「…その腕に抱えているのは何なのだよ」
「犬です」
「ワン!」
「いや、そういうことを聞いてるんじゃない。何故学校に、しかも体育館に持ってくるんだ」
「子供のゴールデンレトリバー?可愛いねー」
「通学路に捨てられていたんです。可哀想だったので連れてきてしまいました。…どうしましょう」
「知らねえよ!」
「優しいっスね黒子っち。でも、ホントにどうするんスか?ここで飼うんスか?」
「ダメに決まっているのだよ。元の場所に返してくるんだな」
「そんな…!ヒドいですお母さん!まだこんな小さい子犬を見捨てるって言うんですか…!?」
「お母さん!?」
「黒子っちの言う通りっスよ。まだ小さいのに可哀想っス」
「…だが学校は公共施設だからな。ここで飼うのは無理があるぞ」
「てか誰が世話すんだよ」
「もちろん僕がします」
「俺もするっス!黒子っちその子犬触らせてほしいっス!」
「落とさないでくださいね。…どうぞ」
「ワン!」
「モフモフしてて可愛いっスねー。あはは、めちゃくちゃ人懐っこいっス!可愛いなー」
「………」
「………」
「………」
「………」
「………」
「…あれ?皆黙ってどうしたんスか?」
「別に(犬が二匹…)」
「何もないよー(どっちもカワイー)」
「気にするな(天使が天使とじゃれ合ってる…)」
「何でもねーよ(くそマジ可愛すぎるだろコイツ)」
「もうその子犬黄瀬君に懐いてしまったのですね(ジャスティス)」
「こんなに可愛いのに捨てるなんて、酷い人もいるんスね…。やっぱり、ここじゃ飼えないんスか…?また元の場所に返す何て、可哀想っス…」
「…可哀想だが、ここではな」
「…いや、ここで飼ってもいいぞ。僕が校長に掛け合ってこよう」
「え、ホントっスか!?やった!」
「何て言って校長に掛け合うんですか?」
「…さあね。一つだけ言えば、僕が笑顔で言えば大体は可決されるってことかな」
「は?意味分かんねーんだけど」
「(…脅すんですか)」
「(…脅すんスね)」
「(…脅すのか)」
「(…さすが赤ちん)」
「何にしろ、子犬はここに居ていいってことですね」
「そうだ」
「すごく嬉しいっス!あ、じゃあ名前決めてあげないとっスよね!何かいい名前ないスか?」
「ないのだよ」
「まいう棒、とかはー?」
「それはちょっと…」
「名前なんてなんでもいいだろ。もうそのまま犬でいーんじゃねぇの?」
「それじゃあ可哀想っスよ!」
「…ワン太、なんてどうですか?」
「あ!それいいっスね!!さすが黒子っち!可愛い名前っス!」
「可愛いか…?」
「なんかそのまんまのような気もするー」
「涼太と掛けたな…」
「黄瀬の奴、テツの提案ならなんでもOKだろ」
「ワン太、これからよろしくっス!」
「ワン!」
─END─