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他の誰でもないボクだけを


ボクは君しか見てないのに、君は誰を見てるのかな?

ねぇボクを見て、ボクだけを見て?
そうじゃないと、君を壊したくなる。



「…楽しそうだなぁ」

 

遠目で同僚と話す名無しさんを見つめる。

少し前から彼女はボクの恋人になった。
ずっと想い焦がれていた君がボクと同じ想いだったなんて、最初は信じられなかった。
だけど任務がない日には、どちらかの家に泊まり一夜を共にする。
普段会えない分、愛し合い、求め合う。
そんな日々が続き、最近になってやっとお互いに想いあってるんだと実感出来た。

幸せだ。

でも、ボクと彼女では決定的な違いがあった。



「名無しさん以外…いらないんだ」



ボクと違い、最初から正規部隊だった彼女は表の知り合いが多い。
そもそもカカシ先輩が暗部を辞めて上忍師として表で動かなければ、彼女と知り合う事はなかっただろう。
明るい性格の彼女は、男女問わず人気がある。
誰にでも優しく平等に接して笑顔を見せる。


ボク以外にそんな顔を見せないで?
ボクだけに、向けて?

これは、いわゆる嫉妬。
ただの嫉妬ならまだ、いい。

それが過ぎると、ドス黒い感情になっていく。

 

「拘束…監禁…」

「抜け忍でも捕まえたの?」

「…!やぁ…名無しさん。うん、そうなんだ今日の任務でちょっとね」

「そっか、お疲れ様」



とっさに誤魔化す。
暗部の任務という事を理解している名無しさんはそれ以上何も言ってこなかったのでほっとした。

だけどまさか彼女が声を掛けてくるなんて、さっきまで同僚と話していたはずなのに。



「ん、ありがとう。名無しさんは今日非番だったけ?」 

「うん、買い物してたら同僚に会って話し込んでたの」

「そう」 



知ってるよ、なんせ全部見てたから。
その同僚が男だった事も。

何もないって分かってるけど、黒い醜い感情がボクを纏っていく。



「でもね、テンゾウの姿見えたから。置いて来ちゃった!」

「…置いてって…」



それでも、そんな感情に覆い尽くされないのは、君が一番にボクを求めてくれているから。



「だって、テンゾウといる方が楽しいし、大切だもんね」

「ボクだって、そうさ」



そう、君もいつだって一番にボクの事を考えてくれている。

それなのに、分かっているのに、ボク以外の人に関わって欲しくない。

なんてズルくて、心が狭い男なんだろう。



「…名無しさん、ごめんね」



ただ、君が好きなんだ。
君が好きで堪らないんだよ。



「ごめん?…いつも任務で会えないから?」

「…うん、そんなとこ」



離れないで、ボクを見て、これからもずっと。

ボクが道を外さないように。



fin
20150510




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