マジ天使
「黄瀬ちん疲れたー」
「俺もっスよー」
部活が終わり、部室で着替えてると紫原っちが抱きついてくる。
身長差があるからか、俺は紫原っちの腕の中にすっぽり収まってしまう。
「ねー、今日帰りスイーツ食べに行こうよ」
「あ、それいいっスね。賛成っス」
「やった。じゃあ早く帰ろ」
「ちょっと待って。俺まだ着替え終わってないんスよ」
というか、紫原っちが抱きついているから着替えられないんだけど…。
そう目で訴えると、紫原っちは『あー、そっか』と言って離れてくれた。
しかし、いきなり服の中に手を入れられ、思わず驚いて間抜けな声が出る。
「うわっ、な、何してんスか!?」
「えー?着替え手伝ってほしいんでしょー?」
「違うっス!そうじゃなくて…、あははっ、ちょ、くすぐった…っ!」
「くすぐったい?こちょこちょー」
面白がっているのか、脇腹を執拗にくすぐり始める。
「…ま…っ、はは…、ホントに、…やめっあはは…っ!」
「それーこちょこちょこちょー」
さすがにもう腹筋が痛くなってきて、耐えられずに紫原っちの腕を掴んで止める。
「…はぁ、もう、悪戯はめっスよ!スイーツ食べに行かないっスよ!」
「え、ごめんね黄瀬ちん。謝るから食べに行こうよー。ね?」
怒る俺に、慌ててこてんと首を傾げて誤る紫原っち。
「もうしないっスか?」
「うん、約束するー」
「じゃあ行くっス」
「ありがとー黄瀬ちん!大好きー」
「俺も好きっスよ」
再度抱きついてくる紫原っちに、苦笑しながらも抱き締め返す。
これじゃまた着替えらんないっスね、なんて心で笑いながら、暫く腕の中で紫原っちと何のスイーツを食べるか話し合った。
「…あいつら俺らもいること忘れてねー?」
「部室でいちゃつくなど有り得ないのだよ」
「ワンコと妖精がじゃれあってるとか…マジ天使」
「あの二人の周りだけお花畑が見えます…マジ天使」
「めっ、て可愛すぎるだろもうマジ天使」
「ね?、て可愛すぎますよもうマジ天使」
「…………」
「…………」
─END─