「…はぁ」

「………」

「…うー、あー」

「……………」

「うーん…はぁ…」

「うっせぇな!何なんだよお前!」

すぐ隣で先程からずっと唸っている黄瀬に、灰崎はとうとう堪忍袋の尾が切れた。
机をバンっと叩いて怒鳴ってやると、五月蝿そうに目を細めて睨まれる。

「…っさいなーショーゴ君。耳元で叫ばないでよー」

「五月蝿いのはお前だタコ!俺のこと嫌いなんじゃねーのかよ!」

「もちろん嫌いっスけど」

「…もちろんってテメー」

怒りに震えていると、黄瀬は馬鹿にしたように言う。

「どーせショーゴ君暇でしょ?愚痴に付き合ってよー」

「お前俺を何だと思ってんだ…」

黄瀬が灰崎の元に来たのは十分くらい前の事だ。
誰も居なくなった放課後の教室で携帯を弄っていると、不満気な顔を露にしながら黄瀬が入ってきた。
何事かと思って黄瀬に視線を送るが、何も話さないで真っ直ぐ灰崎の隣の席に腰を下ろす。
そしてずっとため息をついたり唸ったりを繰り返していた。
この時間は部活の真っ最中のはずだが、何でこいつはここにいるんだ。
しかも嫌っている俺の隣にわざわざ。
大輝たちと喧嘩でもしたのか。

「生憎俺は今忙しいんだよ。邪魔すんな」

「ケータイ弄ってるのが忙しいとか…、友達いないんスか?」

嘲笑気味に言われ、さすがに殴りたくなってきた。

「…お前、殴っていいか?」

「嫌に決まってるじゃないっスかー。モデルの顔傷つけるなんて最悪っスよー?」

「あー、もうお前マジでうぜー。俺がここから居なくなるからいい。じゃあな」

携帯をパタンと閉じ、荒々しく席を立って教室を後にする。
だが、その後ろを黄瀬が無言で付いてくる。

本当になんなんだよ!

「だからっ、俺になんか用でもあんのかよ!」

「愚痴付き合ってってさっき言ったじゃん」

「嫌だっつってんだろ!赤司たちに聞いてもらえばいーだろ!」

「…赤司っちたちの愚痴だし、それにここ1週間皆に避けられてるんだもん」

「はあ?」

「俺が話かけたりすると適当にあしらわれて逃げるようにどっか行っちゃうんスよ…」

拗ねるように口を尖らせ、目尻を赤くする。
今にも泣きそうな黄瀬に、灰崎は若干戸惑う。

あいつらが黄瀬を避けるなんてあり得ない。
恐怖を覚えるほどの黄瀬クラスタなあいつらだ。
前に、少し触れた(偶然)だけで半殺しにされ、恐怖を植え付けられた。
あの時のあいつらの顔は一生忘れないだろう。
全員悪魔のような笑顔で尻餅をついている俺を見下してきて、本当に言葉に出来ないほど怖かった。
当の黄瀬はそんなこと知らないだろうが。

「なんかあんじゃねーの?あいつらがお前を避けるとかありえねーだろ」

「……でも…」

「…あ?そういや今日って確かお前の誕じょ…」

「シャラーーーーーーーップ!!!!」

「ぐあっ!!?」

思い出した事を言おうとしたとたん、灰崎の腹目掛けてバスケットボールが勢いよく飛んできた。

これは、あいつのイグナイト…!

見事に腹にめり込んだボールを掴み、飛んできた方向へと視線を向ける。
案の定そこには黒子が居たのだが、その後ろに他の黄瀬クラスタなあいつらもいた。

「黒子っち!?それに皆!」

「っにすんだよいきなり!!」

「すみません、灰崎君がいらんことを言いそうでしたので、つい」

淡々とした口調で言い、その後に赤司が付け加える。

「今言おうとしたことはまだ禁句だ」

「禁句…?」

「それより黄瀬、なぜ今日に限って部活に来ないのだよ」

「…だって、皆が俺のこと避けるから…」

「避けてたんじゃないよー。今日まで秘密にしておきたかったからちょっと色々あってねー」

「なのにお前今日体育館こねーし。探しに来たら灰崎といるし」

「…なんのことっスか?」

皆の言っている意味が分からず、首を傾げる黄瀬。
一応避けていなかったとは分かったので少し安心した。

「まずは体育館に行こう。話はその後だ」

「…?はいっス…?」

歩き始めた赤司に続いて、黒子たちも足を進めた。
その後を疑問に思いながらもついていく。

「あ、ショーゴ君も来なよ。久しぶりに体育館」

「やだね。なんであんなとこ行かなきゃなんねーんだよ。俺はさっさと帰んだよ」

「つれないっスねーまったく。ボッチは寂しいっスよ?」

「お前もう黙れ。…じゃあな、俺からは明日にでも言ってやるよ」

「え?何を?」

「それを今言ったらあいつらに殺されんだよ」

睨みながら言う灰崎は、くるっと踵を返して階段を下りていった。
その背中が見えなくなってから、黄瀬は再度歩き出した。



******



「……え、なんスか…?これ…」

体育館の扉を開けた瞬間、目の前に広がったのは「誕生日おめでとう黄瀬!」と書かれた大きな白い布だった。
その他にも体育館中レースや紙の花などでキレイに飾ってあって、パーティー会場のようになっていた。

「今日お前の誕生日だろ」

「あ、そういえば…」

「忘れてたんですか?」

「この頃皆のことばっか考えてたから…。何で避けられてるんだろうって…。何かしたかなって」

「あぁ、避けているつもりはなかったんだが、この事は今日まで秘密にしておきたかったから無意識のうちに遠ざけていたかもしれないね」

「ドッキリー、てやつ?驚いた?黄瀬ちん」

「…そりゃあもう、めっちゃビックリっスよ」

俺のためにこんなことを計画していてくれたなんて、思ってもみなかった。
本当に嬉しくて、ちょっとだけ目が滲んでくる。

「涼太、誕生日おめでとう」

「お誕生日おめでとうございます、黄瀬君」

「誕生日おめでとー」

「…おめでとうなのだよ」

「誕生日おめっとさん」

「…皆、ありがとう…!すごく、嬉しいっス…!」

皆に向けて、目一杯の笑顔を向ける。

「こんなに嬉しいことはないっス…!本当に、ありがとう…!」

それから、用意してくれたケーキを食べたり、3対3のゲームをして遊んだりした。





後日談。
「そういえば、体育館あんなに飾っちゃって大丈夫だったんスか?しかも部活もあったはずなのに」
「…それなら大丈夫なのだよ。赤司が監督を直々におどs…、いや、頼みに行った」
「…そ、そうっスか(何したんスか赤司っち!?)」



─END─

黄瀬君、誕生日おめでとおおおお!!
いつまでもイケメンワンコでいてください!!
時間なくて最後めっちゃ進み早くなって意味分からなくなってごめんね!!!!←
6.18


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