少しの変化も「…やっぱり、変です」 部活の練習中である赤司をじっと見ながら、黒子がそう呟いた。 それに気づいた黒子と同じマネージャーの桃井が首を傾げながら言う。 「何が変なの?」 「赤司君です。いつもより動きと判断が鈍っているように見えます」 「え、そうかな?私にはいつもの赤司君に見えるんだけど…」 改めて赤司を見てみるが、桃井にはいつもとの違いが分からなかった。 いつも通りの無駄のない動きで部員の指揮をしているようにしか見えない。 うーん、と唸っていると、黒子が歩き出す。 「ちょっと赤司君のところに行ってきますね」 「えっ?テツナちゃんっ?」 早足で赤司のところに行くと、それに気付き少しだけ微笑む。 「どうしたんだ?僕に何か用か?」 「…あの、ちょっと失礼しますね」 そういうや否や、赤司の額に自身の手を当てる。 「…黒子…?」 突然の行動にどうしたのかと視線を送るも、黒子は暫く黙って考え込んでいた。 数分そのままの体勢でいると、パッと手が離れた。 そして今度は赤司の腕を引っ張り、どこかへ連れて行こうとする。 「おい、いきなりどうした…?」 何が何だかまったく分からない赤司は、自分を引っ張るその後ろ姿に言葉を投げかける。 「保健室に行きましょう」 「保健室…?どうして」 「………」 それ以上は口を開こうとしない黒子に、聞くのを諦めて黙ってついていくことにした。 ****** 「風邪ね」 訳の分からないまま保健室に連れてこられ、そして保健医に体温計を渡され、最後に言われた台詞がこれだ。 そんなはずはないと言おうとしたが、体温計が出した数字に驚き黙る。 38度。 まったくと言っていいほど自分の体の変化に気づかなかった赤司は、改めて自分の額に手を当ててみた。 確かに熱い。 その事に気づくと、今まで普通だったのが嘘のように身体が重くなってきた。 「赤司君、少し寝て行きなさい。そうすれば帰りまでにちょっとは熱引くと思うわ」 「…分かりました」 空いているベッドへと乗り、大人しく横になる。 その後に黒子もついてきて、真っ白なカーテンを静かに閉めた。 「…やっぱり体調悪かったんですね」 ベッドの隣に椅子を置き、そこに腰を下ろしながら言う。 赤司自身も気づかなかったというのに、どうして黒子は気づいたのだろうか。 疑問に思い、黒子に顔だけを向ける。 「どうして気づいたんだ?」 「どうしてって、当たり前じゃないですか」 「当たり前?」 「いつも赤司君を見てるんですから、違うところがあればすぐに分かります」 「…っ」 不意打ちだ…。 いきなりそんな嬉しいことを言ってくるなんて。 顔色一つ変えないのはいつも変わらないが。 一層顔が熱くなってきた気がする。 「…赤司君、顔が赤いです。ちょっとタオルを濡らしてきますね」 それは黒子の所為なのだが、そんな事言えるはずがなく、心配そうな顔でタオルを取りに行ってしまう。 すぐに濡れタオルを片手に戻ってきて、赤司の額にゆっくりと乗せた。 「ありがとう、テツナ」 二人きりの時には、名前で呼ぶ。 顔を緩めて言うと、ほんの少し、黒子の顔も赤くなった気がした。 「…早く、治してくださいね」 ****** 「二人共、もう帰りの時間よー。……あら?」 帰りの合図のチャイムが響き、保健医は赤司の寝ているベッドがあるカーテンを開く。 「…仲がいいのね」 そこにはぐっすり寝ている赤司と、その横で椅子に座ったまま眠っている黒子の姿があった。 お互いの手をぎゅっと握りしめたまま。 ‐END‐ 遅くなってすみません! 少しでもリクエストに添えられていたら嬉しいです^^ リクエストありがとうございました! 戻る |