「…赤司君、遅いですね」

「いつもなら一番に来ているのだがな」

「逆にいつもなら最後の方に来る黄瀬が一番に来てたな。しかもなんか腕組んで仁王立ちしてるし」

「黄瀬ちん全然笑わないねー。…あ、赤ちんだ」

「遅れまし………え?」

「………は?」

「えぇええぇっ!?俺!?」

「誰だ貴様。なぜ僕と同じ姿形をしている」

「顔見合せていきなり何言ってんだ?お前ら」

「二人とも口調おかしいですよ」

「表情もおかしいな」

「ていうか赤ちんが部活に遅れるなんて珍しー」

「何で皆そんなに落ち着いてるんスか!?俺の目の前に俺がいるんスよっ!?」

「…なに言ってるんですか。それにその口調、黄瀬君の真似ごっこでもしてるんですか?」

「真似って、なんで俺が俺の真似するんスか!黒子っち、この人誰っスか!?俺とそっくりなイケメンがいるんスけど!」

「………赤司君、病院行きますか?」

「おいテツヤ。僕はこっちだぞ。ふざけているのか?この黄瀬口調の僕はなんなんだ」

「………え」

「………」

「………」

「………」

「聞いているのか?」

「この怖い顔の俺、誰っスか!?」

「………赤司、黄瀬。一つ、聞いてもいいか?」

「なんだ」

「な、なんスか?緑間っち」

「………お前らは誰なのだよ」

「なに言ってるんスか!緑間っちさっき黄瀬って言ったじゃないスか!黄瀬涼太っスよ!」

「なんの冗談だ真太郎。まさか僕の顔を忘れた訳じゃないよな?忘れたなんて言ってみろ?オヤコロだぞ」

「……まさか…」

「…え、マジ?」

「……そんな馬鹿なことが…」

「……マジかよ…」

「…?」

「お前たちどうした。そんな豆鉄砲でもくらった様な顔をして」

「……鏡を見たほうがいいのだよ」

「……これ、鏡です」

「鏡っスか?自分の顔なんか見たって面白くな…………」

「僕の顔に何かついてるのか?………な…」

「……分かったか?お前ら、入れ替わってんぞ…」

「なっ、なんで俺赤司っちになってるんスかっ!?えぇぇっ!?」

「僕が…涼太、だと!?」

「ど、どうしよう黒子っちぃ!これ元に戻るんスよね!?ていうかなんで入れ替わってるんスか!?」

「ちょ…っ、赤司君の姿で抱きついてこないでください…!気持ち悪いです…!」

「おい涼太、僕の姿でおかしな行動するな…!」

「ぎゃっ!痛いっス赤司っち!殴らなくてもいいじゃないスか!」

「……黄瀬が赤司を殴って、赤司が目尻に涙溜めながら口を尖らせてんぞ…」

「……まったくもって気持ちが悪いのだよ。鳥肌が治まらん」

「気持ち悪いを通り越して怖いんだけどー」

「それにしても、いつから僕と涼太は入れ替わっていたんだ…?」

「朝はまだ入れ替わってなかったと思います。校門で黄瀬君と会いましたが、いつも通りでしたし」

「…あ、20分前くらいに赤司っちと廊下で思い切りぶつかったんスよ。多分なんスけど、その時からだと思うんだよね」

「なんでだ?」

「ぶつかった後から、なんか目線が低くなった気がしてたんスよ。それに声も違うなって。でも気のせいかと思ってたんス」

「…へぇ?目線が低くなった?それは僕がチビだとそう言いたいんだな?いい度胸じゃないか涼太」

「いひゃいっ!いひゃいっふあかひっひ!」

「……黄瀬が赤司の頬をつねって引っ張ってんぞ…」

「……見れば分かる。いちいち口に出して言うな。鳥肌が治まらなくなるのだよ」

「恐ろしやー」

「ぶつかった時に入れ替わったんだとしたら、その時にお互いの顔見なかったんですか?」

「あ、俺用があって急いでて、すぐに謝ってそこから離れたから顔は見てなかったんスよ」

「僕が涼太の方を見た時にはもういなかったから見ていないな」

「ぶつかって入れ替わるってベタだねー」

「…このままだと気が散って部活に身が入らないのだよ。どうにか戻れないのか」

「戻り方なんか分かるわけないじゃないスか」

「それより涼太」

「なんスか?」

「お前の身体、なんだか重いんだが具合でも悪いのか?」

「んー、具合なんか悪くなかったと思うんスけど…。どんな感じに重いんスか?」

「よく分からないが身体が重い。それに腰が痛い」

「…あ…っ、そ、それは…えっと…」

「…?どうした?顔が赤いぞ。というか僕の姿でその表情は止めてくれ」

「…ぅ…、あ、青峰っちぃ!」

「は!?ちょ、俺に振るなよ黄瀬!お前が聞かれたんだからお前が言え!」

「そんな酷いッス!青峰っちのせいじゃないっスか!!だから昨日はもう無理ってあんなに!!」

「俺のせいかよ!お前だって悪いんだからな!!煽ったのはお前だろ!」

「煽ってなんかないっスよ!!」

「…おい?話が見えないんだが?」

「黄瀬ちんも峰ちんも顔真っ赤ー」

「なぜいきなりケンカが始まるのだよ」

「……腰…煽る…真っ赤……、はっ、ま、まさか…!」

「どうしたんだテツヤ」

「…黄瀬君、青峰君。まさか昨日は夜通しベッドの上で熱い吐息を絡ませてたんですか…!!」

「いやああああああ!!黒子っちいいいいいいいいいいいいい!!!」

「あああーーーー!!言葉にするなよテツ!!!!!」

「…ベッドの上で熱い吐息を絡ませていた、だと…!?」

「なにそれ?ベッドでお話しでもしてたの?」

「意味がわからないのだよ。それと黄瀬、青峰、五月蝿い、黙れ」

「まったく紫原君も緑間君も純粋ですね。つまり、青峰君が黄瀬君の穴を掘っていたんですよ」

「黒子っちやめてええええええええ!!!」

「えっと…?黄瀬ちん体に穴なんてあったの?痛そう」

「それをさらに掘るとはな。青峰、お前は鬼か」

「違えよ!!!どんだけだよお前ら!!!!」

「すごいですね。ここまで言ってまだ分からないだなんて。純粋を通り越して天使ですね」

「俺の天使は黒子っちだったのに…、そんな…、まさか堕天使になっちゃったんスか…ぐす。…黒子っちの可愛い口から掘るとかそんな言葉聞きたくなかったっス…」

「堕天使ってなんですか。赤司君の厨二が移りましたか。それと可愛いって言わないでください殴りますよ」

「可愛い子に可愛いって言って何が悪いんスか…!!黒子っちは可愛いッス!!」

「…………。紫原君、緑間君、もっと簡単に言えば、黄瀬君たちは昨日セックスしてたんですよ。掘るって言うのは青峰君のピーが黄瀬君のピーに挿入されてそして」

「ごめんなさいもう可愛いって言わないからだからやめてええええええええええ!!!!黒子っちからそんな卑猥な単語は聞きたくないし俺が恥ずか死ぬからあああああああああああ!!!!!!」

「あー、そういうことかー。へー、二人って付き合ってたんだねー」

「セック…!?おおお前らまだ中学生だろう!!それに男同士じゃないか!!ふっ、不純異性交遊なのだよ!!!!」

「異性っていうより同性じゃない?」

「思ってた通りの反応ですね。特に緑間君」

「もうこの話題はいいだろ!!それより元に戻す方法考えろよ!!」

「もう俺立ち直れないっス…」

「そうですね、ふざけるのはここまでにして、考えましょうか。…そういえば、赤司君黙ったままですね。どうし…!?」

「…あ、赤司…?どうしたのだよ…?」

「…顔、めっちゃ怖いよ?黄瀬ちんの顔なのにめっちゃ怖いよ?」

「え、え…!?なんで赤司っち怒ってるんスか!?てか俺ってあんな怖い顔出来たんスね…!?」

「お、おい赤司?どうしたんだよ…?」

「……ふ…」

「ふ?」

「不純異性交遊なんてお父さんは認めないぞっ!!!!!!!!!!!!!!!」

「は!?お、お父さん!?」

「お前たちはまだ中学生なんだ!!!!まだ義務教育も終えていない子供なんだ!!!それにお前たちは馬鹿の中から選抜された馬鹿なんだ!!!!!間違いが起こったらどうしてくれる!!!!!!!!」

「あ、あの…赤司、君…?」

「性病にかかったらどうするんだ!!子供が出来たらどうするんだ!!!バスケに専念出来なくなるじゃないか!!!!!」

「子供!?え、俺ら男っスよ…!?」

「赤ちんが壊れたー」

「そんなに急ぐこともないだろう!!!せめて成人になってから事を行いなさい!!!バージンロードとは花嫁の汚れない純潔さを象徴しているんだぞ!!!純潔じゃなきゃ涼太はバージンロードを歩けないんだぞ!!結婚式出来ないんだぞ!!!!なあ!!母さん!!!」

「か、母さん!?なぜ俺の方を見て言うのだよ!?」

「ちょ、落ち着けって赤司!今はお前と黄瀬を元に戻す方法をだな…!」

「僕は十分に落ち着いている!お前たちを大切に、本当の子供のように大切に思っているから言っているんだ!!」

「え!?え!?」

「そこまではさすがにキモイって!!友達としてにしろよ!」

「お前たちが分かるまで、僕は元に戻る気はないからな!!中身は涼太でも、外見が僕の涼太とはさすがにヤらないだろう!!」

「…赤司君の言うとおりにしないと、本気で戻ってくれなさそうですよ」

「…あぁ、あれはガチだな」

「赤ちんには敵わないっしょー」

「分かったから!!成人するまでヤんねーから!!」

「そうっスよ!!約束するから元に戻る方法探そう!?ね!?」

「…本当だな?約束だぞ?破ったらお前らの未来を引き裂くからな?」

「お、おう!!」

「破る訳ないっスよ!!」

「赤司君最強ですね」

「引き裂くって真顔で言うあたりが特にな」

「怖ー」

「…で、話を戻すが、実は一つ案を考えたんだが」

「…いきなりだな」

「…あんなに荒ぶってたのに案を考えてたとか…」

「やっぱり最強ですね」

「色んな意味でな」

「うんうん」

「入れ替わった時と同じ事をすれば戻るんじゃないか?」

「そうですね、ベタ返しは有力ですよね」

「じゃあ、また俺と赤司っちがぶつかればいいってことっスか?」

「そうだ。涼太、壁際まで下がってくれ」

「分かったっス。…ここでいいっスか?」

「あぁ。よし、ではやるか。確か涼太は走ってきたよな?」

「そうっス」

「僕は歩いていたから、涼太は歩く僕に向かって走ってきてくれ」

「了解っス」

「…なんだこの無駄な緊張感は」

「元に戻るかなー?」

「どうですかね。でも、これで戻らなかったら他に方法はないですよね」

「だな」

「よし、こい!」

「うっス!うおおおおおおお!!」

「…ねぇ、痛い人たちに見えるのって俺だけ?」

「言っちゃダメですよ。皆思ってますけど言っちゃダメですよ」

「っ!!」

「いっ!!」

「…ぶつかったな」

「…戻った…のか?」

「どうですか?戻りましたか?」

「………」

「………」

「どうしたの?」

「…戻った」

「…や、やった!戻ったっス!!ちゃんと俺じゃなくて赤司っちが前にいるっス!!」

「簡単に戻ったな」

「よかったねー」

「でも、オチとしてはつまらないですね」

「テツ、お前な…」

「…ん」

「…あ」

「お前らどうした?」

「…いや、大したことじゃないんだが、さっきまで涼太を見下ろしていたから、いきなり涼太がデカくなった感じがする」

「…俺も、なんかさっきまで赤司っち見上げてたから、元に戻ったらちっさいなーって………あ」

「あーあ」

「黄瀬は学習能力が皆無だな」

「…涼太」

「は、はいっス!!」

「外周百周と、鋏の刑、どっちがいい?特別に選ばせてやる」

「え!?えっと!が、外周百周の方がいいっス!」

「そうか、外周二百周の方がいいか」

「二百!?百増えてるんスけど!?」

「増えてなんかいないさ。ほら、早く走ってこい。部活の時間が終わってしまうぞ?」

「ぅ…、い、行ってきます!!」



「今回もいつものパターンですね」

「大体黄瀬がバカやらかして終わるな」

「学習しない黄瀬が悪いのだがな」

「素直なんだよー」


─END─

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