生涯任務
お風呂上がり、いつものようにリビングで忍具の手入れをしていると寝室のドアが開いた音がした。すると不安そうな顔で此方に向かってくる名無しさん。
「どうしたの?あ、もしかして忍具の手入れの音煩かった?」
「ううん、違う…」
時計を見ると深夜0時を過ぎていた。此の時間帯ならすっかり夢の世界のはず。彼女の様子を見る限り夜更かしをしていた訳でもなさそうだ。
「とりあえず…冷えるから、これ羽織って」
「ん…」
「で、何かあったの?」
ソファに座らせた後、パジャマ姿の名無しさんにブランケットを肩にかけ話を聞くことにした。すると怖い夢を見たと答える君。
何となく想像は出来たけど、どんな夢を見たの?と聞いたら、オバケが出たと答えが返ってきた。
「…ぷっ」
「わ、笑った…!酷い!」
まさか怖い夢の内容がオバケだなんてベタ過ぎる。一体何歳児なんだか…。さすがにその言葉は言わなかったけど、つい吹き出してしまったのはいうまでもなくて。
笑われた事に対してムッとする名無しさん。だけどそんな顔でさえ可愛くて仕方ない、ボクの顔がたちまち緩む。
「ふふっ、ごめん、ごめん。かわりに…ほら」
「…わっ」
笑われてしまった事で、少しだけ不機嫌そうな表情をする彼女をぎゅっと抱き締めてお姫様抱っこ。そのままベッドに直行。忍具の手入れをしていたけれど今日はオシマイ、重要な任務が出来たからね。
「さ、名無しさんが寝るまでボクがずっと傍にいるよ。だから安心してね?」
「…ありがとう」
額にキスをして、優しく微笑み掛ける。
普段は強気なくせにオバケとか非日常的なものになると異常な程に怖がる。何かトラウマでもあるのかっていうくらい。まぁ、そのギャップが男心を擽ってグッと離さないんだけど。
それでも君が怖がって安眠出来ないとなれば考え物。気分良く寝てほしいし、天使のような寝顔を見れるのはボクの特権なんだしね。
「君のオバケはボクが退治してあげる」
それがボクの重要な任務、いや一生の任務かな?
ボクが居る限り君を怖い目に合わせはしない、何て名誉ある任務なんだろ、誇らしい。
「おやすみ、愛しいボクの恋人」
fin
20171022
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